第5話 嘘告⑤

生徒会長と先生の乱入により、脅して利用する予定だったあいつらが先生に捕まってしまった…現在は職員室で沢山の先生に見られながら、どうして俺を殴っていたのか聞かれているんだろう。


「ふぅ…」


「大丈夫か?冴橋実君?」


「どうして俺の名前を知ってるんですか?俺の名前を知ってる人なんてクラスの人くらいだと思うんですけど…」


「それはね、生徒会長と言うか生徒会のメンバーは学生の名前と顔を大体覚えているのよ。仮に、問題が発生した場合でもすぐに対処することができるからね?」


「へぇ〜生徒会は大変そうですね」


「実際大変だよ?注目をあびるのは私達だからね…それにいろんな仕事もあるから正直いつも人が足りないよ…」


「そうなんですね…それと、ここまでで大丈夫です。生徒会長」


「大丈夫なのかい?まだ保健室までは距離があるけど…」


「大丈夫です。すこしゆっくりしながら保健室に行きますよ」


「しっかりと保健室に行って手当をしてもらってください。一応後で保健室の先生に確認を取りますけど良いですね?」


「そんな心配しますか?別に大丈夫ですよ…保健室には行きますから」


「分かりました…もし、今回のように殴られたりしたらいつでも頼ってくださいね?」


生徒会長の名前は何だったっけな…思い出せないけど、少なくとも彼女が俺に不利益を生じさせる存在ではないと思った。ぜひ今後とも頼らせていただきたいところだ…


俺の体は全身、あいつらが俺の事をに殴ってくれたおかげで、痣ができてしまっていた。流石に顔を殴るようなことをしないと思っていたけど、蹴りは数発顔に入ってたしな…おそらく明日にでも呼ばれるだろうし、そこで復讐してやろう…


「あのタイミングで来られたのは本当に最悪だ…もう少し経ったら一度ボコボコにして、動画を見せて脅す予定だったのに…」


とは言え、あのまま殴られていたらまずかったかも知れない。そこについては生徒会長と先生に感謝だな…





保健室で処置をしてもらった後、俺は教室に戻ってきた。クラスの皆は移動教室で体育館に移動していて誰も居ないため、クラス内の色々なことを調べることができる。


「まずはこの前言っていた、カンニングの決定的な証拠になりうるものが俺の机にあるか探すか」


カンニングの決定的な証拠…音声を使うとは考えにくいし、写真なんかを取るはずがない。つまり、カンニングペーパーや机の上に回答を書いておく等の事をしているかも知れない…


まずは最初に机の中を見てみた。机の中はしっかりと自分で整理しているため本来ならキレイに整頓されているはずなのだが…


「はぁ…俺の教科書勝手に借りてったやつがいるな?これ…」


確認してみると案の定、体育の教科書が俺の机の中から無くなっていた。放課後に返すつもりなのかも知れない…実は犯人の目星はついていて、机の中から勝手にとらないでくれと一度注意したのにも関わらず、いつまでも俺の教科書を勝手に取っていくのだ。そのため、嫌でも名前を覚えてしまった。


そいつの名前は、東上柊矢と言い、このクラスの中でも一番の問題児と言っても過言ではないだろう。現に停学処分をくらい、最近まで学校に来れていなかったやつだからだ。


借りるのならいつも一言言ってからにしてくれって言ってるのに…こいつもそろそろ一度しめたほうが良いのかも知れないな?殴ったりするのは良くないから、効率的な手段であいつを退学させよう。


その手段はまた今度考えるとして、今最優先でやらないといけないのはカンニングの証拠となりうる物の捜索だ。おそらく簡単には見つけることが出来ないだろうから、場所の把握くらいはしておかないと否定するにも否定できないな…もし見つけたら、写真でもとっておいたほうが良いか?




