038 (ST回)なんだよ信者って!!

誤字修正 2023.11.09




「先日から世界中でハンターたちの急病が報告されていますが、取材によると日本でも数人に同様の症状が起きているとのことです。」



「ねぇ美春姉さん、これってどういうことなの?」


「私に聞かれてもニュースやネットでの情報までしかわかんねぇよ。」



 4月から世界各地でハンターにだけ発症する特殊な病気が発見されたってニュースだな。 各国のハンター協会が情報統制をしていて詳しくは俺のところにも入って来ていない。


 取り急ぎ命に関わるってわけじゃないとは聞いてるけどあんまり気分のいい話しじゃないねぇ。



「明日からゴールデンウィークだけどほんとにデートするのか?

 俺はデートなんてしたことないから楽しませるようなエスコートはできないと思うんだが…」


「いいのよ、私たちはあなたと一緒にいられたらそれでいいの。

 それに準備はこっちでしておくから身体1つで来てくれたらいいわ。」


「そうですよ、順番もこちらで調整していますから零司さまは少しでも羽を伸ばして楽しんでいただけばいいのです。」


「そういうことなので、零司さん! よろしくお願いしますね!」


「わかった、楽しみにさせてもらうよ。

 ちなみに学校の様子はどうだった? 俺に絡んでくるやつはいなかったけど、そっちに何かあれば動くつもりなんだけど。」



 俺が実技教師にちょっと教育をした日から数日が経っている。

 俺に直接何かを言ってきたりするやつはいないけど、俺と関わりのあるこいつらに何かあったら…


 実技の授業は担当教師が2人もいきなり辞めたことで自習になっている。 高等部ハンター科の生徒は最低でもFハンターだから普通の体育教師に指導は難しいんだ。

 Fランクでもステータスに目覚めた者たちの身体能力は一般人とは隔絶したものになっているからな。



 ハンター… と言うよりは元ハンターを含めたステータスに目覚めた者たちは一般人から距離を置かれている。 いや、むしろ嫌われていると言った方がいいかな。 一般人にはないスキルを持っていてできることは多いしハンターをやってれば金もある。 Bランク以上になれば特例で色々なことが法的に許されるようになる。 それはもう嫉妬の対象だし、なんなら人類とは違う生物だって思うやつもいるだろう。 人間全体から見れば人数も少ないし、そこをテレビなんかは煽りながら都合の悪いことは報道しないからハンターと一般人の溝は深まるばかりだ。

 それにハンターの中には対モンスター用の薬や毒を一般人に使用をするやつもいる。 何のために使うかはお察しだよ… そんなことしてたら当然嫌われるよな。


 ただ一般人とはいえ教師がハンターの生徒をそういう目で見るっていうとちょっと思うところはあるが…



「私は合同授業とかで美夏ちゃんが付き合ってくれるから助かっています。 これまで付き合ってくれていたお友達は… その… 浩二くんと疎遠になってすぐ零司さんたちと仲良くなったことで距離感を掴めていないみたいで…」


「陽菜ちゃんのお友達の子はいい子だよ。 でも零司くんのことがちょっと怖いみたいだから… 許してあげてね…?」


「許すもなにも、教師にあんなことしたんだから引かれて当たり前だろ。 補習中の事故って扱いで大した問題にならなくて良かったと思ってるだけだよ。」


「はぁ… あの一件の後始末がどれだけ大変だったか… なぁ小百合?」


「そうですね、支部長が大騒ぎだったので引継ぎどころではなくなっていましたよ。 私は資料作成に集中できたのでいいのですが他の職員たちは困っていましたね。」



 あぁ… あの教師は支部長と仲がいいんだっけ、そりゃあ自分の子分として使っていたAランクのハンターが再起不能になったら荒れるわな。

 ただそっちもそろそろ処分なり対応が決まるんじゃないかな。 そうじゃないと国、経済界、外国から圧力がかかりそうだしな。


 日本で取れる魔石は上質で他の国も欲しがってる。 その魔石ってのはやっぱりBランク以上だから学生たちが頑張ったとしても彼らの要求には届かないし、取って来られたとしても数が足りない。


 これは他国のハンターが弱いということじゃなくて日本が異常に甲種や乙種のダンジョンが多いってことに起因している。 日本より人口も面積も大きい国より2倍以上の数ってどうなってんだ?

 他国のAランクと日本のAランクにそこまでの差はないんだけど、それでも日本人ハンターたちが調子に乗るのは止められないらしい。



「それより聞いてよ! 美春姉さんがほんと酷いんだよ!

