049 みんなとデート回 6枠




「そろそろいい?」


 部屋に入ってきたのは美冬。

次の最後の枠はここまで残っている美冬なのはわかっていたけど迎えに来るのは意外だったな。



「待たせて悪かったな。 陽菜もごめんな、引き留めたみたいになって。」


 他の娘たちには少し申し訳ないんだけど、陽菜が1番先入観なく俺を見てくれている気がする。 ゼロとしての関わりもなく、その話しを身内から聞いたこともない。 ゼロのことを知らずに俺のことを零司としてだけ見てくれていることが少しだけ心地いいんだ…


 6人に優先順位を付けたいとかじゃなくて、陽菜に惹かれているのはこういうところって意味なんだ。


 実は幼馴染でずっと俺のことを想ってくれていたゆかり。

 いつも笑顔で、ムードメーカーとしてみんなを明るくする美夏。

 ストイックに自分を鍛え、俺やみんなといようと頑張る小百合。

 普段はまとめ役をするのに意外と甘えん坊な美春。

 言葉数は多くないけど思いやりは人一倍な美冬。


 こんなやつらに囲まれている俺は幸せ者なんだろうな。

 なんていうか、まだ実感が湧かないんだ。 ずっとソロだったから…



「あたしとは一緒に料理する。 材料はあるよね?」


「あぁ、肉なら各種大量にな、でも野菜なんかはこっちにはないかな。」


「いるときに持ってくるから大丈夫、時間のかかるものと冷たくていい物から作る。」





 なぁ… 美冬さんや…

 昼は洋食だったから中華にするのはわかるんだけどこれは多すぎないか…?



 前菜に

 コカトリスの棒棒鶏、オークナイトの豚しゃぶサラダ、クラーケンの酢の物。


 スープに

 ワイバーン骨の白湯スープ、コカトリスの卵を入れた酸辣湯サンラータン


 主食に

 ミノタウロスの牛脂を使ったガーリックライス。


 麺に

 コカトリスの鶏ガラねぎラーメン、前菜にも使ったコカトリスとオークナイトの肉をトッピングした冷やし中華。


 メインは

 ミノタウロスのステーキ、カルキノスとコカトリスのかに玉、レッサーシーサーペントの白身フライの甘酢かけ、コカトリスのから揚げ。



 それぞれ特盛りで10人前くらいは軽くあるんだけど…


 作ってるときは楽しかったし、美冬の真剣な顔を見られてよかったけどこんなに作ってどうするんだ…?

 いくら美冬が大食いだとしても2人で食べられる量じゃないぞ?




「どうしたの? 難しい顔してる?」


「いや、こんなにたくさん作ってどうするのかって思ってさ。

 2人じゃこんなに食えないだろ?」


「なにを言ってるの? みんなで食べれば大丈夫。」



 え?

 今は美冬とデート… だよな? なのにみんなの晩御飯を作っただけ…?


「なにかヘン?」


「いや、なんていうか思ってたデートっぽくなくてな。」


「そう? あたしは楽しかった、れーじってやっぱり料理するの慣れてるね。

 ずっと一緒に料理したかった、だからデートはこれでいい。

 れーじと一緒に料理するためにずっと練習してたんだよ?」


 そう言ってくれるのは嬉しいけどいいのかな…?

 これくらいならいつでもやるのに。


「美冬が楽しかったんならいいんだけどさ、こんなのでよかったのか?

 俺は美冬の楽しそうな顔を見て満足だったんだけどさ。」


「顔? そんなに変わってないと思うけど、いつも無表情とか言われるし。」


「そんなことないぞ、さっきから楽しそうだったり真剣だったり、どう見ても表情変わってるだろ?」


 美冬の表情はぱっと見ではわかりにくいけど見慣れればよくわかる。

 料理してるときは生き生きしててほんと楽しそうだったな。


「ばか…」


 あ、照れたな。

 ほんとわかりやすい。




「おい、なんでせっかくのデートなのにこんな大量に料理してんだよ。

 美冬もこんなんでよかったのか?」


「お部屋デートした私が言うのもなんですが、これは…」


 だよなぁ…

 俺はずっと美冬を見ていられたから満足感あるけどちょっと悪い気がやっぱりあるんだよな…


「いいの。 ちゃんとれーじのこと独占できてたから満足。」


「美冬はずっと零司と一緒に料理したいって言ってたものね、夢が叶ってよかったわ。」



 ずっとパーティーを組んでるゆかりが言うならそうなんだろう。

 それにしてもコカトリス率高いよな?


