032 女子会




作者です

ただでさえ会話文の多い作品ですが、今回は会話文のみで構成させていただきます。

誰の発言か全部わかる方がいらっしゃれば嬉しい限りです。




「あ、お父さん? さっきメールしたけど今日は零司さんのところに泊まらせてもらうことになったから。 え? 2人とかじゃなくて、零司さんのパーティーのみんなと一緒!

 場所は今度引っ越すあのマンションだよ。 零司さんの隣の部屋をパーティーの女性で使っててそこに泊めてもらえることになったの。


 うん、夜ご飯はすっごく美味しかったよ。 みんな優しくて、これから一緒にいてくれることになったから。 うんそう、私はこっちに住むことにしたいんだけどいいかな?


 え…… お父さん? なに言ってるの? 零司さんが私をだますなんてことはないよ? ありえないよ? …うん、怒ってないよ。 ちょっとびっくりしただけ。


 それでね、引っ越しは明日帰るときにみんなが手伝ってくれることになったから。 うん、業者さんとかなくて荷造りだけしたらいいって。 えっとね、そうやってハンターの手の内を聞こうとするのは良くないよ? 今回は聞かなかったことにするけど聞きたかったら本人に聞いてね?


 それと、三上のおじさんに謝っておいて。 もう浩二くんとは会わないから。 うぅん、嫌いになったとかじゃないよ。 ずっといやだっただけ。 あぁ…… やっと言えた…… ふふっ、うん、すっきりしたの。


 今までありがとうございました。 お母さんにも伝えておいて、私は今幸せだよって。


 それじゃ、また明日。 うん、おやすみなさい。」



「ふぅ… やっと言えた… ほんと零司さんのおかげ…」


「陽菜ちゃん、電話終わった?」


「うん、ちょうど終わったとこ。」


「じゃあこっちで話そ? みんな陽菜ちゃんのこと知りたいんだよ。」


「はーいっ」




「来たか、まぁ飲め。 まだ未成年だからソフトドリンクな?」


「はぁ… 帰ってきてからずっと飲んでますね、いいんですか?」


「あのなぁ、せっかくの焼肉だってのに引率だから我慢してたんだ、帰ってからくらい飲ませてくれよ?」


「それは私も同じなのですが、しょうがないひとですね…」


「それで私たちと何を話したいの? 美夏が集めたんだからきっちり仕切りなさいよ?」


「はーい! せっかくこんなに女の子がいるんだからコイバナしなきゃでしょ!

 というわけで好きなひとについて語ってもらいます!」


「ちょっと! あんたバカじゃないの!」


「あれぇ~? ゆかりさんは好きな人いないのぉ~?」


「そ、そんなこと言ってないでしょ!」


「じゃあ、最初はゆかりさんにお願いしましょう!

 誰のこととかは言わなくていいからね?」


「はぁ… この子は言い出したら止まらないのよね…

 わかったわよ。

 私の好きな人は強くて、優しくて、責任感が強い人よ。

 私ってほら、時々きついじゃない? 「時々?」うっさい!

 そんなときも「しょうがねぇな」って受け入れてくれる、そんな人よ。」


「キャー! ほんとにそのひとのこと好きなんだね! もし他にもその人を好きな女の子がいたらどうするの?」


「どうもしないわ、ハンター特例があるもの。 その子も含めて受け入れてもらえばいいだけよ。 でもできれば私とも仲良くできる子だと嬉しいわね。 同じ男を好きな女同士で仲悪いってその人に迷惑になるじゃない?」


「ほんといいツンデレをありがとうございます! 次は小百合さん、いい?」


「はぁ… 付き合いますよ…

 私の好きな方は… ちょっと美春! 私にも1本ください!

 (ごくっごくっ)ぷはぁー! こんなこと飲まないと言えませんよ!

