記念ショート06 こんな世界で




 あるかもしれないし、ないかもしれない。

 ダンジョンが存在せず、ハンターもいない。

 そんな世界で私たちが出会ったら…




「山下さーん、彼氏がお迎えよー」


「ほんと、陽菜ちゃんは三上先輩に愛されてるわね、毎日送り迎えじゃん。」

「ね! イケメンだしサッカー部のエースでしょ? 最高じゃん!」



 …そう思うなら思えばいい。

 望むなら変わってあげる。




 私が子供のころに両親は交通事故で亡くなった。

 引き取ってくれたのはパパのお兄さん夫婦だった。

 2人には子供がいなかったのもあって、本当の娘みたいに愛してもらえたし、ちゃんと高校にも入れてもらえた。

 1つだけ問題があるとすれば伯父さんと仲のいい三上さんの息子の浩二くん。


 1つ年上の幼馴染って関係だけど私のことをずっといやらしい目で見てきて本当に気持ち悪い。

 浩二くんが何回告白されたとかほんとどうでもいい。






 その日、私は2年の先輩に呼び出された。

 校舎裏に連れて行かれるのはもう慣れちゃった…


「あんたがいるから三上くんに振られたじゃない!」

「そうよ! 幼馴染だか知らないけど邪魔なのよ!」



 2年の女子の先輩2人から責められるのもいつものこと。


「私は浩二くんとお付き合いはしていませんから、先輩のお邪魔はしませんよ…」


「そういう問題じゃないの!

 あんたがいるからいけないのよ!!」

「ねぇ、怒鳴ってもしょうがないからさっさとゲストを呼んじゃお?」


 …ゲスト?

 こうして呼び出されて怒鳴られるのは何回目になるのか…

 靴や教科書を隠されたり水をかけられることもあったな…



「お待たせー!

 クソ女の陽菜ちゃんにはお友達を紹介しまーっす!

 半グレのお兄さんたち7人よ。 みんなと朝まで楽しんでね!」



 うそ…

 どういうこと…?

 そこにいたのはちょっと近づきたくない感じの男のひとたち…

 ここまでするの…?


 いや… そんな目で見ないで…


「ぃ…… ぃゃ……」


「心配しないでも大丈夫!

 ちゃーんと先生とも話しはつけてあるから安心して楽しんでね!」

「そうそう、あとで吉田せんせも呼ぶことになってるから安心して?」



 安心できる要素が1つもないよ…


 もうやだ…


 パパ… ママ… 私も一緒に死ねたらよかったな…



「へへへ… こいつ1年なんだろ?

 いいもん持ってんじゃん!」


 男の1人が私の胸を…



 もうやだよ… 浩二くんにも触られて、このひとたちにも…




「そのへんにしときな。」



 地面にへたり込んだ私が声のする方を向くとそこには隣のクラスの男の子がいました。 どういうことなんでしょう…

 彼もこのひとたちの仲間なんでしょうか…


「あぁん? なんだよガキじゃねぇか。

 おい! こいつはシメていいんだよな?」


「いいわよ、顔も知らないしどーでもいいわよ。」



 このひとはたしか… 神薙くん…

 合同授業で何度か顔は見たことはありますが話したことはありません。

 もしかして… 助けに来てくれたの…?




「最近さぁ、うちのシマを荒らしてるガキがいるって聞いてたけどお前らか?

 学校まで来るってことぁハンパもんだよなぁ。」


「は? おいおい、ガキはどっちだぁ?

 調子のんじゃねぇぞ!!」



「キャーーー!」


 神薙くんが殴られます!

 とっさに目をつぶって俯いてしまいました。



 ゴスッ バキッ メキッ



 こわい…

 殴るだけじゃなくて骨を折るようなもっと違う音までします…

 もうやだ…


 だれか助けてよ…



「クソがよぉ…

 せっかく猫かぶってたのにいい迷惑だ。」



 あ… れ……?


 この声は神薙くんの声です…


 あんなに殴られたはずなのに声は元気そう…?



 頑張って顔を上げます、お願い… どうか神薙くんが無事でいてくれますように…



「お? お前はたしか隣のクラスだったか?

 めんどくせぇとこ見られたな…


 まぁいっか、お前今日から俺のものになれよ。」



 そう言って神薙くんは私の顎をそっと上げて言葉とは裏腹に優しく唇を奪いました。 浩二くんにも許さなかった唇を…





「ふーん、陽菜ちゃんってそういうのが好きなんだ~~?」


「えぇ!?!?!?!?!?」


 嘘! 見られた!?


「うんうん、わかる。 わかるよぉ~。

 零司くんってハンターじゃなくてもきっと強くて強引でかっこいいよね!」


 はっ… 恥ずかしい!!


 私の妄想と願望が煮詰まった小説を美夏ちゃんに見られてしまいました…

 どうしましょう!?


「あ… あの… 美夏ちゃん…?」


「ん~? な~に~?」


「このことは内密に…」


「どうしよっかなー?」




「美夏ちゃん… やっていいことと悪いことがあるよ… 美夏ちゃんならわかるよね?」


 もうこれしかありません、にっこり笑ってごまかすしか!


「ひぃ!? う、うん! 任せて! 誰にも言わないから!!」



 あら?

 思ったよりすんなり引いてくれましたね。

 これで美夏ちゃんのことをふふっしなくてもいいですね。



(あぁ… 怖かった… 陽菜ちゃんを怒らせるのだけはほんとやめとこ… 姉さんたちよりゆかりさんより陽菜ちゃんが1番怖いよ…)






作者です。


今回は3万PVを記念したショートをお届けいたしました。

勤労感謝の日ということで、本来の新嘗祭をモチーフに白米を食べるお話しも考えたのですがそうなると美冬の食いしん坊ショートになってしまいますので全然関係ないネタにしてみました。


大事なことなので明記しておきますね。


『妄想小説落ちです』


記念ショートをやろうと思ったときにはこんなにたくさん見ていただけるとは思っていなくて、「1~5万は1つずつで、5万とかいけたらいいな~」なんて思っていましたが…

嬉しい悲鳴を上げております。


なにか記念をこじつけてまた書きます。


お楽しみいただければ幸いです。

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