/// 4.おっさんズと高貴な面々

せっかく転生したサイコも現地人との力の差の秘密を垣間見て愕然とする。

出会ったおっさんズが色々教えてくれたのでこの世界と自分の現状が少しわかってきたサイコ。


どうしてこうなった・・・




サイコとおっさんズが話していると背後から「うううん!」と咳払いが聞こえる。


振り返ると背筋がピン!と伸び気品あふれるこれぞThe・執事というイメージぴったりのダンディーな男性が口に手をあて咳ばらいをした態勢で立っていた。


(いつのまに背後に・・・まったく気配を感じなかったのだが・・・)


「ああ、申し訳ない。依頼主様をお待たせしてしまった。なんの問題もなく片付きましたよエイル様」

そう言ってなれない丁寧な言葉を使い一礼するアレク。


「いえいえ。あの程度の魔物の群れであれば、赤い盾の皆様の手にかかればまったく問題ないのは承知しておりますよ。ところで・・・そちらのおぼっちゃんは?」


そう言うとこのエイルと呼ばれた執事さんはサイコの方をにっこり笑顔で見つめている。


(笑ってはいるけど目が怖い・・・何を考えているのか読み取れない人はひさしぶりだ。というかおっさんズは赤い盾というチームか何かなんだろか?)

サイコが若干の恐怖の中おっさんズについて思いを巡らせていると、すぐさまウィンが助け舟を出す。


「この子はどうやら身寄りもない身のようでの。覚醒もまだじゃがそれでもわしらを助けようと助っ人にきてくれたようじゃ。まあ結果はみてのとおりじゃがの」


「ほお・・・」


「行く当てもないようですししばらく私たちに同行してはどうかと思案していたところなんですが・・・サイコくんはどうしますか?行く当てがあるのであれば強制はしませんが」


「もし・・・よろしければ少し同行させていただいても良いでしょうか?

(とりあえず何かしらのコネなんかを作っとかないと生きていけないからな・・・しばらく利用させてもらおう)」


イビルの言葉にサイコは同意する。


バーーーーーン!!!!

突然背後の馬車の扉が開くと金髪カールできらきらピンクなドレスの美少女が飛び出してきた。


「話は聞かせてもらったわ!私の話し相手になればいいのよ!」


「カトレアお嬢様・・・お行儀がわるいですよ」


お嬢様の行動に改善を促す執事エイル。

当のお嬢様はまったく気にしないそぶりで馬車内の一席をバシバシたたいて満面の笑顔でこちらをうかがう。

そこに乗れということなのか・・・


「いえ、お嬢様のような見るからに高貴な方と同じ馬車に乗るなど恐れ多いことです。それにアレクさんたちに色々聞いて学びたいこともございます」


「そんなの気にしないで!それに私が色々と教えてあげるわ!これでも学園では一番で覚醒もしているのよ!まかせて!」


ぐいぐいくるお嬢様にたじろぐが、どうやらそちらの馬車に乗るのは決定事項のようだ。


「ではお言葉に甘えさせていただきます。サイコ、と申します。よろしくお願いしますカトレアお嬢様」


あきらめて英国騎士風の礼をした後、満足げに乗り込むカトレアお嬢様に続いて同じ馬車に乗り込む。


お嬢様が隣の席をバシバシ叩きながらフンスと鼻息を荒くしてきらきらした目を向けるので抵抗する気もなくストンと座る。


「じゃあ俺たちも戻るわ。まあ後でなボウス。カトレア様もエイル様もお待たせしました。すぐに出発しますので」

急ぐ足取りで前の馬車に戻るアレクたち。

ウィンじいさんがサイコに向かって手をあげてから前の馬車に乗り込む。もうすでに孫を見るようなまなざしである。


ほどなくして馬車はゆっくりと出発する。


「それで・・・サイコはどこから来たの?家族は?どうしてまだ覚醒していないの?これからどうするの?」


きらきらとした瞳のままにお嬢様は興味本位の質問が飛ぶ。

そして沈黙。

サイコの回答を待ちわびているようだ。


「私は・・・田舎の村に両親と住んでいました。ですがその町が盗賊に襲われて次々と切り殺されていったんです・・・そして盗賊たちから私をかばいながら最後の力を振り絞って私を転移させてくれました・・・気づけば森の中におりましたので、浮遊で上空から周りをみていたらちょうどこの馬車が止まっているのを発見したので・・・」