 あの方は私の命を救ってくれました。 それでもそのことで恩を着せたりしなかったし、偉ぶったり実力をひけらかしたりしないんです。

 あの頃の私はそれなりに強かったのですが、天狗になっていたんです。 あの方はそんな私とは違って謙虚というか、強さを誇示するより別のことを考えてるような方です。

 だから尊敬しています。 あの方を支えたくて協会のスタッフになりましたが、今は直接お支えする方がいいと思うようになりましたね。

 他の方がって聞かれると思うので先に言いますが、すべてはあの方が決めることです。 私はそれを受け入れるだけですよ。

 はい! ここまでです! 次のひとにお願いします!」


「あはは! 真っ赤になってる~! 小百合さんのこんな顔が見れるなんてびっくりだよ!

 それじゃぁ… 美冬姉さん!」


「れーじ。 全部好き。 れーじのためならなんでもできるし、れーじを好きなほかのひとがいてもれーじが受け入れたひとならいい。」


「はぁ… 想像通りというか、もう当たり前というか…」


「うん… 知り合ったばっかりの私でも美冬さんのは思った通りでしたね。」


「そういう美夏はどうなのよ? 人に聞いてばっかだけどあんたも白状しなさいよ?」


「はぁ~い。

 私の好きなひとはね、優しすぎるの。

 ひとのために自分が犠牲になったり悪く言われたりしても全部受け止めてみんなを守ってくれる、そんなひとなの。

 だからね、私はそのひとを癒してあげたいの。 どこまでできるかとか何ができるかじゃなくて私がしたいの。

 他のひとを選んでも私はきっとずっと好きだし尽くすよ。 みんなまとめて受け入れてくれたら1番だけどね!」


「へぇ~ そんな風に思ってたんだ?」


「まさかお前がこんなに早くそこまで好きな人に出会えるとはなぁ。」


「想い方が私と似ていますね。 一緒に支えて尽くしていきましょうね。」


「もぉ! なんでみんなそんな子供の成長を喜ぶみたいな雰囲気なの!?

 そうだ! 疲れてるときにはスタミナ料理がいいよね! 明日の朝ごはんは私が「「絶対ダメ!」」解せぬ!!


 はぁ… 美春姉さんは最後に取っておいて陽菜ちゃんに聞いてみようかな!」


「さ… 最後なのか…?」


「そうね、美春さんにはトリをやってもらいましょ。」


「陽菜ちゃん、いい?」


「うん… 私はね、足もこんなだしパパもママも亡くなってるから一人前に人を好きになっちゃいけないって思っていたんです。

 きっとその人に迷惑がかかるし、ご家族の方にも許してもらえないだろうなって…

 それに浩二くんのこともあって私って汚いって、汚れた女なんだって思っていたんです。

 でも今日、それが全部変わったんです。

 足を治してもらって、浩二くんとのことも私は悪くないって、洗えば済むって…

 そんなこと考えたこともなくて…

 放課後に声をかけてもらったことから、足のことも、浩二くんのことも、私の思い方も全部全部変えてもらったの。

 私を生まれ変わらせてくれたの。 だから私の全部はあのひとのもの。

 あのひとが新しくしてくれたからあのひとのものになったの。


 本当に素敵なひとだからほかにあのひとを好きになる女の人がいてもおかしくないと思いますよ。 あのひとが受け入れたのなら私も受け入れます。

 でもあのひとを傷つけたり、あのひとの不利益になるようなら排除します。

 今の私だと難しいですけど、どれだけ時間がかかっても徹底的に潰します。

 

 昨日までの私だとこんなこと考えもしなかったのに…

 ひとを好きになるって… 愛の力ってすごいですね。」


「あ… あはは… すごいね…」


「いいこと言う。」


「この子は大物になるわね…」


「じゃあ最後は…ね? いっちゃいましょう!」


「はぁ… ほんとに言うのか…?」


「ここまで来て逃げないでよ?」


「頑張ってください!」


「私たち大人には少しつらいですよね… もう1本飲みますか?」


「ありがと、(んくっんくっ)ぷはぁ…

 私はあんたたちみたいにドラマチックなことがあったわけじゃないし、長い間思い続けてたわけじゃない。

 私は才能があったみたいでさ、少し魔法を使ってたらすぐにジョブが賢者になってね。 高1のときにはもう魔術を使ってたんだ。

 今思うと調子に乗ってた。 同世代に同じくらいのやつはいなかったし、年上にいてもそれは年上だからってな。

 だからいいと思うひとはいなかった、同級生でパーティーを組まされたから実力差はすぐに広がったよ。 それでも抜けるならペナルティって言いだしたから卒業まで我慢してハンターを引退した。

