/// 16.酒蔵はじめました

食堂で料理チートはじめたよ!と意気揚々に料理を作り続けたが結局異世界の豊富なメニューに撃沈。とは言え働き口はゲットしたサイコ。勝負はまだまだこれから!


やってやりますよ!!!



仕事終わりにウィンと一緒に2階の部屋に戻ったサイコ。この後の予定を考えながらいくつか質問を投げかける。


「この世界で武器作成といったらドワーフ、ということだったりするんでしょうか?」


「そうじゃのー最近は武具をつけるものも減ったのじゃが、武具をつくるのでればドワーフ一択じゃろうな」


実は調理中にケインからも聞いていた、この世界の武器についてあまりは発展していないらしことを・・・そして鍛冶といったらドワーフだ!ウィンの返答にこっちの世界でも同じな共通認識(そもそも地球にドワーフはいないのだが)にホッとする。


「帝都にもドワーフがお店を出したりしてるんでしょうか?」


「ドワーフなら帝都にも何人かはおる。この近くにも、そこの通りをそっちの城の方に少し行ったところに、フライパンの看板があるのじゃが、そこが帝都では一番腕の良い鍛冶師がやってる金物屋じゃが・・・しばらくは新しい武具は打っておらんようじゃがの」


そういうと部屋の窓から指をさし、その場所を説明した。その説明にサイコは思った。


(最近武具を作ってないのはドワーフが気難しいから?自分の力を振るうのにふさわしい相手を待っている???)


そう・・・異世界の多彩な料理に打ちのめされたサイコの、次に「これならどうだ!」と思いついたのが鍛冶。きっとスキルを覚えたその日のうちに伝説の魔剣のようなものが作れるに違いない!そんな期待に胸を膨らませ、いつものように心の中でつぶやいた。


(鍛冶スキルがほしーなーっと)


ぴろん!

『スキル鍛冶ヲ習得シマシタ』


鍛冶をはじめるにあたってはまずは場所の確保が先決!それでドワーフの鍛冶屋があるかを確かめたかったのだ。それともう一つ・・・


「少し興味があるので、その金物店?にお邪魔しようとおもっているのですが、お土産は何がいいんでしょうか?」


「まあ酒じゃな。奴らは酒のために店を続けているようなもんじゃ」


サイコは心の中でガッツポーズをした。これでサイコの午後の予定が埋まった。まずは酒だ!酒チートだ!うまいウィスキーを作って鍛冶場を使わせてもらって伝説の魔剣を作って国宝に指定されて大金ゲットでうぇいだ!思い立ったが吉日!とばかりにウィンに行ってくることを告げると、まずはギルドから出ると近くにある市場のような開けた店にいって材料を物色する。ここはケインから聞いていた食堂の食材を卸している店でもあり、大抵のものは揃うというお店だとか。


店内を見渡して目的のとうもろこし、小麦、米、酵母などを買いあさる。すでに酵母もあるのかー。ふっくら焼き立てパンもダメそうだな・・・というか普通に食堂の積んであったパンもやわらかそうだったしな・・・そんなことを思いながら目減りしていく所持金に泣きたくなるがぐっとこらえ、宿屋にもどる。ウィンがやさしく迎え入れてくれ、テーブルの上に材料を置くと精神を集中させ前世で好んでいたグレーンウイスキーを思い描き手をかざす。


ぴろん!

『スキル製麦ヲ習得シマシタ』


そうか・・・そのままのスキルが発動するんだな・・・乾燥とかなんかじゃないのか・・・そう思っていると材料のとうもろこし、小麦、米から水分が抜かれる。


ぴろん!ぴろん!ぴろん!

『スキル糖化ヲ習得シマシタ』

『ウォーター魔法ヲ習得シマシタ』

『ウォーム魔法ヲ習得シマシタ』


乾燥した材料が細かく粉砕され、そこにウォーターで出現した水がウォームによりあたためられる。その後、粉砕された材料と空中でぐるぐると混ざる。


「ほぉ、ずいぶん器用に錬成術を使いこなしておるのぅ」


ウィンの感嘆する声に嬉しくなりながらも、前世の記憶通りに作業を続ける。前世でもサイコは酒造りにも参入しており、人気のジャパニーズウイスキーのひとつとして、このジャンルでも成功を収めている。


ぴろん!

『スキル発酵ヲ習得シマシタ』


ここで、酵母ともろみは加えられる・・・もろみもあったんだよねーー。いやいや調味料としても利用価値があるんだし・・・気にせず続けよう。さらに続けると何やら良い香りがしてきた。なんとなく発酵が十分目的に沿って終わっても良い時期だと感じる。これはスキルの恩恵なのか。


ぴろん!

『スキル蒸留ヲ習得シマシタ』


そのまま蒸留作業に進むと、アルコール分が抜かれ、その他の部分と少しづつ分かれていく。イメージとしては連続式蒸留器のようにまだ使われていないもろみが組み合わさっては分離して・・・と工程は続いていく。さらに分離していく固形分は備え付けのごみ袋へ投入。次の瞬間、ごみ箱の中身がどこ変え消えていく・・・次元収納と同じ原理なのか・・・。そして水分の方はトイレのドアをあけ投げ捨てた。


なんどか蒸留をくりかえし、出来上がったニューポットを用意していた4リットルはあると思われる大きな瓶に入れるとやっと一息をついた。ここまで常に目の前に浮かぶ物体を落とさず混ぜるイメージであったりと、気が抜けない作業がつづいていた。


ぴろん!

