第11話 今日のモーモン①




 とある日、モーモンと軽い稽古をしていると、


「師匠どうですか?」

「かなり腕を上げたなモーモン、俺が予想していたより凄い成長速度だぞ」

「ありがとうございます!」


 稽古と言っても組み手を行っていたのだがスピードをひたすら鍛えてきたモーモンの速度はかなりの物に仕上がっており、いつの間にやら高レベルな組み手をしていた。

 俺が少しでも本気を出してやったのだ、モーモンの実力はかなりのものになっただろう。


「褒め過ぎですよ師匠……」

「いやこれは本当のことだぞ? 今のモーモンはそこら辺の冒険者の中なら最強だろう」


 もぉぉ……照れちゃいますよ、と恥ずかしそうにしているモーモンの腕に触る。これはあくまで師匠として弟子の筋肉のつき方を確認してるだけだ。


「うん。硬過ぎない持久力のある良い筋肉だな」

「あ、ありがとうございます……」


 ふむ、さすがにここまでセクハラをしていたら耐性も出来てくるか。でもまだ少し恥じらいがあるからか目を背け頬を赤らめている所がポイント高いな。


 だがそれじゃ物足りない。なので、


「特にこの胸筋の付け根の筋肉とかかなりの物じゃないか?」

「く、クズーヤさん!? そ、そこむむむ胸……」

「んー? どうしたのー?」

「……い、いえなにも」


 なんの躊躇いもなく鎖骨の下の胸の部位のスタートラインの位置へ手を置き、筋肉を確認する様に軽く押してみる。

 

「モーモンここの筋肉は俺の故郷では”パイオツ筋”と言って、神聖な筋肉とされていたんだ」

「そ、そうなんですか?」


 嘘です。


「そしてこの胸を支えている下側の筋肉、ここが”パイシタ筋”だ」

「ぱ、ぱ、ぱ、パイシタ筋!!?」


 その恥ずかしがりながらも俺を信じて我慢して復唱するところ、大好きです。


「ふーむ、なかなかどうしてこんなに鍛えてるのにここの筋肉は柔らかいなモーモン」

「そ、そこは基本柔らかい場所なんじゃ……」

「んー? なんか言ったかー?」

「も、もぉぉ……」


 うん楽しい、これだよこれ。これがなきゃ人生つまらないよな。


「俺モーモンと会えて良かったぞ、モーモンは俺の想像をドンドン超えていってくれるからな」

「師匠……あ、あのぅ」

「ん? どうしたモーモン?」


 珍しく真剣な面持ちで声をかけた俺に、モーモンは冷静に言った。


「その……そんな格好良い顔で言われても……いつまで触っているんですか……?」

「おっとこれは失礼」


 格好良いとは嬉しいこと言ってくれる。でもモーモンがセクハラに少しずつ対応してきているのが悲しい……。







 別の日のこと。

 

