022 よりによってサブゼロかぁ…
5人が居住まいを正し、話しを聞く体勢に。
こいつらのこういうところはほんと好感を持てる。 そうじゃないとこれからの話しはできないからね。
「でははず俺のことから話そう。 俺は神薙の偽物って言われているが、それには語弊がある、」
「そうよね。 同じ苗字だからって偽物扱いって意味がわからないわ。」
「ゆかりがそう言ってくれるのはありがたいんだけど、西で活躍中の神薙兄弟と俺は一応血縁にあるんだ。」
この話しはゆかりと美冬にはしてなかったからな。 俺はこの5人に差をつけたくないからちゃんと話しておく。
「れーじの兄弟ならあれくらいできて当たり前。 でも兄弟にしてはあっちは弱い?」
「美冬の言う通りあいつらと俺にはかなり差があると思う。 でもそれはまた今度な? 今年から俺は神薙の家から追放されてこっちに来たんだ。 一応中学まではあっちにいたよ。 俺のステータスは特殊で、俺自身と超級鑑定持ちにしか見ることができなくてあっちでは落ちこぼれ扱いでさ、かなり冷遇されてた。
生活費も満足にもらえなかったからチビの頃からハンターをして稼いでたんだ。
まぁ、その稼ぎも半分は取られたからな。 そんなわけで俺はゼロっていう架空のハンターを作って活動してた。
ゼロは神薙とは無関係だから稼ぎも取られないって最初はそれだけのつもりだったんだけど状況はどんどん変わっていってな、鍛えてほしいとか傘下に入れてほしいってやつらが集まってきた。」
「それはわかるわ。 ゼロの傘下ってだけで抑止力になりそうだもの。」
「そう。 そういう打算で寄ってくるやつも多いけどなぜかゼロに恩返しがしたいって集まってくるやつらがいくらかいたんだ。 そっちは無下にできないからクランを作った。
知ってるとは思うけどクランっていうのはいくつかのパーティーが集まって作る互助団体だ。 クランマスターとそれが所属する代表パーティーが上位になるけどそれ以外は対等っていうのが多いね。
ゼロとゼロ1人のパーティーをトップにしたクランと、同時に会社も作ってより効果的に効率的に参加ハンターの支援をできる体制を整えた。」
「ふむ、その年でクランに会社か… お前がどれだけ苦労をしてきたかが透けるな…」
「まぁね、怪我の療養期間とかの生活費の面倒を見たりするのに会社を作るのは有効だったよ。」
「そうですね、売り上げがハンター活動という書類さえできれば法人税も所得税も不要になりますので、支払う税金は事務職員の所得税と社会保険程度でしょうか。」
「そこらへんは税理士に任せてるからなんとも言えないかな、俺のパーティー以外のパーティーは稼ぎを一旦会社に全額入れて、そこから歩合制って形で給料を払ってるよ。 あと福利厚生の一環で装備の手配なんかもしてるよ。」
「零司くんって社長さんだったんだ! すごいね! でもそれとこの集まりに何が関係するの?」
「お前ら全員、俺のクランと会社に入ってくれないか? 何なら井上両親も会社の方へ転職してくれると助かる。」
「どういうことだ? 私たちのクラン入りはわかるが、うちの親までというのがよくわからないんだが?」
「あー そういうことね。 これから私たちは零司と行動するのは決まってる。 そうするとそれを良く思わないやつとか、美冬たちをどうこうしたいやつがご両親を人質にする可能性があるってことよ。 ゼロの会社に入ればご両親のこともある程度守れるしね。」
「社宅もあるから引っ越して来てくれるとありがたいね。 マンションだしまだ空きは多いよ。」
1棟買い上げてるけど半分も埋まってない。 それだけクランに入れる人員は選別してるってことだ。 来るもの拒まずなんてしたら何されるかわかったもんじゃないからな。
「俺の身内と呼べるパーティーメンバーは最上階の1フロア、井上家のご両親には開いているところを自由に選んでもらおうと思っているよ。
ここにいる5人は最上階でと思うが問題あるか?」
「私たち3人は問題ないと思うけど、美夏と美春さんはどうするの? 美春さんは副業になっちゃうんじゃない?」
