042 みんなとデート回 2枠




 ゆかりに言われたとおりラウンジに行くと、そこには見覚えのある後ろ姿が。



「悪い、待たせたな。」


「うぅん、ちゃんと聞いてるから大丈夫。 今日はよろしくね。」



 いつもは制服しか見てないから新鮮な印象を受けるな。

 そこにいる女性はチェックのロングスカートに薄手のニットを合わせた大人っぽい姿をした美夏でした。

 こういう服装も似合うんだな。



「今日の服はとても大人っぽくていいね、見違えたよ。」


「ありがと… 美春姉さんに選んでもらったんだけど都ちょっと背伸びしちゃった。」



 はにかむ笑顔にちょっと心を動かされてしまう…

 どうしたんだよ… 俺ってそんなに惚れっぽかったのか…?



「どうしたの? ちょっと顔が赤いよ?」


「なんでもない、それで美夏とはどうしたらいいんだ?」


「えっとね、零司くんって私服とかあんまり持ってなさそうだから一緒に見に行きたいなって思ってるの。 それで時間が余ったら私のも選んでほしいなって… どうかな?」


「お! いいね、デートっぽい! たしかに私服って着る機会があんまりなくていつも似たようなので済ませてるんだよな、スーツとかならいくらかあるんだけどね。」


 服を買いに行く機会ってこれまでなかったな、鎧とかは着ないからハンターとしての戦闘用の服ならあるんだけどな、あと仕事で必要だからって理由でスーツはある。

 いくらハンターとはいえ、商談をするときに戦闘服は不味いということでオーダーしたのが何着もあるんだけど私服はなぁ… 着る機会すらないんだよな…

 ダンジョンに入ってるか会社の仕事をするか学校かの三択だしな、遊びに行くとか考えたこともなかったな、あれ… 俺って枯れてるのか…?




「はい! ここが大学生から新人社会人の男性向けのお店だよ!

 零司くんは大人っぽいからこういう服が似合うと思うんだ! ほら! これなんかどう?」


 そう言って美夏が指さしたのはマネキンに着せてある一式か、ジーンズにTシャツと上にストライプのシャツか。


「これから夏にかけてだから爽やかな感じで揃えたいよね!」


「あぁ… そうだな、これからはお前たちと出歩く機会もあるだろうし恥はかかせられないしな。」


「お客様、なにかお探しでしょうか、よろしければご案内いたしますが。」


「あぁ、いいところに。 これからの時期に着回しができるようにいくつか見繕ってもらいたいんですよ。

 この子と相談してあまり派手になりすぎないようにだけしてもらえればいいんで頼めますか?」


 いいところに店員が来てくれたので任せることにするよ、たぶんこの店は当たりだ。

 ざっと見まわしたけど奇抜なのはないし色使いも悪くない… と思う。 美夏もたぶんほかのやつらと相談してここを選んだんだと思うし、ここの服なら美春さんや小百合と一緒にいても違和感はない程度にはなるだろ。


「お客様はスタイルがおよろしいのでどちらの商品もお似合いになると思いますが、彼女さんのお好みに合わせられるということでよろしいですか?」

「か… かの…!?」


「はい、お姉さんがいくつかこの子に見せて2人がこれだと思うものをいただこうと思います。」


「あら、それは責任重大ですね。 頑張って探してきますね、その前にお客様の寸法をお計りさせていただきます。」




 なぁ… あれからけっこう時間が経ったぞ… なんで決まらないんだよ!?


 俺は暇つぶしで、置いてあるバッグや靴、財布なんかをいくつか選んだんだけど…


「なぁ、そっちはどんな感じだ?」


「あ! 待たせてごめんね! ここまでは絞れたんだけどここからどれを削るかで悩んじゃって…」


 絞った…?

 俺にはズボンが5本にTシャツが12着、シャツも10着ほど見えるんだけど…?


