052 久しぶりのダンジョンはどうだった?




作者です

この物語はフィクションです、登場する人物、団体、地域、国家などは架空の存在です。 それをお忘れなくお楽しみください。





「くそが!!!

 どうなっているんだ!! 相手はたったの3人だろうが!

 こっちはSランク5人にAランク25人!

 負けるわけがないだろうが!!」


「我々もそう思っていましたが… 日本のハンターは他よりも1つランクが上と言われているのを実感いたしました…」


「実感したじゃねぇんだよ!

 どうすんだ! 計画が台無しだろうが!!」


「大統領どうか落ち着いてください!

 日本のハンターの評価は順調に下がっています。 このまま煽り続ければ日本から日本人ハンターを排斥し、我が国のハンターを輸出できるようになります。

 そうすれば日本で取れた魔石も我が国のものとして売れますから。」


「お前はいつもそう言うがな、そう簡単にいくのか?

 今回でわかったが本当に実力は向こうが上だぞ?」


「実力などどうでもいいのですよ。

 我々は報道機関を握っているのですから。」





「なぁ… そろそろ部屋割りをどうにかしないか…?」


 鈴が来てからどういうわけか、ゆかり、美春、小百合の3人がローテーションで俺の部屋に泊まりに来る。

 鈴は向こうの部屋の空いてるベッドに寝ているそうだ。


 ここで言う俺の部屋っていうのは俺の寝室。

 要するに同じベッドでってことだ…


 たしかにゆかりとはそういう関係になったけど他の2人とはまだだ。


「そうねぇ… たしかに鈴にも固定のベッドがあるといいわよね。」


「だな、どう分ける?」


「そもそも1部屋が広いので1つは3人部屋にしてもいいのではないですか?」


 そっちで決めてくれるなら俺が口出しをする必要はないか。


「はいはーーい! 私は陽菜ちゃんと同室がいいでーす!」


「そうですね、陽菜の足の具合ももうだいぶいいですし、美夏なら回復魔法を使えるので何かあっても対応できますね。」


 たしかにな、回復魔法を使えるやつがいた方が陽菜にとっては安心か。

 でもこの2人は仲がいいからってのが大きそうだけどな


「なら私と小百合で同室にするか?

 そうすれば部屋で飲めるしな。」


「いいですね、それでいきましょう。

 鈴は私たちの部屋かゆかりたちの部屋のどちらかに入ってもらうということでいいでしょうか?」


「うん、リンはどこでもいいよ。

 リンもお酒飲めるからサユリのとこでもいいし、一緒に組むからユカリたちのとこでもいいよ。」


「ならこっちにいらっしゃい。

 鈴にお酒を飲ませるのはなんとなく気が引けるから。」


「ん、こっちでれーじのこと色々話そ。」


「ありがと、主様のこともっと知りたい。」


「じゃあ、今回の部屋替えは、

 ゆかりと美冬の部屋に鈴が入る、

 私と美夏の部屋は美夏が出て、小百合が入る、

 小百合と陽菜の部屋は小百合が出て、美夏が入る。


 この移動でいいか?」


「「「異議なし!!」」」



 なんか女性陣で決まってしまったけど、これだとローテーションは変わらないのでは…? 誰かが俺のところに来ると部屋に1人になるのが小百合か美春ってことだよな、この2人は大人だから問題ないってことか…?


 これでも健康な男子なんでそろそろ自制心が…



 うちのメンバーでアイテムボックスを使えるのは俺と美春とゆかりと美冬。

 これだけいれば部屋替えなんてあっという間なんだよ。




「それで… だ。 久しぶりのダンジョンはどうだった?