「美夏さまは未成年ということで美春さまが保護者として同居ということにすれば問題はないかと思われます。 それにご両親がこちらに入られたなら同じ棟にいるので実際はどの部屋にいても問題はないかと。 美春さまもご両親との同居という体裁にすればなんの問題もありません。」
「さゆりナイス。」
「そうだな、さっきの件もある。 今後あんなことが繰り返されてはたまらん。 両親の説得は私がしよう。 だが、それよりもその会社の経営はどうなっているんだ? 転職を勧めるにしても条件や会社の規模について伝えないわけにもいかんぞ?」
「んじゃ、会社の説明をしとくか。 まぁクランも同じ名前なんだけどな。
株式会社サブゼロ。 資本金は日々増えてるからなんとも言えん。 業務内容は広くハンターの育成と支援だな。 それに伴う各種業務はなんでもしてる。 基本的には社員になったハンターが魔石を会社に納品してその魔石を協会などに販売して利益をだしている。
その他にハンター向けの装備品の製造・販売、回復薬などの備品の開発もしてるな。 装備品については買い付けもしてるから海外のハンターとの取引実績もそれなりにある。
所属については機密扱いだけどBランク以上のハンターが100人程度、一般スタッフは50人程度ってところかな。
年商は… 俺1人で月に億は軽く稼げるから一般スタッフでも年収800万は保証するよ。 ご両親のキャリアを知らないからなんとも言えないけど、鑑定スキルがあるなら装備関連や研究関連に配属できるし、経理や営業だって能力があれば年収2,000万で契約してもいい。
こちらからの希望は1か月以内に転職して社宅へ入ること。 あとはそちらの希望におおむね沿えると思うよ。」
「クランサブゼロ… 私でも聞いたことあるすごいとこだよ…?」
「やっぱりあれはゼロのだったね。」
「各地の支部からの報告で聞いてはいました。 クランサブゼロのハンターはホームでもどこの支部へ派遣されても問題行動を起こしたことはないと、問題を起こした者はサブゼロを騙る偽物ばかりだったと。」
「当たり前だ。 そんなやつがいたら仕置きして除名してる。」
「よりによってサブゼロかぁ…」
「美春さん? なにか問題があるのか?」
「実はうちの両親は元ハンターで今は研究職なんだよ。 父は武装、母は対モンスター用の素材の研究をしている。 どうしてもサブゼロに届かんといつも悩んでいるよ。」
「そうか… なら移籍金に5億用意してあると伝えてくれ。」
「ちょっと待て! そんな金額を!?」
「お前らの安全のためなら安いもんだ。 それにこれはスタートの価格で、ここから上がるつもりでいるから心配はしないでいい。」
「姉さん、れーじの金銭感覚は普通じゃない。 諦めた方が楽。」
「…そのようだな、両親にはそう伝えよう。」
失礼だな! 俺は金の使いどころを考えているだけだぞ!
これだって無駄遣いじゃない。 井上ご両親を人質にでもすれば美冬たちを動かすことができるかもしれないし、そうなると俺も困る。 そういうことをしそうな心当たりはいくらでもあるしな。
「よし。 みんなクラン入りについては問題なさそうだな。
当面の方針としては、レイヴンは3人で甲種と乙一種で無理のない範囲で間引きと小遣い稼ぎを。 ご両親が入社するまでは小百合のパーティーメンバー扱いでうちに寝泊まりしてくれ。
美夏と美春さんは俺と組んで乙二種だ。 俺はこのあとCランクになるから問題ないだろう。 2人にも1室用意しよう、その辺りの差配は小百合に任せて大丈夫か?」
「お任せを。 ですが1部屋が広いので1室に2人で入っても問題ないかと思われますが…」
「それも含めて任せるよ。」
「ちょっと待ってくれ! なんで私がハンターに復帰することになってるんだ!?」
あれ? 美春さんはなんで復帰を躊躇するんだ?
作者です
⭐、♥、コメント
何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!
近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。
そういったものもあるというご連絡でした。
次回は2023.09.20 18時です。
よろしくお願いします。
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