第2話 嘘告②

「ふぅ…『屋上に来てほしい』だなんて、どんだけ古典的なんだよ…名前を書いてないから誰からのラブレターなのかもわからないし…」


俺は時間になるよりも少し早く屋上に来ていた。指定された場所が屋上だったのが非常にびっくりした。なぜなら、屋上なんて基本的に使用する人が居ないからだ…


「それで俺にラブレターを出した誰かさんはまだ来ていないみたいだし…というか俺みたいなやつにラブレターなんて来るのか?本当は嘘で、屋上に来たのを笑いに来たとかか?」


俺はそんな予想をしてしまったものの、時間になるまでは後数分が掛かるので待機することにした。どれだけ待てば来るのかは分からないが、あまり期待しないほうが良いのだろう…


そんな風に考えつつ、屋上にあるベンチに座っていると屋上につながるドアが開かれた。そこに居たのは、同じクラスの人でこの学校1の美女と呼ばれる霧雨彩だった。


彼女は成績優秀、品行方正、高い運動能力、等を兼ね備えた超人とも捉えることができるような人だ。クラスのどんな人にも優しいし、勉強ができるから分からない人の為に教えたりもしているらしい…そんな彼女を好きになる人は多く、この学校に入学したばかりなのに既に数十人から告白を受けたという噂もある。


そんな彼女が何故ここに…まさか本当に嘘告なんじゃないか?俺はいわゆる陰キャだぞ?俺では釣り合うはずがない…靴箱を間違ったとかありえるかな?


「あっ!!いたいた〜実くん!!しっかりと手紙を読んでくれたんだね!!」


「えぇ…まぁ一応読みましたけど…」


「要件というか…伝えたいことがあって…聞いてくれる?」


「伝えたいことってなんですか?」


「私、実君のことが入学した時から好きだったの!!だから私と付き合ってくれない

?」


「えっ?俺のことを好き?」


「そうだよ…もしかして、実くんは私のこと嫌い?」


「いえ…嫌いというわけではないんですけど、唐突すぎて処理できていないと言うか…」


「そんな事を言わないでよ…というかなんでそんな口調が硬いの?もう同じクラスになってから結構経ってるじゃん?男子と女子もお互い結構喋るようになってるしさ?」


「…」


「私のことが嫌いなの?もしかして、他に好きな子でも居るの?教えてよ!!」


「俺に好きな子が居たとして、貴方に教える義理はないですね…それに先程から私は貴方のことを嫌いとはいっていませんが…」


「ひどい!!私がこんなに気持ちを伝えてるのに!!どうして付き合ってくれないの?」


「わっ分かりました…分かりましたから、泣かないでください」


「ひっぐ…じゃあ今日から私の彼氏ね!!よろしくっ!!」


「…よろしくお願いします」


それから学校1の美女と呼ばれる霧雨彩との彼氏と彼女の関係が始まった…



彼女は最初の方は事ある毎に俺のところに来て、『ご飯を一緒に食べよう?』みたいなお願いをしてくることが多かったが、1ヶ月経った頃から全くそういうのに誘われなくなった…帰る時は一緒に帰っているけど、最近はあまり会話していない。


俺は様々な行事の担当を押し付けられたりしていたため、基本的に彼女と一緒に居る時間はなかった…申し訳ないと思いつつも毎回断ったりしていた。でもいつしか彼女のことを考えると胸が痛むようになった…何度も断ってしまった分、一緒にいる時間を作ろうと思った。でも、彼女は俺を拒絶するようになってしまった。


拒絶するのに、何故か一緒に帰るという謎の矛盾に悩みつつも、どうすればいいか考えていた…そんな日々を過ごしていると、いつの間にか彼女の事が気になっていた。気がつくと彼女の事を目で追うようになっていたのだ…


そんな日々を過ごしていたある日、俺は明日中に出さなければいけない課題を学校に忘れてきたことに気づき、取りに帰っていた。


俺は教室の目の前まで来て、あることに気づいた。それは教室の明かりが消えていないということだ。


「だれかが使ってるのかな?でも、この教室を使う部活はないはずだし…」


教室は部活がたまに使うことがあるらしいが、俺がいつも通っているこの教室を使う部活はない…つまり明かりを消し忘れているか、中に誰か居るということだ。


俺は教室のドアを少しだけ開けてみた…するとそこには、数人の女子が居た。


バレないように少しずつ開けて、中の様子を確認することが出来た…中では数人の女子が誰かについて話しているようだった。


『で?どうなのよ彩っち〜あいつはどうだった?』


『う〜ん…とはいえ、告白するのはやっぱり辛かったかな〜だって、あいつ私のこと最近ずっと付きまとってくるからさ…ほんとめんどくさいんだよね?』


『ね〜ね〜彩っちって確か先輩と付き合ってるんだっけ?3年のサッカー部のエースだっけ?』


『そうだよ〜古河先輩って言うんだよ!!凄いカッコいいんだ!!』


『大丈夫なの?古河先輩って黒い噂があるけど…なにかされた?』


『古河先輩はあいつのことを今度見かけた時にぶん殴るって言ってたよ!!俺の彩に手を出すなって言ってた!!』


『古河先輩ってやっぱ良いね!!あいつも殴られたら、別れ話でもしてくるんじゃない?泣きまくって汚い顔で、彩っちの所に来るかもよ?』


『その時は、全力で振ってあげるわ!!学校に来れないように心を折ってやるわ!!』


『彩っちやば〜優等生っぽいのに、結構キツイことするんだね〜』


『私はもともとこういうのだからね〜しょうがないって感じかな〜』


『そうだ!!ついでにさ!!あいつのことを時録画しておこ?後で見返せるようにさ!!』


『あはは!!それいい考え!!いつ振るの?ついでにあいつを孤立させようよ!!それで彩に頼ってきた所をふるって感じで!!』


『ナイスアイデア!!いつ振ろうかな〜』


『二週間後くらいでいいんじゃない?それくらいのタイミングだったらちょうど孤立するくらいだろうし…』


『でも孤立させるって言ったって、どうするつもりなの?あいつ私に手を出してきたわけじゃないからそういうのは使えないよ?』


『関係が悪化して、あんまり喋ってないんですけど、何故か最近ずっと視界にいると言うか…若干ストーカーされてます!!って担任に言いつけてみれば?面白いことになりそうじゃない?』


『それで行こ!!それじゃあこの話は終わり!!今日はこの後何処いく?駅前の新しいカフェにでもいく?』


『そうしよ!!』


俺は心のなかで、なにかが上がってくるのと同時に、という気持ちになった。最初こそあまり好きではなかったが、1ヶ月経ち、彼女のことをいつの間にか好きになっていた…でも彼女にとっては俺のことは遊びだったんだ。






「俺をあいつらは楽しんでたのか…」


俺はこの時初めて、怒りを感じた。両親を飲酒運転で追突されて失った時にだって、犯人のことを妹の顔を立てて一応は許したのに…でも、今回の件で許すのはダメだと気づいた。徹底的に報復してやる!!


「絶対に許さない!!あいつにも同じ…いや、それ以上の苦しみを与えてやる!!」






本日も投稿させていただきました!!

初日なのに沢山見てもらって嬉しかったです!!これからもよろしくお願いします!!


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