/// 5.異世界の常識と農業チート
自分の弱さを知ったサイコだが結局はお嬢様と最怖執事と相乗りすることになった。
目の前の執事の笑顔が怖いんです・・・
道中ではカトレアお嬢様と執事エイルにこの国についての基礎知識も教えてもらった。
現在地はオリベイルという地域。王都に隣接する農業が盛んな地域でこの国の食を支える大事な領地らしい。
そしてその地域を任されているのがオリベイル侯爵家、そして目の前にはそのお嬢様と仕えている最恐執事。
オリベイル・カトレアというのがお嬢様のフルネームとのことで、夏の長期休みのために学園から侯爵家の本宅に戻る途中とのこと。
サイコは農業が盛んな地域ということで一つ思いついた。そう!異世界転生お約束の農業知識チートだ!
「エイルさん、ここでは農業が盛んということですが、どういった農法を使って作物を育てているのでしょうか?」
「そうですね。特にここ数百年は目新しいことはしていないと聞いています。専業の農家たちが適切な時期に適切なものを植え育てているかと」
顎に手を当てながら答える執事エイル。
「適切にということでしたら、毎年植える作物を変えたり畑を休ませたりしているのでしょうか?」
「いえ、そのような話は聞いていませんね。代々の土地を守るため毎年同じ作物を同じように育て品質を保っていると聞いています」
執事エイルのその言葉に心を弾ませるサイコ。
「そうでしたか!実は私の生まれ育ったところも農村地帯でして、そこではちょっと変わった方法で作物の品質を保っておりました。実は同じ作物を作り続けるとだんだんと収穫が落ちてしまうのですよ」
サイコの話に聞き入る執事エイルとカトレアお嬢様を見ながら、気分よく話を続けるサイコ。
「それで毎年作付けする場所を変え、時にはみつばなどを育てて畑をよみがえらせるのです。もちろん肥料などである程度は改善できますがこの方法ならあまり費用もかからず一定数の収穫が見込めます!その他にも肥料としては・・・」
ぺらぺらと現在農業知識を語り続けるサイコ。
「・・・といった感じでしょうか。まあ見ていただけなのでこの程度しか分からないのですけどね。
(どやっ!かなりの知識を提供できただろう!これならさぞかし関心されて、王都があるかわからんがなにゃかんやで招待されて歓迎され、貴族になんかなっちゃったりして・・・)」
うかれモードのサイコは言われてもいない妄想を脳内で繰り広げていたその時、
「すばらしい!!!」
執事エイルの一声にびっくりするサイコ。
だが執事エイルがそれほどまで驚いてくれることにうれしさがこみあげてくる。
「それ私知ってるわ!大昔に連作障害が出て大変だったって習ったもの!いまだにその輪栽式農業(りんさいしきのうぎょう)を使っている魔法否定派や隠居したスローライフの道楽貴族の年寄たちがいるって聞いたもの!」
カトレアお嬢様の言葉に思考が止まるサイコ。
「そうですね。学園に通われていないということで、実際に生まれ育った場所の周りの大人たちを観察したりお手伝いしたりで学んだことなんでしょう。学ぶことはすばらしいことです!」
ニコニコと見つめる二人に戸惑うサイコ。
「あの・・・今は違うのですか?
(どういう・・・ことだろうか・・・)」
「今はあまりコストがかからない化学肥料を少量つかったりゴブリンなどからでる屑魔石を使った育成魔方陣をつかった方法が安定農法として利用されております。もう数百年ほどその方法でこの国は回っておりますからね」
「そう・・・でしたか・・・」
そう答えるのが精いっぱいのサイコだった。
やはり農家さんの切磋琢磨というのは素晴らしいものだ。それは異世界でも同じ。原因究明と改善は積み上げられた経験と知識!改革はいつでも行われているのである。地球だけが進んでいるのではないのだ。先人の汗と努力の結晶に拍手っ!!!
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