「盗賊が!!!その村はどちらなの!今すぐ助けに行けば何とかなるんじゃなくて!」

「ふむ・・・盗賊が剣で・・・ですか・・・よほど辺境の村なのでしょうか・・・」


興奮した様子のカトレアお嬢様となにやら考え込んでいる執事エイル。


「わかりません・・・上空から周りを見ましたが見知った景色はありませんでした・・・両親は二人とも転移が得意でしたのでかなり遠くまで飛ばされたかもしれません・・・そしてあの怪我では両親はもう・・・」


即興ではあるがあらかじめ怪しまれないように考え抜いた設定をつらつらと話しながら、泣いてもいない目頭をお汗うつむくサイコ。


「そうでしたか・・・それは災難でしたね。ですが盗賊ですか・・・この時代にそのような輩がまだのこっていたとは・・・場所がわかれば良いのですが・・・」

やさしくサイコを慰めるような言葉と同時に、首をひねりながらいまだ考えこんでいる執事エイル。


「それなら今後の予定は何もきまっていないのね!じゃあ私のことろに来たら良いのよ!私の従僕として身の回りの世話をしながらいろいろと覚えていけばいいわ!」


カトレアお嬢様の思い付き発言に執事エイルはまたはじまったかと深くため息をはく。


「いえ、そこまでお世話になるわけには行きません。まずはこの世界を知り、自分の力がどこまでできるか確かめて生きていきたいのです」

(冗談じゃない!戦闘については追々上げていくとして、まだまだ俺にはほかに成り上がるチャンスが山ほどある!従僕になんてなっている暇なんてないんだからな!たしかに美少女ではあるが若すぎるしそもそも手を出そうもんならどうなるかわかったもんじゃない!距離を置くにこしたことはない!)


丁寧に断るサイコ。


「そう。残念ね。でも困った時には私のところに来るといいわ!悪いようにはしないから!」


「お心使い感謝いたします」


とりあえずは困った時の後ろ盾は確保したサイコは執事エイルに向かって鑑定をしてみた。


エイル

種族 人族 / 年齢 ?? / 性別 ♂


(なんだ?ステータスが見えないな・・・鑑定を阻害するスキルや魔道具みたいなのを持っているのか?)

首をかしげるサイコ。


「おや?今私を見ていましたか?」


「あっ!すみません。ちょっと気になったものですから。失礼をいたしました

(どわっ!やっべぇー!なんでわかったんだ???)」

突然のエイルの言葉にうろたえまくるサイコ。


「いえいえお気になさらずに。鑑定は慣れると何となく見られたのが分かるのですよ。それに・・・何も見えなかったでしょ?」

そういうとエイルはにっこり笑顔で左手の人差し指についている指輪を外す。


「もう一度、見てもらって構いませんよ。見えたとしてもなんの問題もないですから」


そういうエイルの顔は笑っているがちょっと怖い。


エイル

種族 人族 / 年齢 57 / 性別 ♂

LV 627m

力 7328

守 1589

知 6921

速 8259

スキル 鑑定 肉体強化 魔力増強 魔力操作 亜空間 暗殺 諜報 俊足 危険察知 隠密

魔法 火 水 風 土 光 闇 精霊


(これは・・・なんなんだ・・・能力値がはんぱない・・・後半のスキルなにこれ怖すぎ・・・魔法も・・・これは・・・見たところでお前はなんの脅威でもなんでもないよということか・・・)


戸惑うサイコをやさしく見つめながら指輪を戻す執事エイル。


「あの・・・とんでもなく強いエイルさんであればアイクさんなど護衛につけずとも問題ないのでは・・・と思ってしまうのですが・・・」


「ああ、確かにそうですが・・・魔物などを駆除する際にお嬢様のおそばを離れて何かあっては遅いのですから。先ほども私自身が完全に把握できる領域の中で動いておりましたゆえ。そうですね・・・3メートルほどでしょうか?その範囲であれば突然なにが起こっても対処は可能ですから」


なるほどと冷や汗をかきながらうなずくサイコ。


こういった人を怒らせないように慎ましく生きなくてはならないのでは・・・と思うサイコだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る