 乙二種だったしサクっといけたんじゃないかな。」


 今日は土曜なのでそれぞれのパーティーに分かれてダンジョンに入ることにしたのはいいんだけどさ。

 4人になったレイヴンは心配ないけどこっちはな…


「ん、余裕。 りんの動きも悪くない。」


「そうね、動きは悪くないんだけどBランク用の試作型の槍だとちょっと合ってない感じがするのよね。 本人としてはどう?」


「正直に言ってこれでも今まで使ってたものと比べるとかなりいいものだよ。

 ただこれでも壊さないか気にしちゃうかな。」


「まぁそうなるよな、一般的なBランクの腕力なら問題ない程度の強度はあるんだけど鈴には少し脆いかもな。

 鈴はなにか使いたい武器の種類とかあるか?」


 今のレイヴンは前衛アタッカーの鈴、中衛魔法剣士の美冬、後衛魔術師のゆかり、遊撃斥候の小百合って編成になっていて盾職がいないな。

 個々人の回避能力は高いし美冬とゆかりの魔術で壁を作れるからこいつらに盾職は基本的には不要。 求められるのは物理攻撃力なんだよな…


「何がいいんでしょう… ずっと槍を使っていたので剣とかに変えるのは難しいかもしれません。」


 槍ベースで攻撃力を上げるか… だとしたら戟(げき)か?

 手持ちには…… ないな…


「ハルバードはいかがでしょう?」


「ハルバードか… うん、あるな。

 どこかの甲種でドラゴン系のボスからドロップしたやつだ。

 これでよかったら使ってみるか? その槍よりだいぶ重いけど丈夫だぞ。」


「主様のお手持ちの… いいのですか…?」


「鈴は何回も言わせてくれるなぁ…

 良くなかったら言ってない。

 今渡すけど、試すのは明日になってから外でな?」


「はいっ!」



 すごい笑顔だな、嬉しいのはわかるけど頼むから振り回すなよ…

 握りと重さの確認をしながら斧部分を見つめる鈴。 あれ…? この目つきは母親を見る陽菜を思い出させるんだけど…


 あれは俺も背筋が…


「あの… これにはなにか付与とかされていますか?

 ただの武器とは少し違う感じがするんですが。」


「ちょっと見せて…

 ん…… ん……? んん…!?」


「どうしたんだ?」


「なによ? 気になるじゃない。」


「あー… 俺がドロップしたときは対ドラゴンに特攻が付いてただけだったはずなんだけど、今は対聖、対光、対ドラゴンの特攻と闇属性、呪属性が付いてる。」


「零司さま… それは甲種のドロップの域を超えているのでは…?」


「そうだね… 正直驚いてる… このスペックはそこらのSランクの主力装備なんてもんじゃないな…」


 こんなの持ってるのはSランクでもトップ層くらいだろうね、特攻3つに属性が2つ。 闇はそれなりにあるけど呪属性なんてそうそう見ることはないぞ…

 呪属性は要するにデバフ、攻撃をすればするほどデバフがかかるんだ。 こんな武器が見つかるなんてなんかのメッセージか…?


「これ… すごいです… ほんとに手に身体に馴染みます…

 あはっ これを使ってリンが主様の敵を全部全部殺してあげますね!」


「あぁ… よろしく頼むよ…」




「次はこっちの反省会な?

 何が良くて、何が悪かったか1人ずつ言ってみようか。」


 こっちは、前衛アタッカーに俺、後衛魔法アタッカーに美春、後衛魔法サブアタッカー兼デバッファーに陽菜、後衛ヒーラーに美夏っていうバランスの悪い編成。


 回復魔法・魔術を使えるのが3人もいるのははっきり言って異常だ。

 他のパーティーにバレたら「1人寄越せ」くらいは言われるな。


「私は初めてのダンジョンで楽しかったです!

