012 1食300万!?




「レイヴン」それは平坂ゆかりと井上美冬の2人が組んでいるパーティーの名前だ。

 本来は別の名前があったのだが、俺… いやこの場合はゼロが2人と行動をともにしているときに名前を変更した。

 3人とも闇属性を使えるので黒のイメージの名前にしたかったそうだ。 俺は期間限定でしか参加しないと伝えていたが、今も同じ名前を使っているそうだ。




「えっと… だいたいの方向性は決まったか? 今夜の主旨は打ち上げだ。 こういうことはさっさと済ませよう。

 俺からは、俺の事情を伝えるのはここのメンツ、平坂兄妹、美冬までにとどめてくれ。」


「私は協会を退職し、ハンターとして再起します。 零司さまのお側にいられるよう可能であればレイヴンのお2人と合流し、それが不可能であれば1人ででも研鑽いたします。」


 え? これ本気で言ってるのか?

 協会の受付嬢ってかなりの好待遇だし言ってしまえば勝ち組の職場だぞ?

 それを捨てて大丈夫か?


「国見さん、本当にいいんですか? 協会の職員ってなかなかなれませんよ?」


「かまいません。 私はゼロさまをお支えしたくて職員になりました。 零司さまを直接お支えできるのであれば未練などありません。 

 それから… 浅ましいお願いなのは承知しておりますが… もしよろしければわたしのことも小百合と… お呼びくださいませんか…?」


「わかりました。 では小百合さんと…」


「いえ、呼び捨てで… 言葉遣いも敬語など不要です。」


「はぁ… わかったよ、小百合。 これでいいか?」


「はい!」


 なんで年上の美人受付嬢を下の名前で呼び捨てに…?



「私はとくにすることはないね。 養護教諭としてあんたら生徒を看るだけさ。 零司のことは気にしとくよ、怪我したらすぐ来るんだよ?」


「大丈夫! 零司くんが怪我したら私が回復魔法を使うから! 零司くんに鍛えてもらってっていうと少し情けないけどパーティーメンバーとして恥ずかしくないように強くなる! 学校では私しか側にいられないからみんなの分も頑張ります!」


 あれ? 美夏って俺を保健室に連れて行ったところからしか知らないけど、どちらかと言えば引っ込み思案な印象だったのがなんでこんな元気系になってるんだ??



「よし! そんなところで今日は好きに飲み食いしてくれ!

 ここの払いくらいは余裕だからな!」



 はい… 余裕だったと思っていた時期が俺にもありました……

 お財布的には余裕なんですよ?

 でも別の意味で余裕がないんです…



「れ~い~じ~~~ お前ほんとにかわいいなぁ~

 どうだ? お姉さんといけない保健の授業するか~?

 美冬もでかいけど姉妹だと私が1番だからな~? ほれほれぇ~」


 美春さん… 保健室でも思ったけどほんとにでかい… 抱き着いてそれを押し付けてくるから柔らかいしいい匂いがするし… これって試されてるのか…?

 っていうかなんで俺がかわいいんだよ!



「れっ… 零司さま… こういうことは初めてですのでどうしたらいいかわかりませんが…

 私のこともその… 感じていただければ…」


 小百合さーーーん!?

 受付嬢の制服はいやらしくならない程度にスタイルが出るデザインだったからわかってはいたけどこの人もかなり「ある」。

 それより! なんで俺の胸を撫でるの!? っていうかピンポイントでピンポイントをさわさわって! 感じるってそういう意味の感じる!?



 ――――ガンッ


「零司くん、そのお肉食べないならもらうね。 姉さんのも小百合さんのももらうね。

 食べないとやってられないわよ!」


 美夏… なんかすまん…


「もう! 美春姉さんはお酒飲んだらいつもこうなんだから! 悪い男にいいようにされても知らないんだから!」


「み~か~~? 私のことを~ 心配してくれるのか~? だいじょ~ぶだぞ~ 普段は家でしか飲まないし~?」


「今飲んでるでしょ! ここには零司くんがいるのよ!」


「え~? れ~じはだいじょ~ぶだろ~? それに~ れ~じならいいかな~って思うし~?」


 おい! どういう意味だ! そこんとこ詳しく!