 今日は久しぶりにオフの日、モーモンとは珍しく別行動をとり色々やっていた。

 といっても一人で何をしていたのか? それはシンプルにモーモンにこれから行うセクハラを考えていたのだ。

 正直ここのところモーモンが対応してきているところが面白くない俺は、簡単な依頼をこなしながら悩みに悩んでいた。


「それにしてもどうしたもんか……あ?」


 今後のことについて広場の椅子に座って考えていると、突然見覚えのある奴が現れ、俺の視線が釘付けになる。


「あれってモーモンか?」


 そう、少し離れたところにモーモンがいる。それも街の子供達と遊んでいるみたいだ。

 なるほどモーモンは子供達に人気のようだな。気のせいか男の子達の鼻の下が凄い伸びてる気がするが気のせいだろう。


「え……何してんだあれ……」


 モーモンは遊びが終わり子供達と別れた後に何を思ったのか広場の穴の開いた壁に胴だけ通すと、コチラから尻だけ見える状態で動かなくなった。

 恐る恐る近付いて声をかけてみる。


「も、モーモン? 何やってんだお前?」

「その声はクズーヤさん!?」

「あ、うんなるほど」


 もう分かった。モーモンはおそらく助けを求めている。だって俺を呼ぶ声が震えていて今すぐにでも泣きそうな声をしているからだ。


 とりあえず尻に向かって話しかける。


「どうしたんだよモーモン早く出てこいって」

「そ、それが……」

「ん?」

「抜けなくなってしまって」

「お前マジか」


 目の前の尻が悲しそうに言っている。凄いなモーモンお前の天然加減が天才過ぎるわ。


「それじゃ押してみるからな?」

「は、はいぃ……お願いしますぅ……」

「じゃあ、よいしょ」

「ちょちょちょ!! クズーヤさんどこ触ってるんですか!!?」

「え、どこって顔だけど」

「顔ってこっちですけど!?」


 え、あ、しまった。もう俺からしたら震え焦っている尻と会話をしてたからコッチが顔かと思ってた。


「なに変なこと言ってるんですか!?」

「待ってくれよ。尻触ってそれならどこ触ってやれって言うんだ? 太ももは?」

「太ももも駄目です……恥ずかしいです……」

「どこ触れって言うんじゃおい。尻に頬ずりしてやろうか」

「も、もぉぉ……」


 いかんいかんそれじゃ変態じゃないか(今更)

 でもどうしたものか、触っちゃいけないとなると、


「じゃあモーモン前の方に回るから待っててくれ、そうすれば腕から引っ張れるだろ」

「は、はいぃ……そうしてもらえると嬉しいですぅ……」

「じゃあ待ってろ」


 仕方あるまい、とりあえず前に行くか。


 その前に少しやりたいことがあるので、その後にな。



 モーモンをその場に残してしばらく、俺はやる事を終えてモーモンの顔の方へやって来た。


「悪いなモーモン待たせたな」

「クズーヤさん遅かったですね? どうしたんですか?」

「いや実は用事があってな、そんなことよりモーモン君はお腹空いてるかね?」

「え、いきなりですね。そりゃあ子供達とご飯食べるのも忘れて遊んでいたのでお腹空いてます」


 ふむふむ、そうかそうか。


「そんなモーモンに食べ物を買ってきたぞ」

「え、今ですか?」


 今です。そんな困った顔しないでね。

 といっても俺のゲスな思考が働いた結果の食べ物な訳なんだけどな。


「さっき市場で売ってたんだけど、なんでも南国にある二つの食べ物を合体させたデザートらしいんだよ」

「南国のデザートですか? それは一体……」

「そうそのデザートとは!!」


 これだ、と壁にハマっているモーモンに串に刺さったデザートを見せつけ高らかに告げた。


「”チョコバナナ”だ!!!」

「ちょこばなな??」

「はい、食べてみて」

「この状況でですか!?」


 ほら! チョコは早く食べないと溶けるらしいぞ!! 早く早く!!


「わ、分かりました……た、食べます……」


 チョコバナナを近付けると、モーモン未知の食べ物へと顔を寄せて恐る恐る口に咥えた。

 その行動に心臓の鼓動が止まらない俺は言葉を付け足す。


「なんでも初めは噛まないで口内でチョコを溶かして食べるらしいぞ?」

「ほ、ほうなんてふは??」


 その大きなデザートを咥えながら喋るモーモンはまるでその食べ物の食べ方を分かっているのか、ぎこちなく、だがそれでいて確実にチョコバナナを咥えながら頭をゆっくり上下に動かしだした。


「……ん……ん」


 艶かしい効果音が辺りへ響き、俺自身の顔が熱くなるのを感じた。


「……モーモン?」

「……ん?」


 上目遣いでコチラを見つめるモーモン____あ、これは駄目だ。あかんやつだ。


「そーい!!」


 瞬間、俺の拳がモーモンのハマる穴の横に衝突し、壁が広範囲に吹き飛んだ。

 その結果脱出できたモーモンは驚きながらもチョコバナナを食べている。


「ありがほうごはいまふ! ひひょう!!」


 今だに咥えながら喋るモーモンに俺は声を荒げる。


「いつまで咥えてんだ!! そんな変な食べ方するんじゃありません!! 恥ずかしいでしょうが!!」

「も、もぉぉ!?」


 興奮が、止まりません。



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