「その… お客様はその… スタイルもよろしくてお顔もはっきりされているのでどれもお似合いになると2人で迷ってしまいまして…」


「サイズは合うものなんですよね?」


「それはもちろんです、ただきっとどれもお似合いですし難しくて…」


「私はこの組み合わせが1番素敵だと思うんだけど、他も捨てがたすぎて…」


「んじゃ、その一式は着ていくことにして、残りはアイテムボックスに入れたらいいよ。 いいですか?」


「はい、着て行かれるのは問題ありませんがこれだけありますとお値段もそれなりに… その…」


「あぁ、カードで払うので問題ないです。 あっちで選んだものと合わせて会計をお願いします。」




「はぁ~… 洋服の大人買いなんて初めて見たよぉ…

 とってもかっこよくなったよ! その… 惚れ直した… よ?」


「ありがと、思ったより安かったしいい店だったからまた来るかな。」


 さすがに、ゆかりとそういうことをして結婚の約束までしてすぐ後なんだ、リアクションに困るよ…


「それより、まだ時間には余裕がありそうだよな? 美夏の服でも見に行くか?」


「う~ん… でも服だと選ぶのに時間が足りなくなっちゃうかも…」


「それじゃあ、そのへんを歩いてみるか、パッと見て気に入る物があればってくらいで。」


「ウィンドウショッピングだね! うん!」




 色々な店を見て回ったのはいいけど、これっていうものはなかなか見つけられないものだね。 服なんかはセンスの問題があるからなんとも言えないけどアクセサリーくらいは気に入るのが見つかると思ったんだけどな… 日ごろ見るアクセサリーはモンスターのドロップアイテムかサブゼロの開発部の試作品なんかだから一般のものでいいのがあると思ったんだけどうちの開発部のデザイナーはセンスもいいのかもしれない。



「そろそろ時間だからさっきのホテルに行こ?」


「……はい?」



 さっきのホテル…?

 さっきのホテルって言えばゆかりと… だよな?

 なんでそこへ…?



「えへへっ ホテルのディナーの予約をしてるの!

 やっぱりオトナのデートってホテルでディナーって感じがしない?」


「あ… そうだな! そういうのもいいよな!」



 ははは… なんか俺だけ汚れた気がするな…




「美味しかったぁ、零司くんといっしょだからかな?」


「それはお店のひとに失礼だよ、でもほんとうに美味かったな。

 さすがに酒は飲まないけど合わせたらもっと美味いんだろうなぁ…」


「それは美春姉さんとか小百合さんと一緒のときにしてね?

 私たちまだBランクになってないし。」



 ハンターはBランク以上になると色々な法的な制限を解除される特例があるからね。

 あ、零司としてはまだCランクだったな。 酒はダメか…



「さっさとBまで上げて好きにできるようにするかな。」


「頑張って! そうしたら私とも… ね?」


「いや、美夏自身もランク上げるんだぞ? 夏の間にBランクが目標な?」


「えー? かなりきつくない?」


「パーティー組んでやるからそこまできつくないよ。 美春さんはBだし安定感あるはずだよ。」



 美夏はDランク、陽菜はFランク、それを引率するのがBランクの美春さん。

 感覚が狂うから俺は計算にしとかないといけないよな。

 氾濫が近くなかったら丙種で大丈夫か、アタッカーが美春さんだけだけど、そこはBランクだしなんとかなるか。



「姉さんにばっかり頼るのも悪い気がするのよ、でも私も陽菜ちゃんもまだ攻撃ってそこまでできないから…

 ってなんでこんな話しになってるの!?

 せっかくのデートなんだからもっとこう… ないの?」


「そうは言われても俺も慣れてないんだよ、今回が初デートなんだぞ?

 今後に期待してくれ。」


「しょうがないなぁ… 私が付き合ってあげるから練習しよ?」


「なぁ… これはトラップか?」


「バレたか…」


「悪いな、さすがに今日はその… な?

 感謝してるよ、美夏とはなんていうか普通のデートができた気がする。

 こういうのをみんな楽しんでるんだな…」


「零司くんは友達と買い物とかしたことなかったの?」


「ないなぁ… 小さい頃からハンターをやってるから学校とダンジョン以外に行くことはなかったよ。

 楽しく遊んだ記憶なんてなかったからこういうのいいなって思うよ。」


「そう… こういうのでいいならいつでも一緒に行こうね!

 今度は陽菜ちゃんとか姉さんたちがいてもいいよね、みんなで楽しい思い出つくろ?」



作者です


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近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。


次回は2023.10.29 12時です。


10月は2日に1回、奇数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。

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