010 女性が多い方が安心だろ?

微調整 2023.09.30



「悪ぃな。 こういう話をもう何年も平坂から聞かされてて感化されてるわ。」


「大丈夫、私もハンターだからハンターの事情は知っておきたいわ。 それに私は魔法がメインだからそこまで装備で資金繰りに困ることはないと思うし。」



 そう、魔法士や魔術師は剣士などと違って物理的に装備が破損する可能性は低い。 まぁそのおかげで嫉妬されたりはあるんだけどね。



「とりあえずボスは倒したし今日はここまでにしとこう。 戻って報告して打ち上げでもする?」


「え? いいの?」


「おう、でもさすがに2人でってことになると… あ、養護教諭のお姉さんでも呼ぶ? 支払いは任せてくれていいから。」


「うん! このあと電話してみるね!」




 ダンジョン協会東城学園支部にはゲートっていう特殊な装置があり、登録してある各ダンジョンへ一瞬で移動することができる。 そうでもないと、学校を早退した俺たちがダンジョンにいきなりは行けない。

 ちなみに学園から狼の森ダンジョンまで一般的な方法で移動するには8時間程度はかかる。 なんせ狼の森ダンジョンの入り口は山の中だから…




 というわけでダンジョンの入り口まで戻り、ゲートを使い一瞬で協会に戻ってきた。

 朝一の授業を途中から早退して潜ってたけどまだ16時か。 ダンジョンにはだいたい2時間程度の滞在か。 他のハンターが探索の報告に来るにはまだ早めの時間帯もあって受付が空いてて助かるね。


「すみません、ダンジョンのことで報告したいことがあるので平坂副支部長を呼んでもらえますか?」


 見覚えのあるひとがいたのでその人の窓口に声をかけた。


「お疲れ様です、先ほどの方たちですね。 13番へどうぞ、副支部長へはこちらから連絡をしておきます。」


 おや? さっきとはなんとなく態度が違うね。




「美夏は美春さんだっけ? お姉さんに連絡取ってその後は待っててもらっていいか? 俺は平坂とちょっと話すわ。」


「わかったわ。 待ち合わせはどうする?」


「美春さんの手が空き次第ここで。 動ける時間は聞いといて。」





「おつかれーーい! どうだった??」


 はぁ… こいつは変わらず軽いなぁ…


「とりあえず、フォレストウルフ42とボスのガイアウルフの討伐完了だ。 ドロップは魔石だけだな。 精算はどうする?」


「うわ… マジかよ… ガイアウルフが出てたか…」


「あぁ、普段ならバーサクウルフかストーンウルフだろ? 放置しすぎじゃねぇの?」


「しかたねぇ… とは言いたくねぇけど仕方ねぇよ。 ハンターにどこに潜れなんて強制できねぇから。 ほんと助かったわ。」


「感謝は言葉じゃなく目に見えるもんでよろしく。」


「あいよ。 んで、分け前はどうなってんの?」


「フォレストは山分け、他は俺ってことにした。」


「まぁ妥当だな。 美夏ちゃんには悪いけど、まだボス戦に役に立つほどじゃないし依頼の方はお前への指名依頼だからなぁ。」


 ハンターはCランク以上から指名依頼を受けられるようになる。 これは能力を認められたハンターに対して協会が依頼するもので、緊急性がある場合や難易度の高いものが多くなる。

