002 こいつ教師の自覚あんのかよ…




「おい偽物! 目ざわりだからどっか行けよ!」


 …またか。


 東城に来てもこれってどうなってんだよ。


 元々俺は西日本にあるハンター養成学校である西城学園の中等部に通っていたが、諸事情により東日本の東城学園の高等部へ進学している。

 それはどうでもいいのだが、西城学園の高等部で同じ苗字のやつがかなり好成績をだしていることで俺は偽物扱いされている。 苗字が同じってだけでこの扱いってどうなんだろうね。

 期待はしていなかったけど教師陣からの扱いも生徒と同様で俺はあいつの偽物だ。

 田中とか佐藤とか鈴木とかいう多い苗字だったらよかったとつくづく思うよ。




「本日のハンター学実技の授業は模擬戦です。 組み合わせはこちらで決めてあるのでそれに従うように。」


 くそ教師の1人である実技担当がそんなことを言う。 これは俺をやつが目をかけている生徒と模擬戦をさせて楽しませるって意味だ。

 何度も同じことをされればさすがにわかる。 今日の相手は誰だ?


「神薙は工藤と組むように。 まさか工藤に負傷させるようなことはないだろうが最善を尽くすように。」


 翻訳すると、工藤に反撃して怪我をさせないように、工藤の気が済むまでサンドバッグになっていろってことだね。 こういうのが教師ってどうなん?


「神薙くん…」


「ん?」


 小さい声ではあるが呼ばれた気がした。 振り返ってみたがこっちを見ているやつはいない。 なんだったんだ?


 このくそ学園にもマシなやつが1人くらいいるのかね? どうでもいいけどさ。




「おぅおぅ偽物野郎! 俺の火魔法をしっかり受けてくれよ!」


 工藤ってやつは火の魔法士なのか。 同じクラスではあるが知らなかったな。


 火の魔法は基本4属性の魔法で殺傷力の高い方ではある。 火傷するからね。 だがそれだけと言えばそれだけ。 どの属性を持っているかよりも重要なのは使い方なんだけどな。

 

 ハンターと俺たちハンター候補生にはステータスというものがある。 逆だな、ステータスを持つ人間がハンターになるんだ。 俺たちの世代は親がハンターをしてるやつも多く、そんなやつらはだいたい13~15歳までにステータスを得る。 だからこうして高等部に集められてるハンターの子ってのはステータスを持ってるんだ。 ちなみにステータスで見ることのできるものはこんな感じだ。


名前  xxx

レベル 5

ジョブ 魔法士3(火、水)

スキル 魔法(火2、水2)


 これは一例だけど、ゲームのようにHPやMP、筋力や魔力なんてものの数値が見れたりはしない。 そんな便利にはできていないらしい。

 各項目の解説をすると、レベルは本人の強さの指標、ジョブはその人が何のジョブに就いているかとそのジョブのレベル、スキルはどんなスキルを使えるか、ということを表している。 ジョブにもレベルがあり、ジョブレベルが10になり、条件を満たすと上位のジョブにクラスチェンジできる。 また、スキルにもレベルがあり、どの程度の経験を積んできたかを表している。 このスキルレベルが曲者で、これが高いと出力が上がったり、新しい技を使えるようになったりするのだが、レベルが全く同じでも使う人間によって威力に差が出る。 これは狙いとか収束率とかいういわゆるコツに当たるもの。 これを理解しているハンターは若い世代にはあまりいない。 目に見えやすい数値と出力ばかりを気にして腕を磨かないから大成しないのは当たり前だ。


 ま、落ちこぼれの俺が言うことじゃないから言わないけどな!



「工藤… はりきるのはいいことだけどな、あんまりやりすぎるなよ? どの程度の負傷をさせたのかとかこっちは報告書上げなきゃならん。」


「それってせんせーの都合だろ? 俺には関係ねーだろ。

 そんなことよりはやくやらせろよ。 偽物野郎が同じクラスってだけで気分悪ぃんだからよ!」


 あぁ、さっき俺を「偽物」って言ったのはこいつか。


 別にどうでもいいけどいい気分はしないよな。


 つーかなんで俺がサンドバッグにならないといけないんだ?


「あの、見学にしてもらえませんか? ちょっと体調悪いんで。」


「神薙、そういう我儘を言うな。 ハンターになればコンディションが悪いときでも戦闘をしないといけない場面は多い。 そういうときのための練習になるんだ。 認められんな。」


「そういうこった。 逃げようとすんなよ偽物くん?」


 こいつ教師の自覚あんのかよ…


 反撃してもめんどくさくなりそうだしほんとどうすっかな…





作者です

9/1まで毎日18時に最新話を更新しますので

ご期待に沿えるよう頑張ります!

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