/// 17.鍛冶スキルを使ってみた。

ドワーフといえば酒!そんな思いを胸に前世の知識全開で作った酒も、普通の酒だと落胆されるも鍛冶場については確保ができた!あとは伝説の魔剣を作るのみ!


やってやりますよ!!!




やっとの思いで借りた場所。鍛冶については知識はあるがやるのは初めてだ。まずは一通り普通の片手剣を作ってみる。

ジーザスからその場で購入した鉄をヤットコでつかんで火を入れた炉に差し入れる。熱した頃合いの赤くなった鉄を、ハンマーで何度もたたき、形を形成していく。それらを繰り返していく。気分は国宝の鍛冶職人。人生を、魂を、持てる力をすべて注ぎ込んで理想の剣を作り上げる。まあそんな人生やら何やら込めるほどの実績も努力も何もないのだが・・・そんなことは置いておくとして、数十分後にはそれなりにすんなり剣としての役割を果たせる形に形成された。


鍛冶スキルだけではなく、身体強化や並行処理も併用しての作成、本来は焼き入れであったり研ぎであったり様々な工程があるのだが、鍛冶スキルの賜物か叩き続けるだけでみるみると刀剣が作り上げられていく。異世界魔法すげーー!と感嘆しながら、出来上がった抜身の剣に鑑定をかかる。無事50という攻撃力を叩きだした・・・なぜだ・・・


気を取り直してもう一度・・・もう一度・・・あと一回・・・ラスで・・・


何度か作りなおしてみるが、微妙に攻撃力の上がったものができただけで、到底サイコの満足のいく出来のものはできなかった。悩んだ末にサイコはジーザスにうまくいかないと相談してみることにした。餅は餅屋というしな。


「あの・・・何度か作り直しているのですが、良いものが一向にできないのですが・・・」


「そりゃー熟練度の問題があるからな。すぐに立派なのを作られちゃかなわんわ!」


へ???、とおかしな声がでてしまう。シーザスが「おかしなことを言うやつだ」と首をひねりならがらも答えてくれる。


「いくらスキルが発現しても熟練度を上げていかなきゃその能力をいかせねえ。ほかのスキルだって魔法だってそうだろ!熟練度が低い内は弱い攻撃だったりするだろ!店に出している剣だって、一応は鍛冶適正が高いドワーフの俺が100年以上作り続け、熟練度を上げてここまでのものができるだよ!それと鍛冶覚えたてのガキが同じのを打てるわけがねーだろ!まあ俺も最近は趣味としてやってるんだから、そんな偉そうなこともいえねーがな!」


(熟練度・・・そんな能力値もあるのか・・・そしてそれは魔法など他のものにもあるということか・・・新規に覚えていったんじゃベテランには勝てない後手後手ってことだな・・・あのクソ女神ぃーー!こんなハードモードな世界に送りつけやがって!いつか絶対ぶんなぐってピーしてからピ――してやる!)


この世界に送り付けた女神も、やはり意図的な悪意を感じたサイコは、spmp、女神への恨みをあらためて心に刻み付ける。


(とはいえ、熟練度を上げるためには何本も武器作成していかないとだめなのか?いや、そこまでしなくてもいいはずだ!物は試しだ・・・ダメ元でいっちょやってみるか・・・)


ぴろん!

『スキル精密動作ヲ習得シマシタ』


ふと思いついた裏技的な方法をさっそく試してみようとヤットコとハンマーをもち鍛冶を再開する。身体強化と並列思考の他に、精密動作というスキルも使い、鉄をたたき続けることにした。精密動作は自分の思うとおりに体が正確無比に動くスキルのようだ。そう意識しただけで発動するから助かる。一心不乱に剣のみに集中して何度も何度も同じ剣をひたすら鍛え続ける。たぐいまれなる精神力で何度も何度も同じ剣をひたすら叩きに叩いて一夜を明かす。ふう。と一息つく。明け方になり打ち込むたびにハンマーが馴染むのを感じる。そろそろ本番にしないと食堂に間に合わないな・・・そう思い一度作業をやめる。