 零司さんと美春さんの指示の通りに魔術を使っていただけなのでなんとも言えませんが、今後は自分でいつどこに何の魔術を使うかの判断力を身につけていきたいと思います。」


「そうだな、陽菜は今の段階ではそれでいい。

 ダンジョンに入ってからは徒歩になったけどそこはどうだった?」


「はい! 走ったりはまだできませんが歩くだけならなんとか。

 美春さんに手を借りてばかりで悪いとは思うのですが…」


「気にするな、今月中には美夏程度には動けるようになる。」


「なんで私を比較対象にするの!?」


「わかりました! また魔術のこと教えてくださいね!」


「うむ、私は… そうだな…

 思った以上に勘が鈍っているのを感じたな、乙二種ならなんとかなるがこれが乙一種になるとボスや上位のモンスターには通用しないかもしれない。」


「そうだね、少し判断の遅れが目についたな。

 初めて組んだメンバーっていうことを考慮してもゆかりにかなり劣る。

 選択肢の多彩さはさすがなんだけど多すぎて選ぶのに迷いがあるみたいだ。

 よく使うものを決めてしまうのもありかもしれないね。」


「たしかにそうだ、いくつかのパターンで用意しておこう。

 零司やゆかりが闇を多用するのはそういうことか?」


「うーん… 私はゼロさんに憧れてっていうのもあったけど自分の本質が闇だったんだと思うの。

 極端に言うと邪魔なものを全部塗りつぶしたいって思うからかな。

 美冬も似たようなもんよね?」


「そう、いらないやつはみんな氷漬けにして砕いてバラバラにしたい。」


「俺の話しは昏いからパス。

 美春も自分を見つめてみたら得意が見つかるかもな。」


 この世界の総てを憎んで呪って、それで身に付いたなんて言えないよな。

 待てよ、鈴のハルバードに付いた呪属性って俺のせいか?


「で… 問題は美夏だな…

 今回はいいとこなしだったな?」


「うぅ… 私はヒーラーなんだよ? 怪我とかなかったんだからそんな目で見ないでよ…」


「まだ甘えがあるな。 回復は私や零司だって使えるぞ?

 私たちが他のポジションをしているんだからお前も他にできることを探す努力はした方がいい。」


「そうだけど…」


「あのな? 何のために水の魔術を教えたと思ってるんだ?

 モンスターの気を散らす程度にチクチク攻撃するとか、氷にして足場を悪くするとか、やりようはあるんだ。

 うちだと他のパーティーみたいにヒーラーを優遇はしないからな?

 ヒーラー兼ダメージディーラーなんて目指さなくていい、ダメージディーラーは魔法アタッカーの美春の仕事だ。

 美夏は美夏のできることを探していこうな?」


「うん… もっと水の魔術を練習する…」


 美夏は姉たちがいるからなのか末っ子ぽさが少し出すぎているよな。

 あんまりこのままだとちょっときつい特訓をするか…?




「れーじ、なんでひなまで乙二種に?」


「ん?」


「そうね、最初は丙種から慣らしていくと思ってたわ。」


 2人の疑問ももっともだな。


「俺たちの実力を見せておこうと思っただけだよ。

 これくらいには最低限追いついてほしいって手本として見せておきたかったんだ。 目標が見えると訓練にも張り合いがでるだろ?」


 ただ闇雲にBランクやAランクを目指せって言われてもどうしようもないと思う。 だから俺たちの姿を見せて、「これがBランクだからこのくらいについて来れるように」ってのがわかるようにしたかったんだ。


「美冬さん、ゆかりさん、気持ちは嬉しいんですけど私はこれでいいです。

 零司さんが必要だと思うことをしてくれているんですから。 今回でEランクに昇格できましたし、次からは丙種でレベル上げをしていくことになると思います。

 少しレベルは上がっちゃいましたけどパワーレベリングっていうほどでもありませんし、Bランクではこれくらいのモンスターを相手にするということを知れましたので今回はいい勉強になったと思います。」


「あんたがそう思うならいいわ。 魔術を使いこなすだけで陽菜ならBランクまではいけるからこのまま頑張ってね」


「ありがとうございます、私もダメージを稼げるタイプじゃないと思うので他の方法で貢献できるように頑張っていきますね!」


「ん、模擬戦の時間も作るから頑張ろーね。」




「零司さま、風間さまの件はどうなっていますか?」


「あぁ、それがあったな。

 来週のどこかで、今話しが来ている乙一種でやることになったからそのつもりでいてくれ、風間さんの指導はかなり貴重な経験になると思う。

 参加はレイヴンの4人と美春と俺の6人かな。」


「私もいいのか?」


「あぁ、美春もなにか学びがあると思うよ。

 遊撃魔術師のポジションについては関係なくてもあの人の風魔術は今でも日本屈指だからそっちで学べるといいな。」


「ねぇ… ほんとに私がメインで教わっていいの?

 あの風間さんよ?」


「あぁ、向こうからの指名だしな。

 指導の後に“黄泉平坂”でも見せれば対価には十分だろ。」


 ゆかりのオリジナル魔術、黄泉平坂(よもつひらさか)はかなり大規模な魔術だからこれまで使う機会はなかったけどこういう時にメンバーに見せておくのもお互いのためになるだろう。



作者です


日本でハンターの立場が上がらない理由が…



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近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。


次回は2023.11.18 00:05です。


11月は2日に1回、偶数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。


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