035 余談(BSS要素あり?)




作者です

時系列的には028の日になります。

その日の出来事や零司たちをクラスメイトの目から見たら、というものになります。

妄想強め、同級生視点、BSS要素があるかもしれません。

読まなくても本筋には問題ありません。




 僕は自他ともに認める陰キャです、ただの陰キャではなく影も薄いのでクラスでは浮くこともないですが認知もされているか怪しいレベルです。

 そんな僕にも挨拶をしてくれるクラスメイトがいます。 井上美夏さんです。


 彼女は進学すぐのころは中等部から仲の良かった2人とずっと一緒にいたので、なんというか… 量産型クラスメイトって印象でした。


 それがある日、その2人と仲違いしてしまいました。

 理由はこれも同じクラスの工藤くん。

 彼はお父さんがAランクハンターということでいつも偉そうです。

 ハンター科ってところは何よりハンターとしての実力とランクが重視されますので、他とは違ってスクールカーストの上位にはガキ大将のまんま大きくなったような工藤くんが入るのです。

 工藤くんは弱くはありませんがそこまで飛び抜けて強くもないので、カースト上位なのはやっぱり父親の七光りってやつですね。


 その工藤くんが井上さんたち3人を自分のパーティーに取り込もうとしたけど、井上さんだけは入らなくて、井上さんは元のパーティーも離脱。

 他の人と組むことになるなら僕にもワンチャンあるかもしれません!




 あの離脱事件から井上さんは明るくなりました。 もしかしたら2人に遠慮して抑えていたのかもしれません。 それが開放された井上さんは明るくて可愛くて、僕みたいな陰キャにも声をかけてくれる…

 彼女は天使のような人です!


 ただ、井上さんは最近ずっと神薙くんと一緒に行動しています。 なんでなんでしょうね。

 僕は離脱事件の日は風邪で休んでいたんでわからないんですが、なぜかクラスのみんなが神薙くんを避けているような感じがします。

 ついこの間までは「偽物」ってみんな陰口を言っていたのにこのクラスでは誰も言わなくなっています。




 うちのクラスの(僕の中での)天使は井上さんですが、うちの学校にはアイドルが2人います。

 3年の平坂ゆかり先輩と井上美冬先輩です。

 井上先輩はお察しの通り井上さんのお姉さんです。

 なぜこの2人がアイドルなのかというと、高等部3年なのにもうAランクハンターだからです。

 僕達ハンター科の生徒にとってハンターランクは重要と言いましたけど、学生でAランクって言えばその時点で勝ち組です。

 カーストの外というか殿堂入りみたいなものです。

 当然、生徒からの人気はとんでもなくて、パーティーに誘われたり、デートに誘われたりなんてのは日常みたいです。

 僕みたいなEランクから見れば手の届かない高嶺の花どころか、異世界の存在って感じです。

 人気があるのはランクが高いだけじゃなくてすんごい美人だからっていうのもあります。

 平坂先輩はスタイルの良さと、芯の強そうなきりっとした目が印象的で、同世代の女優なんて霞んでしまいます。

 井上先輩は… すごく大きくて… その… みんなお世話になっていると思います。 大きいことを売りにしているグラドルと変わらないサイズなのに形もきれいだし… いつもありがとうございます!


 この2人は井上さんのところによく遊びに来るんですが、そこにはなぜか神薙くんもいるんです。 どうなっているんですか! 独り占めは良くないと思います。


 工藤くんもクラスの女の子を側にいさせて、よく触ったりなんかしていますがそこはカースト上位だし、スキンシップってことで歯ぎしりくらいで許せるんですが、神薙くんはなんなんですか!

 僕の天使の井上さんと、学園のアイドルの平坂先輩と井上先輩の3人をはべらせて…

 こんなの耐えられるわけがありません! 触ったりしているかって? そんなことはしていませんが囲まれているだけで歯ぎしりどころではないんです!

 クラスのみんなもおかしいです! なんで神薙くんに抗議しないんですか! なんで工藤くんは奪いに行かないんですか!

 工藤くんは進学してからの1ヶ月くらいの間に3人は彼氏持ちの女の子を奪ったって聞いてます! なんで神薙くんからは奪わないんですか! 不公平じゃないですか!


