/// 15.生活基盤は大事です!

料理チートも失敗したが働き口をゲットしたサイコ。まずは生活基盤を作らなきゃな。厨房で一人、強い決意を固める。


やってやりますよ!!!




時間もすすみ、そのまま調理を続けるサイコ。


10時ちょっと前には、ここの料理長であるコックスがやってきて、めでたく正式採用となった。一時間で銀貨一枚とのことでこれなら6時間程度働けば生活には困らないだろう、とのことで今日と同じで6時から12時まで、とにかく数を作り続ける時間帯を担当することになる。正直なところ、遺跡で活動するための道具や装備を整えるなら、もう少しほしいところではある。だが、まずはこれで少しづつでもウィンさんに借りを返しながら、訓練所でレベルを上げることができる!いずれチートでウェイ!できれは何十倍にして返せるだろうと考えていた。


8時を過ぎたころ、ウィンを先頭にアレクとエビルが駆け足で食堂に駆け込んできた。そういえば何を言わずにここにいるんだったなと思いながら、一番先頭で自分の名を叫びながら駆け寄るウィンに謝罪しながら働き口が見つかったことなどを説明した。気にすることはないんじゃー!と涙しながらも、サイコが作ったのはどれじゃ?と言いながらビザとハンバーガーを選んでテーブルに運んでいくのを見送る。


何度ともなく時間はすぎ、お昼前ぐらいになると朝のような修羅場は減り、消費された分だけを適当に補充する簡単なお仕事に変わっていた。とは言え、もうそろそろ時間がたてばお昼の修羅場がやってくるのだが・・・それは12時で上がるサイコには関係のないことだった。時間はすでにお昼に差し掛かるころ、アレクとエビルはとっくに食堂を出ていったが、ウィンだけは時折こちらを眺めながら、たまにコーヒーなどを追加注文しながら時間をつぶしていた。どうやらサイコが終わるのを待っているらしい。


調理中には落ち着いた時間を見計らって、食堂内に設置されているメニューの中身を見てみると、コーヒーはもちろん紅茶やココア、シェイクやパフェ、各種ケーキにプリンなどなどなど、ドリンクやデザートメニューまでもが豊富に取り揃えられているようだ・・・そういった個別メニューについてはベテラン勢が作るとのこと。メニューの豊富さにため息をつく・・・料理系もあきらめた方が良さそうだ、とやるせない気持ちを抑えながら空いたスペースを埋めるように、ひたすら手を動かしていくことで気持ちを紛らわせていく。


時間がお昼を回ると、交代要員ともなる遅番勤務のスタッフが何人か補充されたためお役御免・・・と思ったら、今日は少し残ってくれないかと1時間の残業が言い渡されたので快く受け入れ、朝以上の修羅場の一部を垣間見たサイコだった。誰だ俺には関係がないといった奴・・・と思ったサイコだった。料理長コックスからは働き者だな関心関心!と褒められたが、そういった普通の誉め言葉はいらないのである・・・いらないのだ・・・チートがしたい!と切に思い食堂の天井を見上げる。


少しだけお昼の忙しさが緩んできた1時間後、サイコは額の汗をぬぐいながらコックス料理長にお疲れさまでしたと声をかけ、食堂裏の荷物置き場で着ていた真っ白な調理服を脱ぎ、かごに入れて横にある小窓から差し入れる。こうしておくと次の日には自分の割り当てられたロッカーに、丁寧にたたまれてはいっているとのことだった。無料なので食堂側の福利厚生といったところだ。


身支度を終えたサイコは荷物置き場から出ると隣の事務所となっている部屋にノックをしてから入室する。室内には事務員として働くサーラに声をかける。途中でケイン経由で紹介されていたので会うのは2度目だ。。黒と白のコントラストが美しくふわっふわの毛並みを持つ猫獣人の麗しき女性である。この食堂スタッフのアイドル的存在なので手を出すといつ後ろから刺させるかわからないから気をつけろと言われている。


サーラにお疲れさまと声をかけられ、銀貨7枚がテーブル上のトレーに置かれたので、ありがとうございますと丁寧に頭をさげ、受け取った。まとめ払いも当然できるが今は火払いがありがたい。明日もよろしくね。という声に再び頭をさげると静かに事務室を出ていった。日雇いバイトか・・・と前世の記憶になぞらえて若干みじめな気持ちにもなったが、この世界では普通らしいので気持ちを切り替える。


やはり働くのもいいもんだ。前世では長く感じていなかった労働の疲労感に心地よさを感じながら厨房から出ると、目の前にはニコニコとほほ笑むウィンが立っていた。


「サイコや!さっそくの仕事、おつかれさんじゃのー!」


力いっぱいのねぎらいに笑顔を返す。いったん上に戻るというウィンと一緒に部屋に戻り、ベットに腰掛け一息つくと、働いている最中に考えていた今後の予定を伝えようと思ったが、まずは・・・


「ウィンさん!これを・・・」


差し出した銀貨2枚をなんじゃ!と最初は受け取らなかったウィンも、最後には根負けして受け取り、孫からもらったプレゼントのように大事そうに小さな布袋にいれた。ちなみに昨日使うことのなかった金貨については、昨晩の気まずい雰囲気の中でちゃんと返却しているので、これはギルド登録の際にもらった分である。もちろん宿代なんかも世話になってはいるのだが、「今はとりあえずこれで!宿代については半分はちゃんと出せるように頑張ります!」と伝えられ、またも成長した孫を見るようなやさしい微笑みをしているウィンを見ていると、あまり気にしなくても良いのでは?と思ってしまう今日この頃。


そんなこんなで胸のつかえが一つとれた感じがするサイコは、気持ちも新たに午後の予定を考えていた。




+コックス

種族 人族 / 年齢 46 / 性別 ♂

帝都ギルド食堂の料理長 帝都でもトップクラスの料理技術を持っている。


+サーラ

種族 猫獣人 / 年齢 18 / 性別 ♀

帝都ギルド食堂の事務員 高い俊敏性と危険察知力などを併せ持った猫獣人。黒と白のコントラストが美しくふわっふわの毛並みを持つ。食堂スタッフのアイドル的存在。

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