記念ショート04 ハロウィン




「れ、い、じ、く~ん! 今日が何の日かわかるかなぁ?」




 ほんとにさぁ…


 どうなってんの?


 日本にはなかったよな!?


 流行ってるのはここ数年じゃない?


 でもやるからには頑張るか…


 お菓子って苦手なんだけどな…




「……で? あたしに相談ってなに?」


「近々ハロウィンってあるだろ?

 きっと美夏なんかはノリノリでなにかやって来そうでさ。


 流すのも悪いし何か準備しようと思ってるんだ。

 で、どうせなら作ろうかと思って…」


「ん、絶対言う。

 れーじはなにか作りたいものは決まってる?」



 こういうときはうちの台所の主、美冬に相談するに限る!

 助けて! みふゆえ…(自重)



「とりあえずカボチャを使った何かでいいんだよな?

 あんまりイメージわかないけど。」


「だね、初心者でも作れそうなのだと…

 クッキーかパウンドケーキかな。

 できそ?」


「ケーキって自分で作れるのか!?」


「…そこから?」




 あれから1週間…


 ひたすら焼いて、焼いて、焼いた…


 もうしばらく焼き菓子は見たくない…


 アイテムボックスに入れて保管かな…



「ん、これなら大丈夫。

 ちゃんと焼けてるし焦げてない。」


「はぁーー…… やっとかぁ…

 ありがとうな、美冬はほんと頼りになるよ。」


「…うっさい///」


 でも悪いよな。

 1人にだけこれだけ手間をかけてみんなにも秘密にさせてるし。


「こんどちゃんとお礼はするからな。」


「いい、これ1本食べるから。」


「ん!? これ全部か!?」


「ん、よゆー。」



 おいおい… マジか…

 さすがに生焼けは焼き直したし、焦げたのはその部分は外してたけど、俺の試作品をほとんど食ってくれてたぞ…


 それでもまだ食ってくれるなんて…


 これはお礼は本気出さないとな。





 …で、冒頭に戻るわけだ。


「トリックオアトリート!! さぁ! お菓子ちょうだい!」


「ちょっと美夏ちゃん!

 そんな手をわきわきしてなんか見ててこわいよ!」



 あぁ、俺も陽菜と同じ気持ちだよ…



「お、来たな。

 今日は零司が1品作るって聞いてるからこっちでは控え目にしといたぞ。」



 なぁ… 美春さんや…


 でかい鍋になみなみとあるシチューにてんこ盛りのサラダ、たぶん白身魚のフライがこれもどっさりにバケットは10本くらい見えてるんだけど…?


 これで控え目とは…



「ほら、冷める前にいただきますよ。

 美夏も席に着きなさい。」


 小百合が止めてくれて助かった…


 このままだとデザート前に出すことになりそうだったからな。


「それで零司は何を作ったんだ?

 アイテムボックスに入ってるんだと思うが出してくれると助かるんだが?」


 はは、美春さんや、そんなに急かさなくてもちゃんとできていますよ。




 俺はこの日のために時間があればとあるダンジョンに入っていた。


 そこは猛牛ダンジョン。


 せっせとミノタウロスから肉のドロップを狙ったわけだ。


 でもな…


 物欲センサーって実在してるみたいで、狙いの部位がぜんぜんドロップしなくて困った…


 ミノ、ハツ、タン、レバーにテール…


 いつもなら嬉しいレアな部位がドロップしたけどほしいのはそこじゃないんだ…


 もう乱獲っていうほど狩りまくってなんとかドロップしたのがヒレ…


 いや、そこも美味いけど違うのよ……


 試作の合間にひたすら狩りをして昨日なんとかドロップ!


 念願のロース! 塊で3本!!


 ロースは他の部位のドロップと違ってかなりでかい塊でドロップするから嬉しい!


 そうじゃなくて、今回はここから贅沢にサーロインだけを切り出してローストビーフにする。



 肩ロースとリブロースは後日美味しくいただこう。


 火加減は魔術で完璧。


 俺より火加減の調整が上手いやつなんてなかなかいないぞ!




「俺が用意したのはこれ、ミノタウロスのローストビーフだよ。

 温かいのと冷たいのがあるからあとは任せるね。」


「おぉ! これはすごいな!

 ってどっちも5キロくらいあるぞ!?」


「大丈夫、これくらいよゆー。」


「…たしかに美冬ならいけそうだな。」




「う~~~んっ! このレア加減さいっこう!

 零司! このローストビーフ最高よ!」


「ほんと! 美味しい!

 あ! 美冬姉さん! 取りすぎ!!」


「早い者勝ち。」


「ふふ、美冬も美夏もそんなに焦らなくてもこんなにあるんですよ?」


「小百合さん… もう半分くらいなくなってます…」


「あ! こら!

 美夏! 私の皿のを取るな!」


「うふふ… ほんとに美味しいわ…

 零司って魔術を使って最高の焼き加減に仕上げてくれるのよね。」



 みんな喜んでくれたみたいだ。

 鍋いっぱいのシチューも、ハロウィンを意識したのかジャガイモじゃなくてカボチャが入ってるしこの時期には最高だな。




「ふっふっふ~!

 ではもういちど! トリックオアトリート!」



 まったく… このちょっと困るくらいの明るさが美夏のいいところ。



「用意してあるよ。

 小百合、紅茶を頼むよ。」


「わかりました、洋菓子ですか?」


「あぁ、それはこっちでやっておくよ。」




「わぁ~!

 パウンドケーキにクッキー!?

 すごい!!」


「お前、菓子も作れたのか?」


「くっ… もっと女子力を磨かないと…」


「いいじゃない、カボチャが入ってるの?」



「れーじはみんなに喜んでもらおうとがんばった。

 だから残さず食べるのがお礼。」


「そうですね、紅茶の準備もできました。

 みんなでいただきましょう。」




 こうして、今年のハロウィンは無事に終了。


 楽しんでもらえたみたいでよかったよ。


 あ、もちろん美冬には特別にお礼を用意してある。


 気づいているかな?


 ドロップしたロースは3本だったことに…





「どーしたの?

 あたしだけに用事って。」


「その… な。

 お礼をするって言っただろ?」


「言ってた。

 でもだいじょーぶ、しっかり食べたし。」


「あれはみんなで食べたもんだろ?


 美冬へのお礼にはならないよ。


 時間停止のアイテムボックスはもう覚えたんだよな?」


「ん?

 覚えてるけどどーしたの?」


「んじゃ、これ。」


「!?!?!??!?!?!?!!」


 さすがの美冬もこれには驚いたか。


 何軒ものパン屋を駆け回って用意したのは


 200本のフランスパン。




 を使って作ったローストビーフサンド。


 それでも余ったから肉巻きおにぎりをどっさり。



「これって…?」


「練習に付き合ってくれたお礼。

 全部美冬のだから好きに食ってくれ。」


「ありがと…

 嬉しい…///」




 美冬は少し照れながら微笑んでくれた。


 この顔が見られただけで、1週間ダンジョンにこもった甲斐があったな。





作者です。


今回は1万PV記念としてハロウィンで書かせていただきました。


時系列は気にしちゃダメです。


本編ではまだゴールデンウィーク…


美夏のお話しだと思いました?


残念、美冬のお話しでした!



なんとか間に合いました…


リアルと本編作中の季節感は合いませんが、


深く考えずお楽しみいただければ幸いです。


トリックオアトリート!

☆と♥くれなきゃいたずらしますよ!




なんてね。


それでは、本日更新予定の本編もよろしくお願いします。

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