 僕が進学してすぐに一目惚れした子も工藤くんが取っていきました…

 世の中には奪う男と奪われる男がいるんです。 工藤くんは奪う側で僕は奪われる側です… 神薙くんも実技の成績はそんなに良くは、はっきりいうと悪いです。

 なら神薙くんも奪われる側のはずです!




 あっ………




 目を開けたらさっきまでいた教室ではありません。 ここはどこでしょう…?


 寝かされているベッドには周りにカーテンがあるのでどこかの病院か保健室でしょうか?


 時計を見たらもう午後になってます。

 3時間ほど意識がなかったってことみたいです。 前にもこういうことがあったのでネットで調べたんですが、過度なストレスがかかると気絶する病気というのがあるらしくて、僕はそれのようです。 今回は神薙くんのせいですね。


 不意にカーテンが開けられ、そこには女神がいました。

 なにを言っているのかわからない? 僕もわかってませんが、その人は女神としか言いようのない美しいひとです。

 すらっと背が高く、脚も長い、白衣を押し上げる胸は井上先輩とおなじくらいある…?

 平坂先輩は同世代の女優と比較と言いましたが、この人は同じ時代の女優と比べてもトップクラスの、正直見たことのないレベルの美人です。

 

 そして僕に軽く微笑んで、


「目が覚めたか? ここは保健室だ、なにか不調はあるか?」


 あぁ… 本当に女神です…

 僕に微笑んで、僕に優しい言葉をかけてくれる… この人は僕に惚れていると言っても過言ではないですね!


「あっ… あの… 僕は…」


「あぁ、美夏のクラスの子だろ? いきなり倒れてここに運ばれたんだ。 今日の授業もあと少しだし終わる頃まで休んでおくといい。」


 なんてことでしょう!

 女神は僕を気遣って、一緒にいようと!?

 これはもう逆プロポーズなのでは!?



「失礼します、美春さん少しお話しいいでしょうか?」



 僕と女神の甘い時間を邪魔したのは実技の教師をしている吉田先生です。

 良く言えばワイルドな先生は現役のAランクハンターです。

 実技の教師の中では最高ランクですし、ハンター協会の支部長ともいい関係らしくそのことをちょいちょい自慢する感じの悪い先生です。

 イケメンはイケメンなのですが、性格の悪さが目つきや口元に出てるのでコネがほしい女子生徒以外は近づかないようにしています。



「仕事と関係ある話しなら伺いますが? それから、下の名前で呼ばないでください。 不愉快です。」


「まぁまぁ、そう固いこと言わないでくださいよ〜 美春さんだって付き合うなら強くてイケメンがいいでしょ?

 ここにAランクって強さを認められてるイケメンな俺がいるってことはもう俺と付き合うしかないってことですよ。」



 こいつはなにを言ってるんだ?

 強ければなにをしても、何を言ってもいいのか? そんなことがあっていいはずがない!




「入りますよ~ お姉ちゃん今週もお疲れ様~ って吉田先生?」


 あ… 無謀にも飛び出そうとしたところに入ってきたのは井上さんでした。

 ほんと天使… あれ? お姉ちゃん?


「あ? 井上と偽物か… それじゃ、美春さん、今夜はよろしくお願いしますね。」


 ちっ… 神薙くんもいたのか… このひとはほんといつもいつもいつもいつも井上さんにつきまとって…


「何度も言っていますがお断りします。 あなたと個人的にお付き合いするつもりもありませんし、食事に行くつもりもありません。」


 ですよね!

 女神は本当に女神だった…

 女神は選ばれた存在しか触れてはいけない!

 選ばれたのは僕だ!


「またまた~ いいんですか? 妹さんの評価が下がっちゃうかもしれませんよ?」


 え…… このひとは本当に教師なんだろうか?


「よしだせんせい? それって脅迫なんじゃないですかぁ?」


 神薙くん! 言い方はバカっぽいけどそのとおり! このことを広めれば吉田先生の立場も!

 あ…… 支部長と仲のいいAランクハンターに文句を言える人なんていない…


「偽物よぉ… オトナの話しに首を突っ込むんじゃねぇよ。 俺は美春さんとオトナ同士で仲良くしたいだけなわけよ。 わかる? お前みてぇなガキに用はねぇからさっさと帰れ。 あ、妹ちゃんも俺らとオトナの関係とかどーよ?」


 うそ… だろ…… 吉田先生は僕の女神と天使を手篭めに……?

