027 (説明回)今日の授業は予定を変更してハンターについて詳しくお話しします
あれから数日。
山下は有給消化もせずにさっさとうちに転職してきた。 数人の部下と縁のあるテレビスタッフを引き連れての転職でこっちも驚いたけど、三上が上手くやるだろ。
学校の方もまぁ問題なしかな。 工藤らはおとなしくしてるし実技の教師は別のやつが来てる。 前のやつは引きこもっているらしい。
協会は音沙汰なし。 まぁそうだろうね、どこまでもつか知らないけど大手がいくつも休業宣言してるからなぁ…
うち以外は謝罪金とか休業期間の補償とか言わずに、待遇改善だけを求めているらしい。 ただ、うちへの対応が完了するまでは休業なんだってさ。
テレビは相変わらず。 コメンテーターによっては「サラリーマンの平均給料で今までと同等に魔石を取ってこい」って言ってるやつもいる。
まぁ、そいつのギャラの金額が流出して炎上してるけど俺には関係ない。
すごいね、週に1回30分くらいテレビでしゃべったら月に1,000万を超えるギャラをもらえるんだよ。
うちのパーティーメンバー(予定)は無事に引っ越し完了。
ほんとに隣の部屋に全員で入ったよ。 2部屋使っていいって言ってあるのに広すぎるからと固辞されちゃったからそれ以上は言えない。
学校が終わると毎日屋上で魔術の訓練をして、美冬の作る夕ご飯を食べる。
なんだろう… すごく充実してる気がする。
「ねぇ聞いた? 三上先輩と山下ちゃん別れたみたいよ。」
「うそ? あんなにずっと一緒だったのに?」
「その話しはちょっと違うわよ、元々付き合ってなかったって聞いたわよ。」
三上と山下?
あの2人の子供が俺と同世代って話しは聞いたけどまさかな。
「零司くん! 聞いた? 山下さんと三上先輩が別れたんだって!」
「らしいな。 それでその山下と三上って誰なんだ?」
「山下さんはハンター科だけど隣のクラスの車いすの子で、あの山下さんの娘さんよ。 三上先輩はハンター科2年で、春休みにCランクに上がったエリートよ。」
「春休みにCに上がった三上… あぁ! うちの三上の息子か! ってことは2人は幼馴染みって感じなのか?」
「そうよ。 車いすの山下さんを三上先輩がずっとお世話してたから有名なの。」
あの三上の息子ねぇ… あんまいい話し聞かないんだよなぁ。
「今日の授業は予定を変更してハンターについて詳しくお話しします。
これは連日の報道でハンターに対しての風当たりが強く、生徒の皆さんの意欲低下を危惧しての対応になります。
まず、ハンターの収入に関してですが、これは完全に実力、成果によるものです。
EランクとFランクの魔石の価格の差は知っていることと思いますが、おおざっぱになりますが魔石の値段のめやすを教えます。
Fランク 1,000円
Eランク 1万円
Dランク 10万円
Cランク 50万円
Bランク 100万円前後~ ものによっては億
Aランク 億単位
これは1個の値段であり、状況に寄り多少前後しますが倍になることはあっても半額になることはないでしょう。 ハンターのランクと魔石のランクが必ず同じということはありませんが、このランクのハンターは同等のモンスターを狩れると認知されます。
また、1つの群れの同じ種類のモンスターを狩ったとしても魔石のランクが異なることがあります。 これはモンスターにも能力差というものがあるということを表していると解釈されています。
ではなぜ魔石はこれほどの価格で買い取りをされているのかという話になります。
今の日本は化石燃料の使用を取りやめ、魔石による発電を行っています。 つまり過去でいうところの石油や石炭に使われていた予算がそのまま魔石に使われるようになったのです。
エネルギー源を他国に依存せず自給できることはエネルギー安全保障という面から国として非常に望ましいことなのです。
また、魔石は特殊な加工をすることで工業製品の素材にすることができるとわかっています。 通常の金属よりも丈夫な合金を作ることも可能になりました。
このように魔石は国民生活を豊かにしています。
魔石の価格の差については内包する魔力の量と質によります。
上位ランクの魔石ほど質・量ともに高い魔力を持っているということになります。 であれば上位ランクの魔石ほど高額での買い取りとなるのは当たり前です。
当然ながら、上位ランクの魔石を持つのは上位ランクのモンスターとなり、それを倒すことのできるハンターの収入は高くなります。
もし、ハンターを出来高なしの基本給料制にしてみたと想像してください。
甲種ダンジョンで死ぬ思いをしてモンスターを倒すハンターと、丙種ダンジョンで散歩感覚でモンスターを倒すハンターが同じ給料だったらどうなります?