(さすがに疲れた。眠気もやばいな・・・だが新規事業を立ち上げる時は徹夜で何日も作業に没頭なんて当たり前だったからな。さすがにこれだけ叩き続け、俺の予想が正しければ熟練度も上がったはず!これで上がっていなければやっぱり何本も武器作成を繰り返さなきゃだめってことだ。その時は毎日仕事終わりに打ち続けるなんてことも考えるか・・・いっそ鍛冶無双ウィーイ計画はあきらめるか・・・)


そんなことを思いながら今度は新たに一本の剣を丁寧に鍛え上げてみた。驚くほどスムーズに体が動き10分ほど打ち続けると、そこにはイメージ通りの一本の剣が生成された。その刀身は黒く輝く神々しい光を放っているように感じる。鑑定をしてみると・・・攻撃力200、おお?まあ・・・納得はいかないが熟練度の上げ方は正しかったのかな?と思ったサイコ。


「まだやってたのか・・・でもまあ大したもんだ。これならお貴族様に献上するために装飾を施せば売れないこともない。まっ、小遣い程度だろうがな」


「あの・・・実践ではまだまだ物足りないかもしれませんが、もう何日か使わせていただければもう少しすごいものもできるはずです。実践的な剣としてそれなりの値がつくのではないでしょうか?」


眠そうな顔でやってきたジーザスの言葉に首をかしげる。少なくとも店に出ていた剣に近い攻撃力までは上げられたので。数日打てばなんとかなうのでが・・・とおもっていた。


「そりゃーおめー、剣なんて今は実戦で誰も使ってねーからな。せいぜい帝都で仕事にあぶれた怠け者な連中が、ド田舎で農民相手に威嚇するために使ってるぐらいだろうよ・・・」


言ってることが全然理解できないサイコ。


「どういうことでしょうか・・・これでもまだまだ実践では利用できないものなのでしょうか・・・」


はあ。シーザスはとため息をついて手に光を集める。できたてほやほやの刀身に手刀を打ち抜くとその瞬間、刀身はきれいに砕けキラキラと舞う。まるで粉雪舞い散るダイヤモンドダストのようだった。目の前で起こったことが信じられないサイコには声をかける。


「攻撃力200やそこらのものが、覚醒後の力を受けきれるわけなかろう・・・どんなに鍛えても国宝級の剣ですら1000かそこらしかねーってのに。純粋に覚醒直後でも1万ぐらいの攻撃力だからな・・・剣の攻撃力なんて誤差の範囲だよ。だから鍛冶なんてお貴族様の好奇心を満たす道楽でしかねーんだよ。その結果、俺も武器作りをやめて金物屋として細々と生活してんだよ!わーったらそろそろ帰れ帰れ」


サイコに向かって手をヒラヒラさせて帰宅を促すシーザスに、力なく「ありがとーござーした・・・」と最低限の挨拶で頭を下げてゾンビのようにのそのそとその場から逃げ去る。疲労と眠気と絶望感でその足取りは重かった。この世界に転移して一番の絶望であった。ちなみにレベルが一つだけ上がっていた。


そのまま引きずるようにギルドに変えると、ウィンには気づかれないように室内に入ると、シャワーを浴び着替えを済ませて食堂まで向かった。部屋を出る際に目を覚ましたウィンから大丈夫かと問われたが、震える口で笑顔を作り大丈夫です。と返答するもそれを聞いたウィンは心配そうに見送っていた。その日は定時に上がるまで、ただひたすら調理を繰り返す無表情なサイコの姿があった・・・


どうしてこうなった・・・




現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 2m

力 3

守 1

知 1

速 2

スキル 鑑定 言語疎通 肉体強化 魔力増強 料理 精神耐性 無限収納 調合 並行処理 鍛冶 酒造 New!!精密動作

魔法 転移 浮遊 治癒 ウィンド 浄化 ウォーター ウォーム

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