044 みんなとデート回 3枠




 俺に彼女を飛ばして嫁ができた翌日、今日はだれから始まるのか…

 やっぱり直前まで教えてくれないらしい。



「さて、2日めだ。 心の準備はもうできてるよな?」


「はぁ… 美春さん、誰と会うかわかんないのに心の準備も何もないでしょう?」


「えー? そういうもの?」


「美夏ちゃんだって福袋を開けるときってドキドキしたりしない?」


「確かに。」


 おい! ひとのデートを福袋扱いすんな!

 一理あるって俺も思ったけども!


「ありがとな陽菜、おかげで肩の力が抜けたよ。」


「それは良かったです。」


 この感じだと陽菜は違うっぽいな。




「零司さま、今日の午前は私にお付き合いをお願いします。」


「ん? 小百合が1人めなんだね、わかった。 準備なんかはどうしたらいい?」


「はい、戦闘服をご着用の上、屋上にお願いします。」


「はい…?」




 うちの社宅マンションの屋上はそれなりに頑丈に作ってあるからこの間は魔術の指導もしたんだけど戦闘服でっていうとどういうことだろう?


 俺は、というかうちのメンバーはみんな他のハンターたちと違い、鎧のようなものか着ずにハンターの戦闘に耐えられるように特別に作った服を着ることにしている。

 俺がサブゼロの開発部に言って作らせたのが始まりで、ゆかりと美冬にはゼロとして知り合った頃から戦闘服のテスター兼広告塔として使ってもらっている。


 ほかのメンバーもそれを聞いたのか全員ぶん用意することになったらしい。

 ゆかりは開発部の担当者と直接やりとりをしているから俺は詳しくは知らない。

 費用がかかる場合は俺に請求するように言ってあるから問題はないはず…



 俺の戦闘服はダークグレーのスーツに黒いシャツ、白いネクタイというダンジョンには似つかわしくないものになっている。

 スーツの縁取りやボタンには銀を入れることで引き締まるんだそうだ…

 ゼロ用と俺用に同じデザインでサイズ違いを用意するとかこれもうバレてるんじゃないだろうか…

 はい、開発部のデザイン担当は女性です…


「お待たせしてすみません、今日はよろしくお願いします。」


 小百合の戦闘服はなんていえばいいんだろう…

 俺のものを女性用にリデザインしたような?

 自分が着ているのを見るとなんとも思わないけど小百合のを見たら…


「いい! すごくいいよ!

 小百合の清楚さを残しつつ活動を妨げないデザインだし、なにより俺と合わせているのが嬉しいな。

 素材も俺のと同じなのか?」


「あ… そんな… 照れてしまいます…

 そうです! 零司さまと離れて活動しているときにも零司さまを側に感じていられるようにとお願いしてしまいました。

 素材は零司さまがお召しのものより1つ先のものを試作として使用していると聞いています。 耐久テストも兼ねて私が着ることになりました。」


 そっか、小百合の防御のためにはいいことだね。

 俺の時は思わなかったけど… いい仕事をしてくれたな!



「それで… ですね、私は模擬戦をしていただきたいと思っています。

 魔法などは使わずに純粋に戦士としてお相手をお願いします。」


 なるほど… 魔術を使えるメンバーが多いから物理アタッカーとしての技量を上げたいってことかな、こうやって自分で考えて上を目指してくれるのは嬉しい。


「わかった、~~~~“防壁” これで建物への被害はある程度防げるはずだ。 ここからは剣士として相手をさせてもらうよ。」


「お気遣い感謝します。 では… 参りますっ!」



 おっと!?

 5メートルは離れていたのに一瞬で距離を詰めての突き。 なんてスピードだよ、瞬発力は斥候職よりも剣士職の方が早かったりするものなんだけどそこらのAランク剣士なんか比較にならない瞬発力だ。 これは美冬よりも早いか…?


 小百合の短剣での突きに刀を合わせて横に受け流す。 回り込んで距離を取り、仕切り直そうと思ったんだけど織り込み済みか!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺の受け流しで体勢が崩れたのにそのまましゃがみこんで下段に斬撃、一歩下がって回避したけどそのままラッシュだと!?


 突き、斬撃、突き、突き、斬撃から後ろに回り込むと見せかけてその場でターンして胸を狙った突き!


 いいねぇ…! でも見えてる攻撃は躱せるし流せるんだけどね!


 最後の突きに合わせて短剣を払い落とそうとしたんだけど!?


 腕を伸ばしきらずに引いた!?


 フェイントか!


 どう来る?


 な!?


 引いてもう1つ突きが来るかと身構えたら首を狙った斬撃か!!


 腕を引き切らずに身体を入れて振りに来た!


 ……あ、やばい、



 とっさに回し蹴りが出ちまった…

 あばらを砕く感触が…





 Side 小百合




「お待たせしてすみません、今日はよろしくお願いします。」


 私は今回のデートでは遊びに行くのではなく、別の方法で零司さまとの距離を近づけようと思っています。


 これもその一環ですが、零司さまがお召しになっている戦闘服をリデザインして、私のための戦闘服を用意していただきました。


「いい! すごくいいよ!

