021 美春姉さん、私が2人ぶん作ろうか?
ほんとうまかったなか… こんな弁当なら毎日でも食べたいな。
今は美春さんに食後のお茶をもらっている。 食後はやっぱり緑茶がいいね。
オッサンくさくてごめんね!
「ふぅーー 落ち着いた。」
「おそまつさま。 大丈夫だった?」
「おいおい、美冬さん? 大丈夫どころかうますぎて毎日食べたいくらいだぞ?
もし自分の分を作る日があれば俺のも頼みたいな。」
「いいよ。 れーじになら毎日つくる。」
「おいおい、私らの分は?? 姉妹だろ?」
「美春姉さん、私が2人ぶん作ろうか?」
「み… 美夏… いや… 美冬! 頼む!!」
えっと? 美春さん本気で嫌がってないか? ここまで警戒する美夏の料理って… マジか! いや、そんなわけないだろ、料理だよな? せいぜい砂糖と塩を逆にするとか、とんでもなく甘くなるとかそういうもんだろ? でも美春さんの目は本気なんだが…
「わ… わかった… 全員分作るから美夏はキッチンに立ち入り禁止。」
立ち入り禁止ってそこまでか… 手を出すなじゃなくて立ち入り禁止ってちょっと行き過ぎだと思うけど美冬の目も本気なんだよな…
姉妹がこれだけ言うんだ。 よし、美夏の料理は本気で警戒しよう。
「美春ちゃーん 遊びに来たよー」
保健室の扉を乱暴に開けたのは、制服のラインからして3年か。
それよりなんだこいつ、ちょっと馴れ馴れしすぎないか?
「なんだお前、ここは遊びに来る場所じゃない。 体調に問題ないならさっさと帰れ。」
さすが美春さん! そうやってはっきり言うのって大事だよな。 たしか美春さんも元ハンターって話しだし暴れても抑えられるか?
「そう邪見にすんなよ、俺こんどBランクに上がれそうなんだよ! そしたらさ、俺のもんになってくれよ? Bランクからは重婚できるしいいっしょ?」
なに言ってんだこいつ。
「残念だったな。 こっちにも選ぶ権利はあるんだ。」
「いやいや、そんなこと言える立場か? 美春ちゃんの妹ちゃんってランクいくつだっけかなぁ?」
その妹は2人ともここにいるが?
「どういう意味だ? まさか脅迫でもするつもりか?」
「そんなことしてないじゃん? 俺はただ妹ちゃんのランクを聞いただけだぜ? 勘違いしてもらったら困るなぁ。」
うわぁ… なんていうかゲスいなぁ…
ほんとこんなやつばっかりかよ… この学園どうなってんだ?
「Aランク。」
「は?」
「姉さんの妹はAランク。 あたし。」
「えっと… 井上さん…?」
これは知らない感じか? 美冬の言い方だと通じてないよな。
「あー、先輩。 横から失礼するよ。」
「なんだお前? ん? 赤ラインってことは1年か、なんだよ?」
「この2人のフルネームを言ってみよう。 こっちは?」
「あん? 井上美春ちゃんだろ?」
「そうそう。 んじゃこっちのフルネームは?」
「えっと… 井上美冬さん… 井上?」
「そ。 姉さんはあたしの姉さん。」
おぉ… おもしろいくらい顔の色が変わるじゃないの。 真っ青だよ。
「姉さんの妹、あたしをどうするの?」
「い… いえ… どうもしません! 失礼しましたー!!」
うわ… 走って逃げてったよ… だっさ…
「はぁ… 美冬がいてくれて助かった。 正当防衛になるだろうが生徒と暴力沙汰は起こしたくなかったのでな。 それにしてもここの生徒には躾のできてない者が多すぎないか? 私は今年から赴任してきたからよくわからんのだが。」
「あー 俺も思ってる。 どうなってんだ?」
「そうねぇ… 去年実技教師の主任?が変わってそれからこんな感じになったのよ。 実力主義を歪めて解釈してるっていうか。 言いたくないけど女の子に無理やりって事件が増えてるのよ、訴えても報復が怖くてみんな泣き寝入りしてるし。」
「見つけたらぶっとばしてるけど、全然減らない。」
うわぁ… 実力があればなにやってもいいってか? それはちょっと違うだろ。 それがここのやり方ならその通りにしてやろうか…
「お… おい… 零司… ちょっと殺気を抑えろ… ちょっときつい…」
「あ、すまん。 なぁ、ゆかり? その主任と支部長って繋がってるんじゃないか?」
最近変わったって言うのと、実技教師が協会から派遣されているっていうことから考えればそういう結論に行きつくのは簡単すぎるか?
でもなぁ… 今の支部長の悪評からしてつながりはありそうなんだよ。
「そんな噂もあるわ… でも証拠はないの…」
あぁ、そういうことか。 平坂が動かないのが不思議だったが時間かかってるだけみたいだな。
「しばらくは自衛するしかないか… 午後は協会に行くから早退にしよう。 小百合とも話しを詰めたい。」
「うん… 私もあの2人の顔はちょっと見てたくない…」
美夏は… そうだよな。 察してはいたにしてもこないだまでパーティーメンバーとして、友人として過ごして来たのにああやって裏切り者なんて言われていい気分なわけがない。
協会に着いた俺たちはいつもの13番の面談室を確保した。 小百合も引き継ぎしに来ていたのでそれは明日以降にしてもらい、こっちを優先してもらう。 平坂には呼ぶまで来るなと言ってある。
これで内緒話ができるね。
「さて、みんなには聞いておいてほしい話しがあるんだけどその前に“防音”っと…」
「え… 零司くん? これ… なに?」
「まさか、零司が防音の魔術まで使えるとはな…」
「これはウインドシールドの魔法の応用魔術で防音って言うんだ。 ここでの会話は一切外に漏れないし、盗聴器にも拾われない。 普通のやつなら風の魔術レベルが7くらいで使えるんじゃないかな。」
「あぁ… 風専門なら早くて5くらいで使えるかもしれんが、他の属性も使っているなら7くらいだろうな。」
「さすが美春さんですね。 賢者のジョブは伊達ではないわね。」
賢者のジョブは魔のスキル関連の適性がかなり上がり、情報についても読み解けるようになる。 要するに魔術を見せればどんな構成かを瞬時に読み解け、技量が足りていればすぐにコピーして行使することもできるというとんでもジョブなんだ。
「ここまでする必要のあることをお話しになるということでしょうか、それよりも副支部長専用のこの部屋の盗聴を気にされるということは…」
「そ。 支部長は平坂の敵だね。 ということは俺たちの敵でもある。
ここからはみんなの将来に関わる話しをするからまじめに聞いてくれると助かる。」
作者です
⭐、♥、コメント
何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!
近況ノートに適宜連絡や感謝を書かせていただいております。
そういったものもあるというご連絡でした。
次回は2023.09.18 18時です。
よろしくお願いします。
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