014 あいつら来るまで仮眠するわ
「あの… これでおしまい… ですよね…?」
えーっと魔石の数は… 315個か、ほとんどがBランクでAランクがいくつかか。
「まだだねぇ、地竜はまだ来てねぇしボスもいるからな。
お! 結構ドロップアイテム来てるな! 武器は別にいらねぇけど肉は嬉しいね。」
鎧竜の甲盾とか盾職なら喜ぶだろうけど俺にはいらないんだよなぁ…
そんなのより肉だよ肉! あっさりした走竜の肉も、赤身で旨味の濃い鎧竜の肉もあるじゃん! こんなに大漁だと来てよかったって思うわ。
「まだ… なんですか…? その… 零司さまは大丈夫なのですか…?」
そんな心配そうに見られてもこのくらいなんでもないんだけどなぁ。
このあと2つ行くしペース配分は考えてるから大丈夫。
「ふぅーー
まだまだ余裕だね。 このあと地竜が30くらいとボスがいるし、乙二種もあるんだから。
で、甲種の空気は感じられた?」
「それは… はい。 走竜1匹くらいなら今でも対応できそうですがあのような群れとなると…
というか、自然に煙草を吸わないでください…?」
「あ、悪い。 ちゃんと吸い殻は焼き尽くしておくから。」
「そうではなく、年齢的な…」
「ハンター特例法で許可されてるぞ? ゼロってバレたしいいじゃん。」
※ この世界ではハンター特例法というものがあり、Bランク以上のハンターは年齢・性別を問わず飲酒・喫煙・重婚が許可されています。
「そうでした… 申し訳ございません。 学園支部の感覚で申し上げてしまいました。」
「いいよいいよ、ほかのやつらには注意してやって。
そろそろやるか… って地竜のやつらまだ動かねぇな。」
地竜はここから20キロくらい先に30匹くらいで固まって動いてない。
マジかよ、20キロも歩きたくないぞ。
「見学にもならんけど討伐を優先させるぞ。 “闇”」
サーチと闇の魔導、アイテムボックスを使いこなすと本当に便利に狩りができる。
サーチで相手の位置や状況を把握し、闇の魔導で攻撃し、魔石やドロップアイテムはアイテムボックスで回収する。
俺はSランクになった12歳の頃からやってるパターンなんだけど他にやってるやつはいないらしい。
こんなに便利で楽なんだけどねぇ。
そりゃあ、習得と練習はかなり大変だけどそのぶん使いこなしたときの便利さには替えられない。
ゆかりでもここまでじゃないしほかのハンターに期待はできないかなぁ。
「あの… 今は一体なにを…?」
「あー さっき地竜29匹倒したからボスと戦ってるぞ?」
無意味に考え事をしていたわけじゃないんだ。 地竜程度なら他のことをしていても処理できるしな。
「地竜が29匹ですか!? それにボス…?」
「思ったより弱かったからさっさと終わらせようと思ってな。 ボスは鋼飛竜でなぁ… 少し硬くて時間かかってるわ。」
「こう… ひりゅ…う…? Sランクモンスターじゃないですか!
Sランクハンターのパーティーなんて国内にそう何組も… そんなのどうやって…」
「あー 大丈夫大丈夫。 時間さえかければこのまま倒せるから。」
鋼飛竜は硬さと耐久性を持ちながら空まで飛ぶから厄介なんだ。
モンスターの等級はその魔石の評価でかわるんだけど、鋼飛竜はSランク以上が確定してる。
ほんと、ゆかりと美冬が来る前に気づいてよかった。
あの2人だと相性の問題もあるけど勝ち目はないな。
「あぁー!!! いい加減に落ちろ!!」
あれから2時間!
どんだけ硬いんだよ!
「状況はどうなっていますか…?」
「一応は一方的に攻撃してるけど硬すぎて終わらない感じだな。」
「鋼飛竜を相手に一方的というのがおかしいのですが…」
そんなこと言われてもな、俺じゃなかったら一方的にやられるのは逆にハンター側になってるぞ?
「それにしてもこの硬さは異常だな。 遊んでるようなもんだけどこれだけ時間をかけても落とせないってどうなってるんだ?」
「最近ダンジョンのモンスターが通常よりも強いことがあると他の支部から連絡がありましたのでそれかもしれません。 それから、ボスを倒した後にもう1体のボスが出現するという事案が報告されています。」
「おい… マジかよ… こいつより硬いとなるとまた時間かかるぞ…」
勘弁してくれよ、このペースだと朝になっちまう…
「出るにしても2匹目は同じ方向性ではないと思います。 報告ではそれまでと逆の方向性のモンスターで、対応していたハンターは戦い方を切り替えることができずにかなり負傷しつつなんとか討伐できたとのことですので。」
あはは… そういうのをフラグって言うんだよ?
