/// 18.ある日のギルドにて
私はスレイス。今日もギルドの階段下、柱の影に隠れながらギルドの様子をうかがっている。
普段はソロの冒険者としてそこそこの活動をしている。ソロなのはあまり人とかかわるのが得意ではないからだ。自慢じゃないが中堅冒険者として自前の隠密スキルをフル活用して遺跡内部の探索や討伐依頼を中心にしている。時には必要にかられ中層のボスも周回したりしている。風神の加護を持っているからか、レベルの割にはすばやさなどが高くなっているので、孤高の乙女なんて称号も頂いた。ボッチじゃないもん!孤高だもん!気高いんだよ!
そんな私がここにいるのは、今日は赤い盾の方々・・・いや、そのパーティの尊敬すべく尊いウィン様が、護衛依頼が終わり戻ってくるという情報を受けての待機であった。
赤い盾の皆様は覚醒後はレベルをあまり上げず、帝都外での採取や護衛任務などを確実にこなしている中堅パーティ。ギルドからの信頼も厚く、高額な報酬を求めて危険な任務に赴くなんてこともない。現状の帝都の暮らしを守っていくのが俺たちの使命だと言っていたアレクさんを見てすごい人だなと思っていた。そしてその中の魔導士であるウィン様の尊さに私はもうノックアウトです。あのいかにも魔導士!という雰囲気から醸し出される美しい風牙に魅了され、私も風牙を繰り返し練習しつづけた。ついには極・風牙を習得したが、それでもウィン様の風牙の美しさにはかなわない。
そんなウィン様がギルドの入り口からやってきたのを見つけると、目をキラキラさせて見入ってしまう・・・そしてそのすぐ後ろを付いていくように歩く少年・・・誰だろ?そう思ってみていると、なんとウィン様から銀貨を受け取ると新規受付に・・・もしや!!!ウィン様のお孫さん!!!そう思い詳細鑑定を使ってみる。詳細鑑定は鑑定の熟練度を上げ、極めることでより詳細な情報、主に熟練度や称号なども見られるものだ。極めるといっても、鑑定自体は誰でも使えるし日常的に使っていればすぐに詳細鑑定へと変化するのでそれ自体はほとんどの人が持っているものである。
+サイコ
種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂
LV 1m
力 1
守 1
知 1
速 1
スキル 鑑定(15) 言語疎通(999999) 肉体強化(8) 魔力増強(1) 料理(519) 精神耐性(3)
魔法 転移(3) 浮遊(2) 治癒(1)
加護 女神の加護
なんなのだろう、このいびつなステータスは・・・覚醒仕立てなのに言語疎通という聞いたこともないスキルだけがとんでもない熟練度。おそらくあれがマックスなのだろうとは思うけど999999って・・・見たことない。なのにその他が料理以外はまるで覚えたてのようだ。他の世界から迷い込んできたばかりのような・・・ああそうか!渡り人さんか!よく見ると女神の加護あるしね。ということはウィン様のお孫さんということではないのでしょうし、この世界に来たばかりで不安な少年を保護されたのですね。さすがです!ウィン様!尊いっ!
そんなことを考えていると、登録を終えたサイコさんがモブ三に絡まれてます。あわわわ・・・どうしましょ。あの三人は善意こそあれ悪意はないのですがやり方がおかしくて戸惑う初心者も多くて・・・でも善意からくるものなのでギルドでも対処がし辛いとクリスちゃんも言ってたし・・・あっサイコさんがきょろきょろと周りを見渡してウィン様の方を・・・きゃっ!こっちを見た!目が合っちゃいました、ちょっときゅんと来ちゃいます!これが・・・恋でしょうか!!!私がさっそうと登場して「悪気はないんだよー」って教えたらお近づきになれるでしょうか?ウィン様と一緒にサイコ様ともきゃははうふふな冒険を・・・
そんなことを考えている間に、モブ三兄弟の長男、モブ男の頭がアレクさんに握りつぶされそうに・・・痛そうだけど他の弟二人も縋り付いて止めてるしまあ大丈夫かな?もういい加減、あの格好やしゃべり方はやめたらいいのに。あのモブ三はアレクさんたちのように帝都の人たちのためとお手伝い系の依頼をこなし、その合間の縫ってはこの階段前のエントランスに陣取って、初心者たちに注意すべきことなどをレクチャーしているのだ。なので赤い盾とは違い、護衛任務などは受けてはいない。最初は普通に教えていたんだけどね・・・