 当然だが報酬も高くなるわけで…


「俺個人のぶんはここで精算して、パーティーぶんは向こうで精算するわ。」


「そうしてくれると助かる。 癒着だひいきだなんてお互い言われたくねぇしな。

 んじゃ、指名依頼の達成で500万、ガイアウルフの魔石の買い取りで120万、これでいいか?」


「魔石がちょっと高くねぇ?」


「まぁな、普段なら108万ってとこだけど今回は属性持ちのBランク魔石がほしいって要望が入っててな。 ちょっと色を付けた。」


「なるほどな。 200万くらいまでで仕入れてくれって話しが来てるんだろ?」


「バレたか、でも金額まで当てんなよ気持ちわりぃ…」


「うっせ!」


「まぁ80くらいとっとけよ。 持ちつ持たれつってやつだ。」


「おう、また適当なのがありゃ振ってくれ。 金は表の口座でいいから早めに頼むな。」


「うん? 表でいいのか?」


「表で依頼受けてるじゃねぇか。 もういいよ、実家がうるさくても今なら対応できそうだしな。 きついのがあるなら裏でも受けるからどうぞごひいきに。」


「こちらこそな。 現時点でお前はCランク、美夏ちゃんはDランクに昇格させたから受付で書き換え処理しといてくれ。」


 そりゃそうか、Bランクの魔石を持って来れるハンターをDランクにしておけるわけはねぇな。 それにしても俺はさっきまでFランクだったよな? すげぇ飛び級だわ。




「あ、零司くん! お話しは終わった?」


 面談室を出て少し歩くと受け付け側のベンチでスマホをいじっていた美夏に見つかった。

 マジか… 気配察知… ほんとに生えたか?


「おう、フォレストウルフの魔石は受付で買い取りになったからあっち行くぞ。

 んで、お姉さんとは連絡ついたか?」


「うん、18時には来れるって。 でもほんとにいいの? ごちそうになっちゃって…」


「今からそんなこと気にしなくなる程度にはもらえるから楽しみにしとけって。」




「次の方どうぞ… って神薙さまでしたか。」


 おや? 受付嬢に名前覚えられてら。 今日だけで3回目だからそりゃ印象に残るわな。


「魔石の買い取りをお願いします。 それと2人ぶんのランクの更新をお願いします。」


「え? ランク? ほんとに??」


 美夏さんや… 最初に言ったのに信じてなかったのかよ。


「承っております。 こちらにハンター証と魔石をお願いします。」


 俺は言われるがまま渡すと、受付嬢は目を見開いていた。 普通にフォレストウルフの魔石だが?


「アイテムボックス… いえ! なんでもありません!

 フォレストウルフの魔石ですね、丙種ダンジョンですので1個あたり1万円の買い取りとなります。 こちらが… 42個ですので42万円となります。

 こちらの価格でよろしいでしょうか?」


「はい、問題ありません。」


「お支払い方法はいかがなさいますか?」


「俺のぶんの21万は現金で。 美夏はどうする?」


「ほ… ほんとに21万円…?」


「だからそう言ってるだろ? んでどうやって受け取る? 現金? ハンター証に振り込んでもらうか?」


「あの… では1万円を現金で、残りを振り込みって可能でしょうか…?」


「かしこまりました。 ご存じかとは思いますが、ハンター証はデビットカードのように残高のある限り支払いに使えますが、クレジットカードのように残高以上の支払いはできませんのでお含みおきください。 また、あちらのATMで引き出しも可能ですのでご自由にお使いください。」


「ありが…とう…ございます… すみません、まだ実感がわかなくて…」


「そうですね、Fランクから上がってすぐは皆さまそう言われます。 ですが、神薙さまは余裕そうですね…」


「ん? そりゃあね。 平坂から聞いたんだけどあなたが国見さん?」


「はい、国見 小百合(くにみ さゆり)と申しますが、なにか…?」


「俺の担当になるらしいんでこれからよろしくお願いします。

 あ、そうだ。 これから打ち上げやるんだけど国見さんも来ませんか?」


「え? あ… よろしいのですか?」


「悪かったら言いませんよ。 美夏もいいか?

 女性が多い方が安心だろ?」


 同級生でパーティーメンバーとはいえ男女2人は不味かろうと思って美春さんを呼んでもらったが、もう1人くらいいた方が安心感あるよな?


 ハンターが受付嬢を誘うのはよくあることだし(まぁだいたいは振られてるけど)、平坂とはよくメシとか行ってたしな。 大丈夫だろ。


「私はいいですけど、時間とかどうです? 一応18時からって姉には言ってありますが。」


「はい、今日は17時までですので問題ありません。 ですがお2人はこんな不愛想な女を誘ってよかったのですか?」


「そういう言葉が出るなら誘った甲斐があるというものですよ。 それに不愛想というより、きちんと仕事をしているって印象なので問題ありませんよ。」



 あれ? 美夏の目がちょっと怖いんだけど…




作者です

1章の終わりまでは毎日18時に最新話を更新しますので

これからもよろしくお願いします!


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今回から3,000文字以上を自分ノルマにしようと思います。

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