まぁ警戒しつつ今の相手に集中するか…
「やぁーーーーーっとおわった!!!」
あれからさらに3時間。
もう朝の5時だよ… たしか潜り始めたのが23時ごろだから6時間か、俺にしては長くかかったな。
「討伐できたのですか…?」
「あぁ。 ドロップアイテムもあるから後で確認しようか、それよりそろそろ腹減ったな。」
「甲種ダンジョンを6時間で攻略… 本当に零司さまは規格外でいらっしゃいますね…」
「そうか? ボスの相性がよかったらもっと早いぞ?」
「そうですか… 常識をどこかに置き忘れていらっしゃるのですね…」
「失礼な! 一般常識はそれなりにあるぞ!」
「ハンターとしての常識です! 甲種ダンジョンの攻略は通常は何日もかかりますし、ここのようなタイプだとSランクを含む何組ものパーティーでレイドを組んで対応するんです!
お1人で攻略っておかしいんですからね!?」
そうだったのか!
実は他のSランクってよく知らないんだよな。 協会で会ったり話したことはあるけど組んで狩りとかはしたことがないからどういうやり方をするかとか正直知らない。
絡んでくるのはせいぜいAランクまでだしな。
「はぁ… やっぱりか…」
「どうかされたんですか? 早く戻りましょう?」
「フラグの回収だよ。」
「まさか…?」
「そう、鋼飛竜より厄介なやつがでたね。 鋼鎧竜だ… もうやだ…」
「あの… こうがいりゅうって初めて聞くのですが、そんなに強いのですか…?」
「いや、強さで言ったら鋼飛竜の方が強いんじゃないかな。」
「ではなぜそんなにいやがるのですか?」
「はぁ… 鋼飛竜を倒すのに5時間かかっただろ? 同じやり方で倒そうとしたら軽く2倍かかるんだよ… 時間が…」
鋼鎧竜はただでさえ防御力と耐久に極振りしたような鎧竜がさらに硬くなったものだ。
もうやだ…
「先ほどと同じ戦い方であれば安全に倒せるのであれば少々時間がかかっても…」
「小百合、このへんのモンスターは一掃してあるから1人にしても大丈夫だよな?」
「え? あ、はい。 走竜や鎧竜も1匹であれば逃げ切ることはできるかと…」
「俺はあいつをぶっ飛ばしてくるからそれまでもたせといて!」
それだけ言い残して風の魔導を発動させる。 安全策とかもういい!
さっさと倒して帰る!
若手ハンターは風の良さをあまり理解していないんだ。
身体にまとわせるようにすればこうして空を飛べるし、固めれば打撃にできて、鋭くすれば斬撃にだってできる。
「おらぁ!」
鋼鎧竜の顔面に風の塊をぶつけた。 ワイバーン程度なら吹き飛ぶどころか破裂するくらいの威力を込めたんだが…
「ぐるるるるる……」
のけぞっただけかよ…
「疲れるからあんまやりたくなかったんだけどな…」
アイテムボックスからとりだしたのは1本の刀だ。
これはとある甲種ダンジョンのボスからでたレアドロップ。
しばらくメインで使っていたものだ。
「“雷”」
雷属性を発動させて一歩踏み込む。
大型バスより大きな鋼鎧竜の身体を支えている前足を一歩で切り飛ばす。
振り向きざまに尻尾を飛ばして、その勢いのまま頭上に飛びあがり、首を落とした。
「はぁーー つっかれたーー 残りは後にしてさっさと帰るぞ。」
小百合にそう言って、ゲートに向かう。
身体を動かしたのは最後の鋼鎧竜だけなんだけど魔導の制御はものすごく疲れる。
魔法や魔術ならここまでの疲労はないんだけど魔導は特別。 威力や効果は格別だけどそのぶん制御にかかる負担が大きすぎる。
「あいつら来るまで仮眠するわ。」
作者です
1章の終わりまでは毎日18時に最新話を更新しますので
これからもよろしくお願いします!
⭐、♥、コメント
何か残していただけるとモチベにつながり泣いて喜びます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます