/// 19.じっくりこの世界の知識をむさぼってみる

めいっぱい裏技的熟練度あげで鍛冶チートにも失敗したサイコ。


どうしてこうなった・・・




昨日はバイトが終わると持ち帰った賄いを口にすると、失意のままに部屋のベットに倒れこむようにして眠ったサイコ。


早朝、気だるそうに起きると一晩ゆっくりと眠ったためか大分疲れは取れているようだ。午前中までは忙しく働き、すでに手慣れた動きで業務をこなす。無難に仕事を終えたサイコが、いったん部屋でシャワーを浴びてスッキリすると、ベットに腰掛け、バイト中ずっと考えていたことを実行する。隣のベットに向かい合うように座るウィンに声をかけ、まずは自分はこの世界の人間ではないこと、地球という別世界から転移してきた転生者ということを告白した。そしてこの世界のことを教えてほしいと伝えた。


「そうじゃったのか・・・まあそうじゃろうとはおもっちゃったが・・・加護持ちじゃしの・・・つらかっただろじゃろ」


包み込むようやさしくサイコを抱きしめるウィン。泣きそうな感情をこらえながらさらに話を続ける。


「そういった者たちがたまにいるということもわかってはいる。わしもサイコを見た時はそうなんじゃろうとは思ったが、本人が何も言わんのならと黙っておったが・・・そういう者たちを、わしらは渡り人と呼んでおる・・・まあ当の本人たちは自分らのは転生者だ!といっているようじゃがの。実際、渡り人については、わしらこの世界の人間からしたらあまり良い意味ではつかわれておらんがの」


サイコはウィンの言葉をしっかりと理解するようかみしめ、話の続きを待つ。


「渡り人はわがままで横暴な輩が多くいるというのがこの世界の全知的なイメージとなっておる。俺は強い!様々な知識を持っている!そういっては横暴な態度をとって通用しないとわかると周りに当たり散らして投獄されたり処刑されたものたちも多いと聞く・・・」


その話にサイコは言葉をなくす・・・自分も一歩間違えば同じような道をたどったのかもしれない・・・


「この世界の知識にうとく、黒髪・・・魔法などもない平和な世界じゃったのだろ?」


うなずくサイコ。


「それでもサイコの礼儀正しい態度を見ていたら渡り人とは思わなんだ。必死に居場所を作ろうと色々やっていたのもそのためかの」


「ウィンさん・・・私にこの世界のことを教えてください!!!」


「もちろんじゃ。なんでも聞くがいい。答えられる範囲でこたえよう!」


ウィンがやさしく微笑む。


それからサイコは時間がつきるまで地球での便利な生活を図る機器を伝えては、この世界で役に立つのか確認していった。ひとつひとつに丁寧に答えてくれるウィンに感謝しながら。話をまとめるとおおよそサイコがチートウェィ!とできるものはなさそうだった。


掃除洗濯は浄化魔法でひとまとめ!きれいさっぱり汚れなし!

自動車、列車、飛行機なんて不要!自分で飛べば好きな時に好きな場所へ高速移動!馬車を使うのはカトレアお嬢様のように学園から帰るという特別な行事のような時に利用されるため早い必要はない。

携帯電話?連絡を取り合うなら同じような魔道具があるし、冷蔵庫だって無限収納内は時間が止まるからね、

ゲームなどの娯楽についても豊富にあるとのこと。もちろん形は違えど様々なルール、形で娯楽も多数。

この世界の遊戯ギルドで多数の人々が知恵を絞り、しのぎを削っている分野だと。


こうして、ほぼすべてのものが魔法で解決できてしまう便利な世の中は、サイコの前世知識で覆せる事柄はないとう結果に、サイコは絶望した・・・やっぱりこの世界で俺がチートできるのはないのではないのか・・・女神はなぜこの世界に俺を飛ばしたのか・・・なんらかの罰ゲーム的悪意を感じるサイコだった。そもそもがこの世界の人たちは何にでもなれる。学園生活で一般的な知識、教養を学び、魔法の基礎を学ぶ。なんでも努力次第で会得できるため、それ以後は家を継ぐためにその道を究めたり、趣味に通じる道を探って努力していったりすることで、なりたい未来になれる世界だ。


そもそも戦いの好きでないものが、強くなるために必死に魔物を駆らなくても覚醒してしまえば最低限の身は守れる。外で魔物と戦うなんて稀だ。そういうのは戦いが好きでやっている冒険者に任せてしまえばよい。そして自分の進みたい道へ目指せばよい。そんな自由な世界だった。本当であれば無法者はいたり戦争がおきたりなんてあるかもしれないが、たとえS級の冒険者であっても、国を敵に回してしまえば25時間四六時中狙われれば、たとえS級といえども生きてはいけない。国家間でも同様で、いったん国を奪われても、ほかの国が結託して取り返そうと思えば力のぶつかり合いでその土地は使い物にならなくなる。侵略する意味はないのだ。


「こんな世界じゃ・・・遅すぎることはない。ゆっくり考え、自分の生きたい未来に向かって進めば良いのじゃ・・・」


そういうと、頭に手を置きやさしくなでられる。子供時代になでられた前世の祖父を思い出しまた泣けてきた。


ウィンにお礼を言うと、その日は部屋に戻りベットに寝ころびながらゆっくり考え事をしながら、気づけばそのまま眠りについた。


どうしてこうなった・・・のかなぁ・・・

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