009 それっておいくらまんえん…?




 さてと! こっからは少しだけまじめにやるかね。


「サーチ…… 見つけた。」


 サーチは火、水、風、土の4属性をある程度のレベルまで熟練して初めて使える魔術、音や温度、地面に伝わる振動なんかで総合的に敵を探すから4属性が必要なんだ。

 まぁ、それなりの魔術師ならだれでも使えるけどね。


「ちょっと遠いな…」


「神薙くん? 今なにをしたの…?」


「サーチっていう魔術でボスを探したんだよ。 見つけたのはいいけどちょっと遠いんだよなぁ… あれ?」


「魔術… 魔術って、え!? Aランクの一部しか使えないっていうあの魔術!?」


「たぶんその魔術だけどべつにAランクじゃなくても使えるぞ?

 心配しなくても美夏がBランクになるころには使える程度には鍛えるから。」


「え…? 冗談… よね…?」


「いやいや、魔術の1つや2つなら努力さえすればだれでも使えるようになるよ。 やり方がわかってないのと面倒なだけで習得自体はそんなに難しくないよ。」


「そんなこともなげに… 魔法士がみんな怒るよ…?」


「しらねぇよ。 努力が足りてないのを俺のせいにされてもねぇ?」


「努力でどうにかなるならみんな使えるようになってると思うっていうか! なんかがものすごい勢いで近づいて来てると思うんだけど!? なんかすごいのが来てる気がするんだけど!?」


 お? 気配察知か魔力感知でも覚えたかな? いい傾向だねぇ。


 魔術を使うには魔力に敏感にならないといけないから魔力感知だといいなぁ。


「さっき俺が使ったサーチに刺激されてボスがここに向かってるんだよ。」


「ボス!? ねぇ! ほんとに大丈夫なの!?」


「丙種のボスだろ? 問題にもならねぇよ。」



 ――――グァァァァァァァァ!!!


「うそ… ガイアウルフ……」


 ガイアウルフってのは土属性を得た狼系のモンスターだ。 狼系のモンスターは大きくても全長2メートル程度なんだけどこいつらは全長4メートル、体高で2メートル近くにまでなる個体もいる。 こいつみたいに。


「おぉー でっかいねぇ。 でっかくても結局は狼系だから対処は同じだ。 いいか? よく見ておくんだよ?」


「ちょっ! なんでそんな落ち着いてるのよ!」


「アクアニードル」


 ガイアウルフを指さし、狙いを定めてアクアニードルを発動させる。


 右の眼球を狙ったアクアニードルはそのまま突き刺さり脳を貫通する。


「はい、おしまい。 水魔法のアクアニードルでもこれくらいはできるからしっかり練習するようにな?」


「うそ… 一撃なんてありえない……」


 呆然とされてもこっちも困る。 これくらいなら余裕だからなぁ…


「お! いいサイズの魔石がでたじゃん! これはBランクに近いな! 一応ボスの魔石だしいい値段が付きそうだな!」


「いい値段? 10万円とか…?」


 おいおい、美夏さんや、そんなわけねぇだろ。


「魔石の平均価格ってまだ知らないんだっけ?」


「うん、Fランクだと1個で1,000円しないくらいの値段だってことは知ってるけど上のランクのはよく知らないの…」


「ざっくりになるけど、Eランクは1万、Dランクは10万、Cランクで50万くらいかな。 魔石の等級はダンジョンの等級とは別になるんだ。 魔石の等級とその条件については研究中だよ。 出現したダンジョンとレベルに影響されるみたいってのが有力説。 今は1個ずつ内包魔力を計って査定するんだよ。」


「そう… ということは今日は…?」


「フォレストウルフを42匹倒したからざっくり40万にはなるかな。」


「よんじゅう…… ってことは私は…」


「うん? 20万くらいだな。」


「もらいすぎよ! どうなってるの! これまで必死に戦って1日で1万になるかならないかだったのに!?」


「そう言われても、入ってすぐに決めたろ? ザコの半分は美夏の取り分だって。 俺は残りの半分とボスの分、それに今回のクエストの依頼料もあるからむしろ俺がとりすぎなんだよな。 どうする? ボスの分と依頼料も分ける?」


「それっておいくらまんえん…?」


「この魔石はたぶん100万いくくらいかな。 あと依頼料は氾濫の予防だし緊急性が高かったから500万かな。 こういう依頼はAランクかAランク間近のBランクパーティーが受けるからそれくらい出さないとだれも受けないんだよ。」


「ハンターってほんとお金持ちなのね…」


「美夏もこれでDランクだから適正ランクのモンスターを俺と2人で1匹倒すと5万くらいになるぞ?」


「あ… あはは…… すごいわね…」


「でも今回の依頼を5人で受けたと考えてみ? パーティーとしてはざっくり640万の収入だけど1人当たりにすると128万だ。 そこから武器のメンテ、新調の費用にガイアウルフが相手だから怪我の治療費も考えるとそこまでうまい依頼じゃねぇよ? パーティーだからそもそもパーティーの積み立てとかするからもっと減るしな。 っていうか税金かかるし!」


「そ、そうよね! 税金って大事よね!」


「ほんとな… ハンターの装備って経費だと思うじゃん? 今の法律だと経費になんねぇから… 武器を傷めそうなモンスターがいるダンジョンはほんとうに儲からないし、儲からないから人が集まらない。 そうしたら間引きが追いつかずに氾濫の可能性上がるだろ? ほんと悪循環なんだよ。 氾濫したらどうすんだって話しだよ。 一応Aランクには免税特権があるんだけどAランクの人数なんて知れてる。 なら低ランクから装備なんかを経費に認めるとかして人を回せるようにしないとAランクが過労死するわ。

 そういうこともあってAランクは協会に文句言うやつが多いんだよ。 悪いのは政治家なんだけどな。」




作者です

1章の終わりまでは毎日18時に最新話を更新しますので

これからもよろしくお願いします!


「応援する」を押していただくとコメントを付けることができます。

何か残していただけると泣いて喜びます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る