011 色々説明するわ
焼肉屋も考えたんだけどさ、やっぱり女性3人を連れていくならそれなりの雰囲気って必要だと思うわけですよ。
はい、すみません。 最初は焼き肉屋のつもりでした。
とはいえ、俺が東日本に来てからまだ1か月も経ってないし行きつけってまだそんなにないから裏で接待されたときの店にしたわけよ。
前に来た時に支配人って人からもらった名刺にある番号に電話したら予約できたけど、店の番号にかけてたら門前払い食らったかもな。
えぇ… はい… ここまでは現実逃避です。
女性って怖い! 顔は笑顔なのになんか殺気がバシバシ飛んでるんですけど!?
「ふむ、神薙よ。 私はお前と美夏がダンジョンボスの討伐をしたからその打ち上げと聞いていたのだがな。
そこになぜ「殺戮人形(キリングドール)」がいるのかね?」
「私も不思議です。 お2人ともう1人とは聞いていましたが「常春の賢者」が来るとは聞いておりませんでした。
神薙さまの人脈はどうなっていらっしゃるのでしょう?」
「ね… ねぇ 零司くん… この2人ちょっと怖い…」
美夏さんや… 君もさっきの目は少し怖かったです…
ここは全席個室で完全予約制で一見さんお断りの高級料亭ってやつだ。
1年ほど前にこっち方面での依頼を終えた後に接待として連れて来られてから何度か利用してる。
ダンジョン産の食材を持ち込むと喜んでもらえるから利用するときは何かしら持ち込むことにしてるんだ。
今回もしばらく前にドロップした肉を渡してある。
あぁ… 楽しみだなぁ…
「「神薙(さま)!!」」
「あ、はい。
もうめんどくさいから色々説明するわ。
でもこれは他言無用にしてくれるかな? 美夏と美春さんは美冬まで、国見さんは平坂に確認するくらいまではいいけど、それ以上にバラすとちょっと対応しないといけなくなるんで。」
「美冬? ここでなぜ美冬が出てくるのかわからんが生徒の個人情報を吹聴するつもりはない。」
「私も受付嬢としてハンターの皆さまの情報は他言いたしません。」
「美夏もいいかな?」
「うん、零司くんが言うなって言うことは言わないよ。」
なら大丈夫か。 はぁ… 10年くらい隠してたんだけど仕方ないか。
「まず1つめ、みんなは神薙結人(かんなぎゆいと)って知ってるか?」
「元パーティーメンバーの2人がよく名前を出してた私たちと同い年のBランクハンターの人よね?」
「存じております。 まるで勇者のようと言われる戦い方をする方ですね。 たしか年上の個人Aランクの方々とパーティーを組んでいらっしゃるとか。」
「美夏と同い年ってことは15か16でBランクか。 そういえば生徒たちが騒いでいたがそいつのことか。 なかなかやるみたいだな。」
うん、一応知ってるみたいだな。
「あいつは西日本にいるみたいだが、俺も去年、中学を出るまではそっちにいてな。 その頃から「神薙の偽物」って言われてたんだよ。」
「今も… よね…… なんでそんな失礼なことを…」
「まぁそれも完全にでまかせってわけじゃない。 結人は俺の弟だ。」
これを知ってるのは親類と… 平坂くらいか?
小中ではおれはもらわれっ子ってことにされたしな。
「それは… 神薙結人と言えば、たしか上に剣聖と呼ばれる神薙龍臣(かんなぎたつおみ)という兄がいたと記憶していますが…」
「あぁ、その2人の間に俺が入るんだよ。 今は戸籍も改ざんされてるかもしれないけどな。」
「男の兄弟とはそういうものなのか? 私たちは姉妹ではあるが同じく3人。
だが、それなりに仲はいいと思うぞ?」
「それについては複雑な家庭の事情ってやつだね。 さすがにそこまでは勘弁してくれ。」
「ですが、なぜ神薙さま… 零司さまは東日本へ?」
「それは俺が出来損ないだからだね。 美夏は俺のステータスを覚えてるか?」
「うん… ジョブもスキルもなし… レベルは3…」
「え…… ありえません… 副支部長からはガイアウルフを… あ!」
「なに? 神薙はガイアウルフを倒せるのか? その年でか?」
「待て待て、順番に話すから。
俺は3歳でステータスに目覚めたんだ。 ジョブもスキルも人に見えなかったけどな。
祖父は一瞬で歓喜して、次の瞬間で落胆した。 それ以来俺は神薙家の出来損ないってわけだ。 母親も亡くなって生活費も最低限、育児放棄され中学を出たところで追放の形でこっちに来たってわけだ。」
「それにしてはおかしいです。 副支部長は零司さまをかなり評価しています。 あの人は徹底した実力主義ですからそのステータスでこれほど評価されるのはおかしいです。」
「あぁ… あの平坂か… あいつに認められてるんならそりゃあ…」
わぉ 平坂って有名人?