 私グロ耐性ないのに医学書とか読ませるんだよ! おかげで回復魔法が上がったんだから!! 嬉しいけどつらい!!」


「よかったじゃないか、教え甲斐があるってもんだよ。 美夏は元々それなりに回復魔法のレベルは高かった心配してたが、これからも色々教えてやる。

 外傷の治療と病気の治療が違うから今度は病気についてだな。」


「ひんっ…… 零司くん… ステータス見ていいから私を慰めてよぉ…」


「お… おぅ…」



 俺としても今の美夏のステータスは興味があったけどこういう見せられ方ってどうなんだろ。



名前  井上 美夏

レベル 9→11

ジョブ 神官7→8、魔法士2→4、New魔術師1

スキル 魔法(回復6→9、聖4、水3→6)、New魔術(回復1、水1)、短剣術7、看破

称号  聖女見習い、New魔術師見習い



 おぉ… たしかに上がってるな。 パーティーメンバーとはいえステータスを勝手に見るのはマナー違反だから見ていなかったが、ちゃんと訓練をしていたのがよくわかるな。

 魔術は使いこなすことで属性の縛りを無くすことができるけどそこまでじゃないか、レベルはまだ低いけど十分にCランクでやっていけるくらいにはなってるな。



「頑張ったじゃないか、努力が見えるな。 D、Cランクで魔術が使えるのはかなりのアドバンテージになるからこれからもしっかりな?」


「うん… 頑張る… でもレベルはもう少し上がってほしかったなぁ…」


「それは無理よ、美夏は丙種に入ったって聞いたけど半日とかでしょ? それで2も上がるのは逆に異常なの。

 私たちなんてまる1日乙一種に入ったって上がらないわよ? 3日で1上がればいい方なの。 私たちの効率でこれなんだから普通のハンターはもっとかかるわよ?」


「はい、普通の… と言っていいかわかりませんが、多くのハンターは10回入って1上がればいいくらいと言いますね。」



 そうそう、支部ではよく〇回で上がったって自慢するやつがいるからなんとなくわかるけどだいたい10回くらいが平均かなってイメージはある。 ただ、安全マージンを取りすぎるともっと遅くなるのは当たり前なんだけどね。



「あの… 私のも見てもらっていいですか…? 美夏ちゃんだけ見てもらえるのはずるいです…」


「あ… あぁ… 見せてもらうよ。」



見てもらえてずるいって初めて聞いたけどな!



名前  山下 陽菜

レベル 1

ジョブ New魔術師2

スキル New魔術(火1、水1、風1、土1、氷2、雷2、闇2)、体術2、New魅了無効

称号  New魔術師見習い、New信者



 なんだこれ…

 レベル1なのはわかるけど魔術師がもう2になってるし、魔法をとばして魔術かぁ… それに基本の4属性に上位属性の氷と雷が2ってのがすごい。 たしかに氷があれば魔術で盾ができるけど、雷と闇まで2ってことはデバフや妨害を考えているのか。 ここまで強いレベル1のFランクなんていないぞ。



 それよりさ… なんだよ信者って!!

 魅了無効はこれの影響だと思うけどなんでこんなのついてんだよ…



「あの… どうですか…?」


「あ… あぁ… すごく頑張ったんだな、魔術だけならCランクもいけるくらいだ。 ただ魔法はないし実戦経験もないからまだFランク相当だと思うようにな?」



 はぁ… 数日でこれってやばいぞ… 半年もあればBランクかな… 実績さえ積めればAランクも…

 美夏頑張れよ? 追い越されるぞ。



「すごいわね、これだけ魔術を使えるなら魔術でアタッカーもできるわよ。 でも問題は近接ね、体術があるのはいいけどリハビリが済んだら他の武器も持つようにするといいわ。 体術は本当に追い詰められたときのために取っておくの、手札は多いほどいいし私と美冬、小百合はいろんな武器を使えるから全部教えてあげるわ。」


「ゆかりさん… よろしくお願いします!」


「よし、陽菜はリハビリしつつ魔術の精度を上げる。 私たちはそれぞれの得意を伸ばす。 美夏には私が医療知識をもっと叩き込む。 今後の目標はこんな感じでいいか?」


 さすが美春さん、しっかりまとめてくれて助かるね。


「りょーかい。」


「それじゃあ、今日はここまでにしてみんな明日のデートに備えて早めに寝るぞ。 もちろん零司も寝るんだぞ?

 そんな不思議そうな顔をするな、誰からかは秘密だからこう言うしかないだろ?

 じゃあ解散!」



 あ… うん… やっぱり誰からかは教えてくれないか…

 はぁ… デート用の服なんて持ってないけど普段着でいいのか…?





作者です


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次回は2023.10.21 12時です。


039 となりますのでサンキューな内容となっております。


10月は2日に1回、奇数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。

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