 そっから大学にも行ったんだけどそこの連中はあからさまな身体目当てばっかで気持ち悪くてな…

 親の紹介か見合いで比較的マシなのと結婚してって思ってたときに出会ったんだ。

 最初はちょっと気配察知ができるくらいかと思ってたけどそれ以外もすごい、私より確実に強くて、それでいて強引で、強引なのにちゃんと気遣いは忘れなくて、両親の心配もしてくれるし、こいつなら私のことを大事にしてくれるって思えたんだ…

 こんな気持ちは初めてでさ… どうしたらいいかわかんなくて…


 まだハンターランクがBじゃないから早く上がって私たちを迎えてほしいって思って… あ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 なし! 今のなしだから!! お前ら忘れろ!!!」


「うちの姉がピュアで可愛い件。」


「ほんとね… 美春さんがこんなかわいいなんて思わなかったわ。」


「ね? 美春姉さんを最後にしてよかったでしょ?」


「ほんとですね。 皆さんとはこれから仲良くできそう。」


「えぇ、ですが陽菜さんに排除されないように気を付けないといけませんね。 気を付けるまでもありませんが。」


「小百合が冗談を言うなんて… 陽菜を入れて正解ね。 もっと楽しくなりそう!」


「さすが零司くんだよね!」




「でもさ… 零司にも弱いところってあるわよね…」


「そうなんですか?」


「あぁ、本人は見せたがらないがあれで打たれ弱いしすぐ落ち込んだりするな。」


「はい… 無理をして強く見せていますが、今回の協会との件もあの方にとって限界が近くてああいう対応になったのではないかと…」


「れーじの子供の頃とかきいたことある?」


「ないわね。」


「5歳からハンターをしているんだ、どんな養育環境かなんて考えるまでもない。 親の愛情を受けたことがあるのだろうか…」


「そのぶん私が癒すから!」


「美夏のそれで? ふーん?」


「ちょ、ちょっと! 美冬姉さんは大きすぎなのよ!」


「なら私でもいいですね。 零司さんの弱いところも脆いところも全部受け止めて愛と幸せをお届けします。 ふふっ 私の愛はこれまでの絶望より深いんですから… ふふふ…」


「お前ら… あんまりわざとらしくするなよ? あいつは勘はいいんだ、お前らの魂胆なんてすぐに気づくだろ。」


「じゃあ美春さんが癒すんですね… それで。

 そ、の、お、お、き、な、も、の、で!」


「な!? い、いや、そんなことは言ってないだろ!?

 その… 喜んでくれるなら嬉しいが…」


「はぁ… 美春… あなたは妹たちに揶揄われているんですよ?」


「うぅ…ん… 身長から見れば美春さんより私か美冬さんが大きい…

 あれも夢中になっていたし、きっと零司さんもこの胸を気に入ってくれるはず…

 あんなのでも参考資料としては役に立ったね…」


「陽菜… ちゃん…? なんかこわいよ…?」


「え? なにが?

 私は独り占めしたりしないから。 独り占めはされたいだけよ。」


「はは… 最近の若いやつらは個性的だなぁ…」


「本当ですね、でも私たちも負けてはいられませんよ?」


「そ… そうだな… 親の愛は無理でも… その… な?」


「美春はその気持ちを伝えるところから始めないといけませんけどね。」


「そんな恥ずかしいことできるか!? そんな経験なんてないぞ!?」


「はぁ… たぶん全員そんな経験ないですよ…

 美春に年上の余裕は難しそうですね…」




作者です


レビュー(⭐)、応援(♥)、コメント

何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!


近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。


次回は2023.10.09 12時です。


10月は2日に1回、奇数日更新で頑張ります!


よろしくお願いします。

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