サイドストーリー 山下04 山下ゲストを2人呼ぶってよ(後編)





「次の質問に行きますね!!


 【なんでサブゼロしか出ないの?】


 あぁ… これですか…

この質問はかなりの長文だったので要約させていただきました。

 実はサブゼロ以外のクランにもお声がけはしているところなのです。 回答待ちであったり、スケジュール調整中であったりしていますので他のクランの方もお呼びする予定はありますのでチャンネル登録をしてお待ちください。


 先回りして言っておきますと、私個人やクランサブゼロの関係者と面識のない方にはなかなかお声がけができていない状況です。

 先方もいきなり出演オファーが来ても困るでしょうからその辺りはご理解ください。」


「まぁ、サブゼロのやってる番組っすからね。」


「赤ちゃん、それを言っちゃうとおしまいよぉ?

 知り合いから順番って感じかしらぁ? 私もSNSは見たけどぉ聞いたこともない人が自分も出せって書いてあって気持ち悪かったわぁ~。」


「由良もきついじゃねぇか!

 ちなみに調整中って誰なんす?」


「お名前までは言えませんが、九州から1つのクランをお呼びする話しはできていますよ。 あとは日程調整だけになっています。」


「あらぁ?

 九州というとこれまでうちとはあんまり関係なかったと思うけどぉ…」


「そこは色々あるんですよ。

 ではお時間的に次で最後の質問になると思います。


 えーっと… これか…


 【一般人です、ハンターの恋人がほしいんですがどうしたらいいでしょう?】


 この類いの質問は本当に多いですね、前回いただいた質問は知り合いのハンターを振り向かせたいというお話しでしたが今回は少し違いますね。 いい質問とは思えませんが。」


「これって知り合いのハンターとかじゃなくて、ハンターって職業と付き合いたいってことっすよね? 舐めてんのか?」


「気分悪いわ。

 山下さん? この質問選んだスタッフはクビにしといてくれないとうちのメンバーの次の出演はないから。」


「はい、お気持ちはお察しします。

 この質問をした方へ言わせていただきますが、あなたがもし銀行員だから付き合いたいとか、CAだから付き合いたいと言われたらどう感じますか?

 「ダンジョンの話しを聞いてみたいから知り合える場所が知りたい」とかであれば答えてくれたかもしれませんが、これは非常に無礼な質問です。


 ハンターのことを人間だと思っていますか?

 ただの財布だと思っていませんか?


 他の質問者さんには申し訳ありませんが、ここで終わりにさせていただきます。

 ここまでのご視聴ありがとうございました。」





「赤城さん、由良さん、本当に申し訳ございませんでした。」


「山下さんが悪いとは言わないっすけど、あれを入れたのはほんと気分悪いっすよ。」


「ほんとですよぉ… 思わずヘンなテンションになったじゃないですかぁ~。」


 カメラが止まった瞬間に2人に頭を下げた。

 下げるしかない。


 私の本意ではないけれどこんな質問を投げかけてしまった責任は私にあるのだから。


「さっきも言いましたけどぉ、質問を選んだスタッフはどうするんですぅ?」


「もちろん切ります。 いや!物理的にではなく契約の打ち切りって意味ですからね!?」


 こ… 怖かった…… 由良さんの目が一瞬光ったんだが…


「お! 山下さんお疲れっす~!

 収録どうでした? ハンターと付き合う方法は聞きだしてもらえました?」




 …………だれ?


「えっと… 君は?」


「ほぇ? 俺が質問えらんで回してたんすけど、いい質問だったでしょ?

 ハンターの女ってめっちゃ可愛い子多いから狙ってたんすよ~

 お! この子たちもいいっすね! 俺と今夜どうっすか? 俺以外にもイケメン呼ぶっすよ?」



「「「………は?」」」




 おっと… 3人とも時間が止まってしまいました。

 こいつは何を言っているんだ…?


 まず、私はこの男と面識はない。 そして面識のないこの男がこのスタジオに入るのは少し意味がわからない。


「すみませんが、君はだれですか?」


「あっれー? 俺のこと知らない?

 池田クリエイトの専務やってる池田っすよ。」


 池田クリエイト… たしかに今回の撮影の演出を頼んだ制作会社なんですが、こんなやついましたかね…


「すっ、すみません! 専務! なに勝手なことしてるんですか!」


 あぁ… このひとは宮本さん。

 池田クリエイトの部長で私とも何度も仕事をしていて今回お願いしたのもこの宮本さんがいるからだったんですが…


「みぃ~やもとぉ~ お前なに邪魔してんの?

 お前のせいでこの女たちモノにできなかったら責任とれよ?」


「そんなことはどうでもいいんです! 謝ってください!!」


「はぁ? 俺次の社長よ? その俺にそんな口利いていいわけ?」


 はぁ… 宮本さんも苦労しているんですね…


「宮本さん、もういいです。

 池田クリエイトさんとはこれっきりにさせてください。」


「山下さん!? そこをなんとか!!

 頭を下げさせますから!」


「そういう問題じゃないんですよ。

 こちらのお2人が抑えてくれている間にそいつを連れて消えてください。

 後日連絡はしますが、こちらからするまで控えてください。」


「はい… そちらのお2方、この度は大変申し訳ございませんでした。

ほら! 行きますよ!」


「離せよ! おい!」




「赤城さん、由良さん、申し訳ございません。

 あの会社とは縁を切りますのでまた機会があればお願いしたいのですが…」


 今回の撮影でお2人には、もっと出演をお願いしたくなったのです。

 明るくポジティブな赤城さんと、思慮深く理論的な由良さん。 この2人にこれからもハンターのことを解説してもらって私が聞くというスタイルがいいのではないか。 そう思っているのです…


「あのクソガキが来ねぇんなら考えてもいいすよ。」


「私も、もう1人のおじさんなら許してもいいですよぉ。

 土下座しそうだったし、あの人は筋は通しそうな気がしますぅ。」


 おじさん… 宮本さんのことでしょうか…

 彼は営業から演出、手が足りなければカメラや録音、編集までやりますから… そうですね、いいことを思いつきました。


「宮本さんに今回の件を聞き取りして結果をお伝えします。

 それでお2人が納得できれば今後も出演をお願いできるとおもって大丈夫でしょうか…?」


「それでいいっすよ。

 三上さんからも頼まれましたし、山下さんがいいひとなのはわかってるっすから。」


「私もそれでいいですよぉ~。」




 簡単に後日談ですが、宮本さんはもう池田クリエイトの社長(父)と専務(息子)に愛想が尽きたタイミングだったようで引き抜きに応じてくれました。

 今後は私の下で動画チームの一員として働いてくれることになりました。


 お2人には、宮本さんに聞いた、池田クリエイトの社長と専務のワンマンぶりをお伝えし、宮本さんを引き抜いたと話したら笑っていました。


 今後も必要があれば呼んでくれていいとの返事もいただき、一安心です。



 一般人でも相手を財布としか思っていない、ですか…

 自分で言いましたが少し考えないといけない時期に来ているのかもしれないですね…



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