057 俺の過去の話しだよ





 風間さんへの連絡の後、みんなと話す時間をとることにした。

 すぐにすぐっていうわけじゃないけど… 結婚… するから…


 俺の過去についてある程度話しておかないとな…




「ミフユのごはんはいつも美味しいですね、今日も食べ過ぎてしまいました。」


「ん、喜んでくれてよかった。」


「お前らは味覚が変わったりはしてないか?」


「んー、そうね、少し前から違和感があったからそれがはっきりした感じがするわ。 私はヴァンパイアだからレアなお肉とかほしくなるわね。」


「前よりお野菜が美味しく感じるかも? エルフってベジタリアンなイメージがあったけどお肉とかも平気でよかったよぉ。」


「そんなもんか、ならこれまで通りバランスよく作ればいいな。」


「だね、あたしたちメインで回せばいい。」


「私も歩けるようになりましたからお手伝いしますね!

 零司さんに私が最初から作ったものも食べてもらいたいので!」


「おう、いいぞ。 しっかり教えてやるよ。」


「手が増えるのは助かる。」




「みんな悪いんだけど、これから少し俺の話しを聞いてもらっていいか?」


 夕食後の団らんの時間をこんな話しに付き合わせるのはあまりいいこととは思わないけど、今言っておかないとズルズルと言えないままになってしまいそうなんだ。


「零司くん? どうしたの?

 なんか深刻な話し?」


「あぁ、俺の過去の話しだよ、生まれてからこっちに来るまで。」


「こっちに来るまでというとついこの前じゃないか?」


「そう、どこから話せばいいかな…」



 こうやって過去のことを教えるなんて今までしたことがないから何から言えばいいのかよくわからん…



「そうね… 実家についてと私たちと知り合ったころについて教えてほしいわ。

 昔のことで覚えてないかもしれないけど…」


「あぁ、実家か。 それじゃあそこから話しを始めようか。」




「俺の実家の神薙家は古くは平安時代の陰陽師に先祖を持つらしい。


 陰陽師は、占い、天体観測、暦の編集なんかもしていたみたいだけどうちの先祖は妖怪や悪霊退治をしてたらしい。


 これは想像通りだね。


 きっかけや時期なんかはよく知らないけど、公的な陰陽師から民間の祓い屋はらいやになったんだ。


 それからは圧倒的。


 妖怪退治や呪いに占いって一族で手広くやって、


 フリーの祓い屋をどんどん取り込んで勢力を伸ばして、業界を支配したんだ。


 ある程度時代が下るとそういうオカルト的なものへの信頼みたいなものは薄れたってことになってるけど、本物の権力者の間ではそんなことはなくて。


 顧客は少なくなったけど、それぞれがかなりの大口になっていくんだ。


 そうやってダンジョンができるこの時代まで力と血を繋いできたのがうちの神薙一族なんだ。」



「すごいですね… そんな古い家柄の出身なんて…

 私たちハンターって活動しているのは二世までですから…」


「そうですね、武士の家系出身のハンターは聞いたことがありますが、陰陽師ですか…

 もしかして、神薙家というのは世界でステータスが目覚める前からずっとハンターと変わらない戦闘力を持っていたなんてことは…」


 いいところに気づくね。


「小百合の言う通り、そうらしいよ。

 その時代のことはさすがに知らないけど、直系はほぼ全員目覚めているし、現役でハンターやってる中にはAランクやBランクがゴロゴロしてるよ。」


「でも、そうしたらなんで零司くんは扱い悪いの?

 ゼロさんとしてはSランクなんでしょ?」


「零司… いいの…?」


「そんな悲しそうな顔するなよ、ちゃんと話すって決めたからさ。

 でも、ありがとうな。」


「神薙の子供は生まれてすぐ、それから毎年の誕生日にステータスを鑑定されるんだ。」


「生まれてすぐ? そんな段階でステータスに目覚めてるわけがないだろ。」


「ん、早くても10歳とかじゃないの?」


「非公式ではあるけど、神薙結人(かんなぎゆいと)は5歳で目覚めたよ。」


「ユイト? だれです?」


「西日本で注目を集める新人ハンターですね、零司さまたちと同じ高等部1年でBランク… え… と…?

 かん…… な… ぎ?」


「あぁ、戸籍をいじられてなきゃ俺の弟ってことになるな。」


「それじゃあ、結人さまのお兄さんでAランクの龍臣さまは…?」


「あぁ、兄だね。

 そっちは8歳だったかな、結人と同時期に目覚めて、3歳上だったはずだから。」


「神薙一族の噂は協会でも何度か耳にしておりましたが、それほどとは…

 そんなに早く目覚めて不都合などはないのですか…?」


「そんなのあるに決まってる。 思春期くらいの年齢になると力に酔って暴走しがちだし、子供のうちは力の制御が上手くいかなくて者を壊すし近くの人間を傷つけるし大変だよ。」


「ねぇ、そんなひとはどーでもいい。 れーじは何歳だったの?」


 美冬はそうだろうね、興味のあること以外はほんとどうでもいい。

 そういうところは俺も気を遣わないでいいから楽でいい。


「俺は生まれたとき。

 そこから俺は「できそこない」なんだよ。」


「どういうことだ?

 生まれながらにステータスを持っているのに「できそこない」? 小さい頃に目覚めたというその2人の兄弟は西日本で英雄扱いされていると聞く。 矛盾していないか?」


「そこについては… 美夏は俺のステータスを覚えてるか?」


「「「「「え?」」」」


「うん…」


「言ってみな?」


「うん… レベル3でジョブもスキルもなし…」


「どういうことだ…?」


「見せた方が早いな。 ほら、これが俺のステータス。」



 名前  神薙 零司

 レベル 4

 ジョブ -

 スキル -



 お、レベル上がってるじゃん。



「これは… なにかの間違いでしょうか…」


「あぁ… 零司がレベル4なわけがないだろ…」


「主様のこれは隠蔽がかかってますか?」


 お、よく気づいたな。


「鈴が正解、俺のステータスには隠蔽がかかっている。

 これが理由なんだよ。」


「でも隠蔽って鑑定で見ることができるって授業で習いましたよ?

 零司さんの実家がそんなにすごい家なら上級鑑定のスキルを持ったひともいるんじゃないんですか?」


「それがな、俺のステータスは上級鑑定で見てもこのままなんだよ。」


「隠蔽… 鑑定… 上級鑑定でも見えない…

 超級なら…? まさか兄さん!?」


「そういうこと。 平坂に見てもらうまで俺自身も自分が無能なのにステータスがある「できそこない」だと思ってたんだよ。」




作者です


次回より過去編を少々挟みます。

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