第6話 嘘告⑥

今日の時間割は、テストが最初にあり、その後は帰りの会をして帰るだけという非常に楽な時間割だ。しかし、俺は注意をする必要があるのだ。前回カンニングだと先生が騒いだせいで、他の先生にも疑われてしまったのだ。そのせいかテストが始まると、先生の視線をすごく感じる。


テストに関しては、歴史なため暗記作業をしっかりとしてくれば、全く問題がないような作り方だった。歴史とか生物とかは基本暗記してしまえば大丈夫だから、比較的緊張せずにテストに臨むことができる。


そうして特に問題が無くテストが終わり、帰りの会が始まった。昨日確認した場所にカンニングペーパーを貼ったりしていないかと心配になったが、その心配は杞憂だった。机の奥も確認したし、他にも色々なところを探しておいた。


探している過程でこちらをずっと見ている女子が居た。大方これから仕掛けるか、証拠を発見されないように見ているのだろう…


「どう考えても怪しすぎるだろ…とりあえずあの女子は警戒しておこう」


名前は知らないものの、もし俺に対して不利益を生じさせるような行動をするようなら容赦なく排除させてもらおう…


先生は俺の方をじっと見つめて口を開いた。


「冴橋君は放課後職員室に来てください。一つ重要な話があります。」


「分かりました」


周囲の女子が一瞬ニヤニヤしていた気がする…つまり不利益を被る可能性が高いから注意をする必要があるな…


その後は問題なく帰りの会が進み、学校からの帰宅時間となった。俺も本来ならすぐにでも家に帰りたいところだが、ぐっとこらえて職員室へと向かった。


職員室にはいると、数人の先生が俺の前に歩いてきた。するとその内の一人の先生が俺に対して話しかけてきた。


「君が冴橋君であってるかな?」


「そうですけど…何か?」


「校長先生に冴橋君を連れてくるように言われててね…とりあえずついてきてくれるかい?」


まるでを隠しているかのように顔は赤く染まっている…俺はこの先生を怒らせるようなことは一つもやってないんだけど…


数人の先生が俺の後方に立ち、逃げられないようにしているみたいだ。別に逃げるつもりはないけどこう囲まれていると、まるでのように扱われているみたいで腹が立ってきた。


「失礼します。冴橋君を連れてきました。」


「入ってくれたまえ!!」


「はい!!失礼します!!」


「…失礼します」


校長先生は俺の中では助けてくれた人に当たるから、正直この人に変なことを言われたくないし、疑われたくないな…


「他の先生方は全員退出してくれ。私と冴橋君で一つ話をしなくてはいけない」


「校長先生!!何故我々が外に出なければいけないのですか!!」


「この話は色々な事情があるんだ!!君たちには退出して貰う必要がある!!」


「分かりました…」


校長室には俺と校長だけがいる。でも他の人を外してまでして、話すことってなんだ?


「久しぶりだね冴橋君」


「お久しぶりです校長先生」


「そんなに硬い態度じゃなくて大丈夫だ。それじゃあ本題に入ろうか」


校長は俺が座っているソファーと対角になるように座った。校長は結構真剣な顔をしていた…




「唐突だが質問に答えてくれ…君はカンニングをしたのか?」


「カンニングなんてしませんよ!!まさか校長先生まで疑っているんですか?」


「そういうことじゃないから安心してくれ…私は君の味方だ。」


「分かりました。その言葉信じても良いんですね?」


「信じてくれ…それと、君にどうしてこんな事を聞いたのか気になるだろう?」


「そうですね…どうしてカンニングという話になったのか説明していただけませんか?」


「もちろん。そのつもりで君をここに呼んだんだ。それじゃあ一つ一つ経緯を説明していこう。」


校長先生が語ってくれた経緯はこうだ。前回、俺は担任の先生に呼び出されてカンニングを疑われたのを校長が把握して、事情を担任の先生に聞いたらしい。すると、担任の先生は根拠もないのに俺の事をカンニングをしたと断定しているため、話がつかないとして、途中で話を聞くのを諦めたらしい。


担任の先生はあまり事情を話さなかったらしいけど、一部は喋ってくれたみたいで、俺がカンニングをしたと先生に言ったのは女子だということが分かり、それを伝えるために今回呼び出したらしい…