「美春さま、独り占めはよくありません。 そういうときは私もご一緒させていただきます!」


「ちょっと! 2人とも何を言ってるのよ! 2人は知り合ったばっかりでしょ!」


 いや、お前のことも認知したのは今日だぞ?




「失礼いたします。 本日の主菜をお持ちしました。

 こちらはお客様からご提供いただきました、ワイバーンの香草焼きでございます。

 お好みで、味噌だれかポン酢だれをつけてお召し上がりください。」




 ちょっとスタッフ!?

 仕事だけしてすぐに去らないで!? この状況でも顔色1つ変えずに対応できるのはすごいけど、何か言ってくれないと止まらないんですけど!?



「な… なぁ… 零司? 今ワイバーンって言わなかったか…?」


 はい、言いました。


「はい… 確かに私にもそう聞こえました…」


 はい、俺にも聞こえました。


「ワイバーンっておいしいの?」


 うん! 美夏だけなんか違う!


「ワイバーンは甲種か、乙一種のボスで出てくるね。 そのワイバーンだよ。

 確率は低いけどモンスターはアイテムをドロップするだろ? ワイバーンはレアドロップで肉を落とすんだよ。」


 甲種ダンジョンの中にはワイバーンがザコモンスター並みに出るところはいくつかあるから、それなりに…ね。


「いやいや! それは知ってるし、肉を落とすことも聞いたことあるけどレアドロップってかなり低い確率だよな?」


「はい… 協会のデータではドロップの発生自体が多くて10回に1回… レアドロップは500回に1回出たらいい方… 通常はワイバーンを100も倒せませんので正しいかはわかりませんが他のモンスターではそれくらいになるかと…」


 俺はだいた200回に1回くらいかな?

 まぁ、ドロップアイテムは運の要素が強いからなんとも言えないね。


「な… なぁ ワイバーンの肉って協会に売ればいくらくらいに…?」


「私の知る限り協会へ売られた記録はありません… ですが、100グラム100万円は最低するでしょうね…」


「お! いいとこ突くね。 平坂は1キロ1,000万って言ってけど、 それくらいで売るのは馬鹿らしいから、この店には1キロ3,000万で卸してるよ。」


「「「1キロで3,000万…」」」


「この1食で100グラムくらいあるかな?」


「「「1食300万!?」」」


「姉さん… どうしよう… 食べていいのかな…?」


「あ、あぁ… 冷める前に食べないと… こんな機会もうきっとないぞ…」


「お2人とも… ここは覚悟を決めてせーので一緒に食べませんか…?」


「「うん!」」


「ではいきます… 「「せーの!」」」


「「「うまーーーい!!」」」


「なんだこれ! やわらかいのにしっかり食感とうまみがあって…」


「油は少ないのですが、それでいてパサつきなんて少しも感じられない…」


「こんなにおいしいお肉初めて…」


「喜んでくれたようでなによりだね。」


 やっぱりメシをおごるなら喜んでくれないとこっちもつまんないよな。 それにしても料理長また腕を上げたな。 この味噌だれはなかなか…


「あの…さ… 零司くん…」


「うん? どした?」


 さすがにあのリアクションで口に合わなかったってことはないよな?


「次からはもっと普通のお店にしよ! 毎回こんな高級店だと緊張しちゃうよ!」


「よく言った!」


「代弁をありがとうございます!」


「あー… 確かにここは敷居が高いか… でも悪い、他に店をあんまり知らないんだよ…」


 まぁ、ここも接待で知ったわけだし俺自身が開拓した店ってわけじゃないんだけどな。


「それなら私たちで調べるし、学園とか協会の近くのファミレスでいいから!」


「そうだな… 零司が20歳になってたら居酒屋とかでもいいんだが…」


「美春さま、ハンター特例法によりBランク以上は飲酒・喫煙・重婚が許可されています。 ですので昇級を待てばご一緒にお酒を飲むこともできますよ。」


「おい待て、なにかおかしなのが混じってなかったか!? 私は別にそういうのじゃないからな!?」




作者です

1章の終わりまでは毎日18時に最新話を更新しますので

これからもよろしくお願いします!


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