俺はそれから自分の机の周りを徹底的に探した。机の裏や、机の脚を含めて様々な所を探したが結局見つけることが出来なかった。


「見つけることが出来なかったのは本当に残念だが、カンニングペーパーを仕込んだりするならここだろうと目安を付けておいた。もしそこにつけていた場合、テスト開始後にすぐに回収して、あいつらに回収させないようにしないとな」


特に注意するべきなのはやっぱり彩だ。あいつは一時付き合っただけだが、頭の良さが桁違いだった。同じ高校生なのか?と思ってしまうほど頭が切れるから下手に行動すると揚げ足を取られてしまう可能性があるため、慎重に行動しないといけない。


「もしかすると他の方法でも仕掛けてくる可能性があるから、対策を考えておかないと…」


俺は色々な対策を考えながら、帰る準備を始めた。さて…まずは俺の教科書を勝手に使ったあいつに制裁を下そう。『次はないからな?』と忠告したのに、勝手に取るなんて本当に図々しいやつだ…一度痛い目にあわないと学ばないんだろうな?




帰りの会が終わった後、俺は東上を呼び出した。東上はいつも以上にヘラヘラとした態度で俺の前に現れた。


「なんだよ冴橋!!俺はこれから放課後に遊びに行かなくちゃいけないんだよ!!」


「お前どうして呼び出されたのか分かってないのか?」


「まさかだけど…告白ですかw」


「お前俺の事馬鹿にしてるだろ?いい加減にしろってこの前に言ったよな?」


「この前っていつだよw具体的な証拠を示してくれないとわからないな〜」


「はぁ…とりあえずそこは後で追求するとして、お前に一つ聞きたいことがある。」


「さっさとすませろよな!!」


「お前さ…俺の教科書勝手に取っただろ?」


「だから!!さっきと同じだけど具体的な証拠を出せって言ってるの!!」


「これを見ろ。お前の机の中だ…これなんだと思う?」


「体育の教科書じゃねーの?そんな事もわからないのかよw」


「君は俺以上の馬鹿だな?名前の欄をよく見てみろよ。俺の名前が書いてあるだろ?これ以外にも多数証拠があるが…どうする?認めるか?認めないか?」


「うっせーな!!お前みたいなやつから教科書を借りてやってるんだ!!むしろ感謝してほしいくらいだ!!」


「いい加減にしろ…この前、お前が生物の教科書を勝手に借りた際に、俺の教科書を随分とボロボロにしてくれたよな?」


「あれはバケツが悪いんだよw俺は悪くないねw」


「…」


「なにか文句でもあるのかな?もしあったとしても、どうしてその場で言わなかったのかなwもしかして俺のこと怖かったw?」


「…お前って口で言ってもわからないんだな」


「それがどうかした?話は終わりみたいだし、帰らせてもらうね〜」


「この会話はすべて録音させてもらったからな?これを校長と教頭がいる前で再生しちゃったらどうなるんだろうね〜イジメを静観するような学校じゃないと俺は信じてるけど、もし対応されないなら、更に上に掛け合えばいいだけだからね」


「はぁ?ふざけんな!!さっさとそのデータを消せ!!」


「今まで散々いじめてくれたよね…君にとっては他人の教科書を勝手にとって損壊させるのは、イジメに当たらないみたいだね?客観的に見たら、無断で教科書を取り、損壊させたんだよ?頭の悪い君でも分かりやすいように説明したんだけど…分かるかな?」


「てめぇ!!」


「そうやってすぐに暴力に走るんだね…この学校って意外とヤバかったりするのかな?」


俺は以前のように殴られるのではなく、避けておいた。そもそも大ぶりのパンチすぎて遅いんだけどね?


「ちなみにこれは撮影してあるから、警察にも出せるね?君の高校生活は終わりになるよ?大丈夫かな?」


「くっ…」


「俺は寛大な心の持ち主だから、君にひとつ救いの道を示してあげようじゃないか!!」


「…どうすれば良いんだ?」


「簡単なことさ…俺の駒になるんだ。そうすれば(利用する価値が消えるまでは)訴えないでやるよ」


「本当なんだな?」


「俺はお前とは違って寛大な心を持っているからな。その代わり呼ばれたらすぐに来ること、俺の命令には絶対従うこと。これが条件だが、良いよな?」


「はい…」



俺は今後の復讐に利用できそうな駒を手に入れた。こいつの運用方法を考えないとな…





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