 Aランクの吉田先生には逆らえない… 2人とも目をつけられた時点で終わってる…



「いい加減にしろ!!」


 机を叩いたのは女神でした。

 この流れからすると井上さんのお姉さんなんですね、妹まで毒牙にかかるとなれば怒るのも当たり前です。


「1回目なら言い間違いだと言って見逃した。 でも2回目は許さん! 何が偽物だ! お前は零司の何を知っている! こいつがそんな言われ方をする理由なんてどこにもない!」


 あれ……? 怒るポイントが…

 妹(仮)の井上さんのことじゃなくて「偽物」ってことは神薙くんのこと…?


「おいおい、なに熱くなってんの? オトナらしくたのしくヤろうって言ってるだけじゃん? それにれいじ? だれそれ?」


 あ、はい。 僕もそう思います。

 雰囲気的に「れいじ」っていうのは神薙くんの下の名前でしょうか、なんで下の名前で…?

 それより吉田先生とたのしくヤるなら混ぜてほし… いえ、こういうことはちゃんしてからじゃないと!


「吉田先生、私は先生とどうこうなることはありません。 私は零司くんを支えるって決めてるんで。」


 井上さん!?

 井上さんまで神薙くんを下の名前で!?

 それも支えるって!?

 あ… あ… 足元が崩れていく感じがします…


「支える? んじゃお前がお礼してくれたら俺がハンターの手ほどきしてやっから。 それが支えるってことになんじゃん?」


 彼氏のために上のハンターのところへ奉仕に行くって話しは都市伝説じゃないんですよね…

 先輩から現実だと聞いたことがあるのですがまさか目の前で起こるとは思いませんでした。

 先輩は、「もしお前に彼女ができても渡すなよ? 帰って来れたとしてももうマトモじゃなくされてるから。」とも言っていました。

 ハンターはモンスターに使うために毒や薬を使うことがあります。 それを人間に使っていたとしたら…

 壊れたから帰されるというか返されるってことなんでしょう…


「結構です! 自分たちで何とかします!」


「そう言うなよぉ~ 俺Aランクよ? 力づくでもいいのをこうやって交渉してるんよ? このやさしさに感謝してほしいんだけど? それにあの学生ハンターも同じだろ? 実力があるから交渉できんだよ。」


「違う。 あの人はみんなのために戦ってる。 あの人があそこで受け入れたら他のハンターもみんな同じ条件を受け入れることになるから。

 自分が悪者になって日本のハンターを守ったんだよ。 あんたみたいに自分の欲望だけで動くようなひとと一緒にするな!!」


 吉田先生のお誘いを井上さんが断ったまではわかりますが、なんで例えにだされたあの音声ファイルの学生ハンターのことで井上さんが熱くなっているんでしょう…?

 それにこの言い方だと知り合いみたいですし…

 そっか… あの学生ハンターは井上さんの彼氏なんだ… だからこんな風に熱くなったりするんだ…

 あれ? でもこの流れだと学生ハンターって…

 いやいやいや! そんなわけない!

 僕の天使が偽物なんかとなんてありえない!


「なぁ、あんた実技担当なんだよな?」


「あぁん? ガキが! 先生には敬語くらい使えや!」


「ボロが出てんぞ? ザコがバレたからって粋がんなよ。」


「てめぇ… 表でろや!!」




 あは… あははは… あはははははは…

 吉田先生を煽って実技の補習って名目で戦うことにして……


 Aランクを再起不能レベルにボロボロにするなんて…


 神薙くんって何者なんだよ…


 天使、女神はもちろん、アイドルの2人に、この戦いを見ていた女性はみんなメスの顔をしています…

 なんだよ… 井上さんも、保健室の女神も、アイドルの2人も…

 結局は強い男がいいんじゃないか…

 これまで誰が告白しても玉砕してたのはただハードルが高かっただけで中身は工藤くんに尻尾を振る女と同じじゃないか!


 こんなことってないよ!



 強くなってやる…

 強くなって、天使より女神よりいい女を僕の物にしてやるんだ!!




作者です

ヒロインに勝手に惚れて、勝手に失恋したクラスメイト視点でした。

念の為BSS注意をしておきましたが大丈夫でしたか?


名無しくんの一目惚れの相手って誰だったんでしょうね。


思ったより長くなってしまいました…



レビュー(⭐)、応援(♥)、コメント

何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!


近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。


次回は2023.10.15 12時です。


10月は2日に1回、奇数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。

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