「今後もしかすると君のクラスを変えるかも知れないからそこについて把握をしておいてくれ。」


「分かりました…それにしても、校長先生が俺を疑ってるわけじゃなくて本当に良かったですよ」


「私が君のことを疑うわけ無いだろう!!君のことを両親から託されたと言っても過言ではないからな!!」


この学校には、受験をするにあたって事前にたくさんの先生とあってきた…校長先生もその内の一人に当たる。そしてお父さんとお母さんのことを知っている唯一の学校関係者と言っても過言ではないだろう…


「…どうしたんだ?そんな難しそうな顔をして…」


「すみません…最近体調が優れないもので…」


「大丈夫かい?もし体調が悪いようなら、先生が車で送っていこうか?それと妹さんの方は元気にしているかい?一時期は家からずっと出てこなかったと聞いたけど…」


燐火は俺が回復して、家に帰ってきてからずっと家にこもっていた。それに俺が外に買い物をしに行くだけでも必死に止めてきたのだ。買い物をしようと玄関に向かう度に俺に抱きついて『外にいかないで!!』と言われたのは本当に俺も辛かった…


辛かったけど、今はそれ以上に憎悪が勝っている…飲酒運転をして俺の両親を殺したあいつはいづれ絶対に後悔させてやる!!それと霧雨…あいつは俺のことを影で馬鹿にしているのもしっかり分かったし、楽しい高校生活を送れなくしてやる!!


「大丈夫ですよ!!妹も今は外に出れるようになっていますし、何より中学生に上がりましたからね…でも今後はどうしようか迷っているんです」


「そう言えばそうだったな…」


「はい…一応高校まではお金を出すと祖父が言っているのでそこは安心できます。」


「そうか…でも気をつけてくれよ?中には、両親を失った子供を尻目に遺産争いをするやつもいるからな…遺産の分配みたいなものには参加したのか?」


「いえ…というのも参加しようにも難しくて…」


「そうだったのか…」


「一応後から連絡が来て、家の方を購入した時の借金みたいのは全額支払うと他の親戚から言われましたね…」


「それなら一応大丈夫なのかもな…でも私は君たち兄妹が本当に心配だ。君の妹もこの学校で過ごしてほしいくらいだ。」


「それはわかりませんね…妹に聞いてみないと正直なんとも言えないです。それと一つ疑問に思ったことがあるんですけど良いですか?」


「何でも聞いてくれたまえ!!私が知っていることだったら何でも応えてあげよう!!」


「ありがとうございます。それじゃあ教えてほしいんですけど、もし仮に鹿どうしますか?」


これは仮の話ではなくて、本当の話だ。以前教室で担任の先生である彼女が、俺に面と向かって言ったわけではないが『両親が居ない』ことをバカにするように言っていたのだ。だから彼女の事を正直よく思っていない…


「両親を?」


「そうです。仮の話なので最悪聞かなかったことにしてくれても…」


「私だったら、馬鹿にしてきたやつを徹底的に潰す。完膚なきまでに叩き潰して二度と今までと同じ生活を送れないようにしてやるさ」


「校長の両親は優しかったんですか?あくまで俺の主観になりますけど、基本的には皆優しいと思うんですけど…」


「そうだな…家は比較的優しかったかな?私の父は、頑固だったけど当時子供だった俺にも、悪いと思ったら必ず謝ってくれたからいい人だったよ…今でも実家に帰った時には晩酌をすることもあるかな〜」


「いい人たちですね…それと、さっきの質問に答えてくれてありがとうございました!!」


「良いんだ!!もし本当に君の両親のことを馬鹿にしているようなやつが居たら、私の前につれてきな!!厳正な審査の上で処罰を下してやる。」


「そうですね…校長が居てくれて本当に感謝しています!!これからも頼りにしています!!」







この時、校長は人生でも数回しか経験したことのない感動に襲われたという…


しかし、校長は感動に襲われると同時に何故か嫌な予感がしていた…もしかすると何かをするつもりなんじゃないか?と…







いつも見てくれてありがとうございます!!

この作品はまだ投稿を始めて5日しか経過していませんが、順位が高くてびっくりしています!!今後とも皆さんの応援をお待ちしています!!


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