当たり前か。 日本に3人の超級鑑定持ちなんだからな。
「ここまでが2つめな。
んで、5歳のときに平坂と出会って、いろいろあって本名と姿を偽装してハンターをやって、気づいたらSランクになっていました。
これが3つめ。」
「ちょっと待ってくれ…
剣聖の神薙龍臣と言えば私でも知っているぞ。 Sランクが近いと言われるAランクだったはずだ。
その剣聖の弟で。
ジョブとスキルが見えないから家庭で冷遇されていた。
そして実はSランクハンター?」
「美春さんの言う通り。 ちなみに美冬とは一時期パーティーを組んでたこともあるよ。」
「美冬姉さんと? えっと… 性別まで偽装は…?」
「そこまではしてないよ。 身長と顔くらいかな、あとステータスもいじってたか。」
「「ゼロ!?」」
「おぉーー さすが姉妹だね、よくおわかりで。」
「え…… えすらんくの…… ぜろ…… はぁ!?」
「国見さん?」
「ゼロといえば、日本最高クラスのハンターですよ!?
実力があるのに偉ぶらず、若手のハンターが危ないところに立ち会えば謝礼なしで救助し命を救われたハンターは数知れず、また氾濫の恐れのあるダンジョンは積極的に攻略し、氾濫の予防で救われた人数まで入れればゼロさまに救われたものは万を超えるとも言われます。
それに踏破したダンジョンの数は日本で1番だとも言われます。
決まったパーティーは組まず、組んでも数か月で脱退し、長く続いたのは「冬の女王」と「黄泉平坂(よもつひらさか)」の3人で組んだ約半年とも言われて…
冬の女王? 平坂…? あれ…? え……?」
「国見さん、落ち着いてくれるか? 「冬の女王」はこの2人の姉妹の美冬で、「黄泉平坂」は副支部長の妹のゆかりだよ。」
「はっ!? 申し訳ございません… 取り乱しました…」
「あ、あぁ… わかるよ… 私もだ… 美冬がいつも言ってる憧れのゼロが目の前にいて… それもこんな若いなんてな…」
「俺がゼロをやってたのは実家にバレないようにするためだよ。 ゼロとしてかなり稼いだけど実家にバレたら全部没収されるのは目に見えてるからな。」
ゼロの手持ちっていくらだっけ…
もうすぐ兆だなってとこまでは覚えてるが…
「え? なんで実家にお金をとられるの?」
「ゼロさまがAランクになられたのは7年ほど前ですので…」
「美夏、例えばお前が9歳のときに1億円持ってたとして、父さんや母さんがそのまま持たせると思うか?」
「あ… でもそれは零司くんが自分で…」
「他人の親族を悪く言うのは忍びないが、ステータスで判断して家から追放するような家庭だ。 保護者が管理って形で取り上げるのは目に見える。」
「それにゼロがAランクになった頃には龍臣はまだBかCだ。 優秀な長男が出来損ないに抜かれるわけにはいかないから暗殺される可能性もあったんだよ。」
「そこまでか…」
「旧来の名家ってのはそういう体裁を大事にするんだ。 それに実力があってもステータスに見えなきゃイカサマ扱いされるんだよ。」
「ひどい… 零司くんはなにもしてないのに… なんで…」
「悪い… 美夏には刺激が強かったな、泣かせるつもりはなかったんだけど…」
「決めました! 私は零司さまを全力でサポートいたします! 1年ほどブランクはありますが私をパーティーへ加入させてくださいませんか? さび落としの期間はいただきたく思いますが…」
「国見さんは斥候だよな… なら美冬とゆかりのパーティーに参加しないか? あいつらなら平坂経由でゼロの紹介って言えば歓迎してくれると思う。」
「よく私が斥候とおわかりになりましたね…?」
「あぁ、足音と気配かな。 それに「殺戮人形」の名前は俺も聞いたことくらいはあるからね。
俺か美夏がBランクになったときにその気があれば合流を提案しようか。」
「それでおわかりになるとは… さすがです!」
「神薙… いや、零司。 平坂妹はわからんが美冬はお前が合流を望むなら必ず合流を希望するぞ? 昨日も他のパーティーに合流を提案されたが断ったらしいしな。」
「でもなぁ… あいつらが待ってるのは俺じゃなくてゼロだろ?」
ゼロを始めたのは俺が7歳だから9年前か、その頃から20ちょいの姿に偽装してたからあの2人からしたら頼りになる年上って感じに見えてたはずだ。
それが年下だってわかったら離れるんじゃね?
「零司さま! ゼロさまとは生き様なのです! 容姿や年齢などはおまけみたいなものです! きっとレイヴンのお2人もそう思っているはずです!」
ちょっと待てい!! なんであの2人のパーティー名知ってるの!?
作者です
1章の終わりまでは毎日18時に最新話を更新しますので
これからもよろしくお願いします!
⭐、♥、コメント
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