思い起こせば数年前、流れでやってきた、セノバニッチひろしさんがギルドにしばらく滞在したのがきっかけ。いかつい革ジャン革パンツで筋肉ムッキムキですごい戦士がやってきた!って話題になったけど、実際は吟遊詩人だというからびっくりした覚えがある。そしてほかの国の英雄の冒険譚や、お姫様のラブラブ恋愛などを歌っては食堂からお小遣いをもらっていたようだ。マッチョなボディーからは似つかわしくない美声でそのギャップも非常に受けていたようだ。
そして、モブ三兄弟が新人にレクチャーするところを目撃し、「そんなんじゃーだーめだーめよーー!」とギターをかき鳴らしながら詰め寄った。そうして出来上がったのだ今の三兄弟である。キャラを立たせるためのヒャッハーやけひょは三兄弟で取り合いになったらしいが、結局は長男のモブ男が弟たちに譲るような形にはなったが、後々、こっそりと他には何かインパクトのある物はないか?と拝むようにお願いをしてセノバさんを困らせていたようだ。その代わりに、モヒカンと呼ばれるあの鳥の頭のような髪型を教わり、赤はリーダーの色だと聞くとこれだけは譲れないと主張したという話だ。
それから数週間でセノバさんは他の街にいくことになった際には、三兄弟と涙の抱擁と固い握手で互いの友情を確かめ合ったらしい。今でもモブ三は週末の夕食時にだけお酒を飲むのだが、俺たちの今があるのもひろしさんのおかげだ!っと涙を流しながら酒に浸るらしい。・・・っとそんなバックグラウンドを思い出している間に、ウィン様とサイコ様はいなくなってしまていた。
「ねえクリスちゃん!あのウィン様のお連れのサイコ様ってどこに行ったの?」
「ひゃあ!びっくりした・・・もう、スーちゃんは隠密から近づくのやめてって言ってるじゃない!・・・ってサイコくんってウィンさんのお連れさんの?」
こくこくと首を縦に振るスレイス。
「そういえばさっきアレクさんがモブ三に制裁して、あっそうだ!ウィンさんと二階に上がったと思うわ。しばらく面倒みるんじゃないからしら。あの子、覚醒したばかりだし・・・」
「そうなんだ・・・(しばらくいるのであればまた会えるチャンスもあるかも・・・)」
「なーに?ウィン様ウィン様言ってたあなたが珍しい・・・サイコくんに惚れたの?」
投げかけられたクリスの言葉に顔をぼっと火を噴くんじゃないかと思ったぐらい熱さを感じる。
「な・・・なっ・・・何をいってるよの!クリスちゃんのエッチ!!!依頼!いってくるからーーー!」
逃げ出すように遺跡の入り口に向かって走り出す。サイコ様かーいつもは尊いウィン様を見守るだけだったけど・・・同世代だし・・・なんとかお知り合いになれたら・・・一緒に遺跡で『ラブラブオーガ討伐デート』でもできたらなーーー!でもサイコ様、覚醒したてだし・・・お姫様プレーしちゃう???私が背負って全力で借り続ければ、1~2週間で上層ならそれなりに遺跡デートできるようになるかも!!!でも2週間もおんぶプレーかぁ~~~これはっ!何かあってもっ!しょうがないよね!!!口元がだらしなく緩んでしまうのはしょうがないのだろう。
邪な妄想をしながら、遺跡の中層でゴブリンキングやハイオーガなどの首筋を、隠密と神足で近づき、至近距離からの極・風牙で次々に仕留めては無限収納に突っ込むという単純作業に没頭するスレイス。たまに遭遇する他のパーティ狩りしている冒険者たちもドン引きしていたが、その水色のショートヘアに認識できないほどの速度から繰り出される斬撃の様をみて「ああ、孤高の乙女様か」と納得して、自分のパーティーと対峙している魔物に集中するのだった。
そんなスレイスとサイコが仲良く遺跡デートを繰り広げられるのはいつの日か・・・がんばれスレイス!己の欲望が叶うその日まで!!!
やってやりますよぉ~!!!
+スレイス
種族 人族 / 年齢 19 / 性別 ♀
帝都ギルドで活動中の上級ソロ冒険者。乙女な欲求を満たそうとサイコをプチストーキング。
LV 162m
力 2541
守 562
知 625
速 2819
スキル 詳細鑑定 肉体強化 精神耐性 神足 隠密 無限収納
魔法 極・風牙
加護 風神の加護
称号 孤高の乙女
+セノバニッチひろし
種族 人族 / 年齢 ? / 性別 ♂
流れの吟遊詩人 帝都でモブさん兄弟に色々と流行りをレクチャー。同じ転生者じゃね?
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