「ねぇ、なんでこんなにコカトリス?」


「そうですね、鶏肉は高たんぱくなので好ましいですが確かに多めですね。」


「ん、こないだのダンジョンでコカトリスをたくさん狩ってたから多めに消費。」


 だな。

 怪鳥ダンジョンであれだけ狩ればドロップアイテムもかなり…

 肉も当然ドロップするから正直手持ちとしてはかなり余ってるから助かった。 これだけ使ってもコカトリス2体分くらいにしかならないから肉の採取効率はかなりいい。 いいんだけどこれだけあると消費が追いつかないという…



「冷める前にいただこう、お前もこっちに来て座るといい。」


「あ… はい… ボクもいいのですか?

 ドロップ食材はかなり高額で取引されますからそんなものをいただくわけには…」


「なに言ってるの! 1人だけ仲間外れなんてしないよ!

 みんなで食べるから美味しいんだよ!」


 そういえばこいつもいたんだったな。 こいつに関してはいろいろクリアしないといけない問題があるからどうするかねぇ…


「主様… よろしいのでしょうか…?」


「当たり前だろ? お前はもううちのメンバーだからな。

 ハンターがしたいならどっちかのパーティーに入れるし、したくないなら他の選択肢くらいは用意するよ。」


「ハンターでお願いします… それ以外できませんから…」


「んじゃハンターな、でも今後はほかのことにも挑戦したらいいよ。

 興味のあることはどんどんやりな? 応援するから。」


「あ… ありがとうございます…」


「それでなのですが、彼女はこちらにいただいてもよろしいですか?」


 小百合が主張するなんて珍しいな。


「本人たちがいいなら好きにしていいけどどうして?」


「はい、彼女は他国のSランクだったことからこちらでもAランクで十分通用すると思います。 それに私たちには純粋な前衛がおりませんのでそこを補強できればと思いまして。」


「ん、本人があたしたちでいいならいいよ。」


「私も小百合と同意見だわ。 美冬でも十分通用するけど今後を考えると本職の前衛には入ってほしいわ。」


 たしかに斥候職の小百合、魔法職のゆかり、前衛もできるけど本来は中衛の魔法剣士職の美冬。 そりゃ前衛が足りてないわ。


「お前はどうしたい? 好きな方でいいぞ。」


 ハンターは自由であるべき。

 自分がどのパーティーに入るかなんて自由に決めるべき大事なところだよ。


「ボクは… ボクは主様と一緒にいたいです…

 でも、サユリが色々教えてくれるって言いました。

 こっちでのことをサユリたちに習ってから主様の方へ行きたいってわがままを言っても… 主様は許してくれますか…?」


「俺はいいよ。 パーティーを分けてるのも実力差があるからだしな、こっちが追いついてきたらメンバー交換や合流も考えてるからしっかり教わるといい。

 動きの確認なんかは明日以降にな? こんな時間からやるのは近所迷惑だ。」




作者です


料理についてはそんなもんかって流していただけると助かります。

モンスターからドロップものは基本的に食えます。

そして高級食材です。


これだけ惜しげもなく使うと飲食店での価格はいくらになるやら…

さらにそれをAランク、Sランクの有名ハンターが調理しているのです。

スープ1杯でも売りにだすとどれほどの値段がつくかなんて考えたくありませんね。


ハロウィンショートよりも先にこっちが書きあがっていたのですが、時系列的にもこっちが先…


ショートに関しては時系列による整合性などは気にしない方向でお願いします。

登場人物は公開時期で調整していますが…



レビュー(⭐)、応援(♥)、コメント

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近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。


次回は2023.11.12 00:05です。


11月は2日に1回、偶数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。

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