サイドストーリー 三上04 三上くん(たち)は1人ごちる
「はぁ… やっちまったな…」
店員の子には悪いことをしてしまった。
あの子は俺に「やさしく頼りがいのある男」を求めてるような感じはしてるんだけど、俺はそんなんじゃねぇよ。
ガキの頃は地元で暴れまわってたし、ハンターになってからも大差ねぇ。
俺がこうやって仕事中に落ち着いた態度でいられるのも、零司さまに恥をかかせねぇようにするため。
1人でいたらこんなもんだ。
あのときのチンピラ
あれは俺のもしもの姿なんだよ。
もし俺がゼロさまに拾われなかったら、中途半端に治療されてたら、金もなくなって家族も失くしてただろうし実力も落ちてただろう。
そうしたらあんなことして食つなぐしか生きる道は残らねぇ。
今はたしかにサブゼロの運営のほとんど俺が回してる。
でもそれはゼロさまが俺を拾って、救ってくれたことから始まってんだ。
なら全部が零司さまのおかげだろうが!!
それをあのバカ野郎は奪えだ?
株をくれねぇだ?
当たり前だろうが!
俺らは零司さまのために働いてんだ。
ゼロさまに救われて、憧れて、だからサブゼロに入ったんだ。
ゼロさまの横に立ちたい、そう思えないやつはいなくていい。
サブゼロって名前からわかるだろうが!
八つ当たり… だよな…
いい年して情けねぇ。
浩二についてはもうしらん。
あいつが零司さまをあんな風に思ってるなんて気づかなかった。
サブゼロでは情報の流出を警戒し定期的に俺ら社員とその家族を監視していて、その報告書は俺にも上がって来る。 自分の報告書を見るのもへんな話しではあるけど役員は全員分に目は通すから俺自身についても、妻や浩二についても知っている。
よほどのことでない限りはその内容についてはお互い不干渉をしているがなんだかな…
身内があんなのだと恥ずかしいわ…
俺の子は浩二だけだから、あの子のことはどこか娘みたいに思って甘えと言うか
酒のせいもあるけど感情的になったしな…
くっそ… どんな顔して会えばいいんだよ!
Side バーの女性店員
「はぁ… やっちゃったな…」
三上さんに失礼なことを言っちゃった…
私は三上さんにとってただのバーの店員なのに、ご家族とのことに口をはさむのは無作法よね…
でもでも! しかたないわ!
だって、あの人が初めてなんだもの!
私が作ったごはんを美味しそうに食べてくれて、「美味かった」って言ってくれたのは!
我がことながらチョロすぎると思うけど…
30歳くらいにしか見えないし、毎日来てくれてたから独身だと思うじゃない!
毎回私が作ってるって知りながら私の作るまかないを食べてくれるから、ちょっとは脈があるって思うじゃない!
それにどこかあの人に似てるし…
きっと気づいてるよね…
三上さんが来てくれるからまかないは本気で作ってるんだよ?
外食ばかりって言ってたから栄養バランスも考えた家庭料理を意識して勉強だってしてるんだから。
「はぁ… 40歳かぁ…」
思ってたより年上なのよね…
私なんて眼中になかったのかな…
お店に来るそれくらいに人たちってミンナキモチワルイ…
顔と身体しか見てなくて、私の性格とか好みとかに興味なんてないのが見え見え。
でも三上さんは違ったな…
私の趣味の料理のこととか好きなお酒とか、そういうことを聞き出してくれるの。
それって私に興味あるってことよね!?
「あぁぁぁーーー!! もぉ!!!」
もうダメかも…
年の差とかどうでもよくなっちゃう…
それに返せないほどの恩があるって言った時の三上さん…
その時の切なそうな顔…
私が守ってあげたくなったって言ったら失礼かな…?
Side ???
「へぇ… あの三上さんの家族がね…」
三上さんのゼロさんへの忠誠心はサブゼロのみんなにとっては常識。
古参以外はなにがあったのか知らないみたいだけどよほどのことがあったんだろうね。
三上さんは現役時代にはAランクで最強の剣士って言われてたくらい。
その三上さんがあれほどになるってほんとよっぽどのことがあったとしか思えない。
「それなのに家族は…」
息子はCランクのハンターで月に30~50万の収入があるのに母親経由で三上さんのお財布から小遣いをもらってるし。
装備だって三上さんの現役時代のものを持ちだしてる。
そりゃ、完璧には使いこなせなくてもAランク上位の三上さんが使っていたものを使えば、Cランクくらいすぐにいけるでしょ。
妻は…
見たくもないですね。
三上さんのお給料ってサブゼロの中で1番くらいに高い。
でもそれは役職もあるし、持ってる仕事の大きさを考えたら当然…
じゃないよ!
現役のBランクハンターより高いんですよ?
調子のいいときのAランクより少し低いくらいはあるんです。
三上さんの仕事ぶりにはそれだけの価値があるってみんな認めてるから何も言わないけど、そのお金がどうなってるか知ったら…
今月ぶんから家族用の口座から個人用の口座へ変更の申請があったからこれからは大丈夫だと思うけど、あの奥さん… お金のほとんどを自分の個人口座へ流してる。
ゼロさん、零司さん、三上さん… 3人ともお金に
ゼロさんは桁が違いすぎるし、零司さんは使いどころをちゃんと見ているみたい。
三上さんにはお財布をちゃんと握るパートナーが必要じゃないかな!
作者です
次回からは3章に入ります。
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