『スキル熟成ヲ習得シマシタ』


後は瓶に向けて手をかざし、熟成をかけ続ける。真剣な表情で作業を続けるサイコ。ウィンは黙って見守る。しばらくすると直感的にもう良いだろうという思いが浮かぶ。試しにと、こちらも用意していたおちょこのような小さな陶器のコップに少し注いで飲んでみる。口の中に広がる飲みなれたウィスキーの香りと味わい。少し若い感じがするも、甘さと感じつつも芳醇な味わい。これはうまい!自分で作ったということもあり、今までで飲んだ酒の中で一番うまいかも!と思ってします。


ぴろん!

『関連スキルが統合・スキル酒造ヲ習得シマシタ』


ウィンも自前のコップを差し出して潤んだ瞳を向けてくるので、お世話になったお礼としてそれなりの量を注いてあげると、ちびちびと口をつけ、「うまい!最高じゃ!サイコは酒造りの天才じゃ!」と絶賛する。この喜びようにサイコもこれならきっと喜ばれるに違いない!そう思ったサイコはその酒を無限収納にしまうと意気揚々と目的の金物屋に向かった。目的は鍛冶場の確保である。




ギルドを出ると、ウィンに教えてもらった金物店に向かう。しばらく歩くとフライパンマークの看板がみえた。ここだなと入り口から店内に入ると、壁には豪華な刀剣や盾などが飾られている。とっさに鑑定してみるが、攻撃力や防御力が200~300前後のものであった。目線を下げると木箱には雑多に剣が数十本詰め込まれている。こちらもまとめて鑑定してみると、豪華な剣とあまりかわらない200前後のものが多かった。きっと豪華なものは貴族用、雑多に置いてあるものの中に本当のすごい業物が・・・とおもって棚にそろえておいてある方に目を向けるとこちらは300~400で作りはしっかりとしたものであろうとわかる。


しかし、壁や棚などに武具が並んでいるのは店内の極々一部だけであった。その他のスペースにはスライパン、鍋、鍬(クワ)や鎌などの農具などなど、金物製品が並んでいた。魔道窯をはじめ何やらよくわからない道具なども並んでいた。これは何だろう?あれはどう使うんだろうか。そう思いながらきょろきょろとしてしまうサイコ。


「おい!ガキは何を買いに来たんだ!」


急に声をかけられびっくりしたが、声の聞こえた方に顔を向けるとがっちりとした体形の髭ずらのおじさんがこちらをにらんでいた。


「あっ、すみません。あの・・・鍛冶に興味があって・・・もしよかったら鍛冶場をお借りしたいなと思いまして・・・」


「んあ???」


怪訝そうな顔をされるがここで引き下がるわけには行かない。無限収納から作ったばかりのウィスキーを取り出すと、こんなもので良ければ・・・とカウンターの上にドカリと置いた。若干ドヤ顔になってしまう。カウンター裏の男はその瓶のふたを開け、においを嗅ぐととたんに明るい表情で「おお!酒かっ!」とうなる。


「これはあれか!鍛冶場貸すならこの酒くれるってことか!」


「もちろんです!まずはお近づきの印ってことで持ってきたんですが、ちょっと特別な酒でして・・・」


男は目をキラキラさせながら素早い動きで後ろの棚からコップを取り出すと瓶を傾け注ぐ。そのまま一気に飲み干した。ふーーと一息すると男のは静かにコップを置いた。


「まあまあなウィスキーだな。それなりにする奴だとは思うがどこで買った銘柄だ?まあ量があるし何かの縁だ。2~3日ならかまわんよ!どうせしばらくは使わないしな!」


またなのか・・・酒でもやっぱり普通ということで・・・


「ありがとうございます。大事に使わせていただきます」


くっ・・・とりあえずは目標達成だ。どうやらウィンが大絶賛だったのはサイコが作ったからというところが大きいだろう。きっとどんなものを作ってもうまいうまいと飲むのだろう・・・しかし。さっきの「もう使わない」とは・・・まだ働き盛りのようにみえてもう引退する年なのだろうか・・・もしや自分の腕前を振るうにふさわしいものが現れるまで剣は打たねえ!ってパターンか!そう納得したサイコはさっそく男に案内されるまま、裏の鍛冶場に歩き出す。


「おれはジーザス!300年以上生きてるドワーフだ!ここの鍛冶場は自慢じゃないが帝都一だぜ!」




酒チートは予想失敗したが、鍛冶場の確保はできた。予定通りだ・・・予定通りなんだよ!あとは伝説の魔剣を作るのみ!


やってやりますよ!!!




+ジーザス

種族 ドワーフ / 年齢 329 / 性別 ♂

帝都の金物屋の店主。貴族向けの装飾武具と市民のための金物作成でのんびり暮らすドワーフ。


現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 1m

力 1

守 1

知 1

速 1

スキル 鑑定 言語疎通 肉体強化 魔力増強 料理 精神耐性 無限収納 調合 並行処理 New!!鍛冶 New!!酒造

魔法 転移 浮遊 治癒 ウィンド 浄化 New!!ウォーター New!!ウォーム

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