よほどのバトルジャンキー以外は甲種なんて入りませんよ。
そうなると化石燃料の時代のように他国から魔石を輸入するか、化石燃料を輸入するかになってしまいます。
そうなったときに魔石の価格はどうなるのでしょうね。 私が取引相手国であるなら足元を見て吹っ掛けると思います。
これを防ぐためにもハンターにはしっかりとした料金で魔石の買い取りを行い、積極的にモンスターを倒してもらわないといけません。
このように経済の面からだけでなく、もっと根本的に、ハンターがダンジョンに入る頻度なりが下がったらどうなるか皆さんはご存じでしょう。 氾濫です。
氾濫が起こると魔石が1ついくらだなどと言っている場合ではありません。 周辺住民の命の問題なのです。
ハンターがダンジョンを放置するようになると氾濫が起き、何人もの犠牲が出る。
今の報道を見るとそれを忘れているように思えて仕方ありません。
皆さんはまだEランクやFランクかもしれませんが、それでも一般人では敵わないモンスターを倒すことができるのです。 丙種ダンジョンの氾濫でも一般人にとっては命に係わり、普通に地獄です。
無理はしてほしくありませんが、どうか適度にモンスターの討伐をしていただきたいと思います。」
「先生、先生は大手クランが休業しているのをどう思いますか? やっぱりそんなことよりモンスターを倒せって思いますか?」
「そうですね… 私はこの休業宣言は仕方のないことだと思っています。 ネットに流れている音声は聞きましたが、あんなことを言われては協会を信用できません。 ハンターの収入は魔石の売却です。 それを依頼料だけの支払いで魔石はすべて提出させようなんてわけがわかりませんね。
先ほどの話しと矛盾しますが、ハンターも心のある人間なのですから人に感謝されれば嬉しいでしょう? 逆に利用されればいやな気分になります。
私はハンターと一般人がうまく共存できるように調整するのが協会の役割だと思うのです。
今回のハンターの要求内容までは知りませんが、早く要求に応えて戻ってもらえるようにすべきだと思いますね。」
「あの… こんなことを言って先生の立場が悪くなったりしませんか…?」
「お気遣いありがとう。 今日の話しは職員会議で生徒の皆さんに伝えることになったものなので大丈夫です。 ある方の勇気ある発言で私たち教師も言うべきことは言おうということになりましたから。
先ほどの質問の答えは私の個人的な気持ちなのでそこは大目に見てくれると助かります。」
この学校にもまともな教師はいたんだねぇ。 それにしても生徒まで立場が悪くなると心配するってことはこういうことを言うとなにかされるって前例でもあるんだろう。
ハンター科の授業でハンターの肩を持つ発言がしにくいってどうなってんだ?
それだけ協会の影響力が強いのかハンター排斥主義者が多いのかだよな。
身体を張ってるハンターが高額を稼ぐことは不愉快に思うんだろうけど、ハンターがモンスターを狩らないと一般人も危ないんだよ。 これは常識だと思うけど排斥主義者たちはそこんとこはどう折り合いをつけるつもりなんだろうね。
まさか、本気で平均給与の金額で今と同程度の仕事をさせるつもりじゃないよな…?
作者です
⭐、♥、コメント
何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!
近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。
そういったものもあるというご連絡でした。
次回は2023.09.29 18時です。
よろしくお願いします。
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