 小百合の清楚さを残しつつ活動を妨げないデザインだし、なにより俺と合わせているのが嬉しいな。

 素材も俺のと同じなのか?」


「あ… そんな… 照れてしまいます…

 そうです! 零司さまと離れて活動しているときにも零司さまを側に感じていられるようにとお願いしてしまいました。

 素材は零司さまがお召しのものより1つ先のものを試作として使用していると聞いています。 耐久テストも兼ねて私が着ることになりました。」


 喜んでいただけました!

 零司さまのものと合わせたデザインなんて少し申し訳ないとも思っていましたが、こうして喜んでいただけたのでしたらお願いした甲斐がありましたね。


 この素材は斥候職の私のために魔力を込めることで周囲と同化して隠れやすくなる加工が施されています。 違いはそれだけなので性能としては零司さまのものと同じです。


「それで… ですね、私は模擬戦をしていただきたいと思っています。

 魔法などは使わずに純粋に戦士としてお相手をお願いします。」


 魔術を使われると勝ち目どころかいいところなしで終わってしまいますからね、この条件なら少しは善戦できると思います!


「わかった、~~~~“防壁” これで建物への被害はある程度防げるはずだ。 ここからは剣士として相手をさせてもらうよ。」


「お気遣い感謝します。 では… 参りますっ!」



 5メートル程度の距離はありますがこのくらいでしたら一瞬で詰められます!

 最初は突き!

 瞬発力には自信がありましたが、受け流されてしまいました。


 この程度では当たってもらえませんか。


  回り込んで距離なんて取らせません!

 ここで距離を取られたらこの流れを切られてしまいます!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 体勢は崩れましたがしゃがんで下段に斬撃!

 下がって回避されましたがこのまま一気に押し込みます!


 突き、斬撃、突き、突き、斬撃。

 うそですよね… 私のスピードで掠りもしないなんて…

でもまだ! 後ろに回り込むフェイントを入れつつその場でターンして、狙いは胸への突き!


 これもダメでしたか、なら腕を伸ばしきらずに首を!


 あ…


 首を狙った斬撃まで躱されてしまってはもう…



 私が次の手を考える一瞬、吹き飛ばされたのはわかりましたが何をされた…?


 メキッ


 音が遅れて聞こえるなんてどういう反射神経なんですか…


 地面に落ちる寸前に見えた零司さまが脚を上げていたので蹴られたのはわかりましたが、これは… 肋骨をもっていかれましたね…





 Side 零司




「お、おーい… 大丈夫か…?」


「は… はい… ちょっと起き上がれそうにありませんが…」


「すぐ回復するから少し待っててくれ。」



 回復魔術で肋骨と全身の傷を一気に治したけどやりすぎたなぁ… ここまでやるつもりはなかったんだけどとっさに身体が動いたんだ、小百合には申し訳ないことをしたな…


「治療をありがとうございます… あの、私はどうでしたか? 少しは手こずっていただけましたか…?」


「そうだな… 最後の蹴りは割りと本気だった。 強かったよ、手加減する余裕がなかったからやりすぎた。

 ほんと強くなったね、ここまでとは思わなかった。」


 首を取りに来たのは予想外だったな。

 それくらい真剣に向かってきてくれたのは嬉しくもある。



「よかった… ずっと自信がなかったんです…

 零司さまのおかげでAランクにはなれましたが実力が見合うとは思えなくて… 

 本当のAランクに少しでも近づきたくて、2人に置いて行かれたくなくて、零司さまと一緒にいたくて……」


「なんだよ、そんなことか。

 出会ったときにはもう十分Aランクにふさわしい実力はあったと思うよ。

 だから推薦したわけだしな、それにさっきの一戦はすごかったよ。

 Aランクの前衛の中でも中位くらいならあれだけやれるのはそうはいない。

 十分戦力になってるよ、それに実力が足りないってことはないし気になるなら鍛えるから心配しないでいいよ、あいつらなんて知り合ったときは普通にCランクだぞ?」


「それはそうですけど…」


「戦力なんて後からでいいんだ、信頼できるかどうかの方がよっぽど重要だし俺は小百合のことを信頼してるよ。 だから一緒にいてほしい。

 それに今回の模擬戦で小百合のことをもっと知ることができたと思うよ。」


「本当ですか…?」


「うん?」


「私のことを知ってくださったというのは本当…?」


 何を言っているんだ?


「当たり前だろ、動きとか視線の癖とか攻め方で性格出るからね。 話すよりよっぽどわかるよ。」


「あぁ… ありがとうございます! その… 私のことをもっと知ってもらえますか…?」


「もちろん、これからもよろしくな!」




 それからもう3戦して小百合の集中力が切れて来たので終了。


 動けなさそうだったから残ってたご飯でさくっとチャーハンを作って2人で食べたんだけど、想像以上に喜ばれて逆にこんなので申し訳なかったな。


 んで、次はだれだ…?




作者です


レビュー(⭐)、応援(♥)、コメント

何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!


近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。


次回は2023.11.02 12時です。


11月は2日に1回、偶数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る