第10話 えちえちな腕立て伏せ
◆
あのスライム粘液事件から一ヶ月、俺とモーモンは街から離れた場所で依頼をこなしていた。
「もぉぉ!!!」
石像型の魔物ゴーレムにハンマーを振り落とし一撃で核ごと硬い岩の身体を砕く。さらに俺が言う前に背後へと近づいて来た大きな蜂型の魔物ニードルビーの気配を察知し、重量のあるハンマーを持ちながら踊る様に距離をとるとすぐに叩き潰した。
「おー早いな」
「はい師匠ありがとうございます!」
周りには魔物の亡骸が置かれ、その真ん中に佇むモーモンは僅かな返り血しか浴びていない。
しかも倒した魔物達は一般冒険者ではかなり苦戦する相手だ。この少しの間でかなりの成長をしたと見える。
「いえ!これも師匠のおかげです! 今までは一撃一撃に気を取られてしまってたんですが、今では回避や身のこなし自体が良くなったのが自分でも分かります!」
「にして成長速度が恐ろしいけどな、元々素質があったんだろう」
「もぉぉ……て、照れちゃいます」
「事実だぞ? それに前にも言ったけどモーモンは火力も途轍もないが身体能力も素晴らしいからな正直パーティ組むのはオススメしない」
何故ですか? と聞き返して来たモーモンにはっきり告げる。
「他の奴らがモーモンの足手まといになるからな」
「も、もぉぉ……そんなことは……」
「いやもっと自信を持てよモーモンはかなり強くなったぞ。昇級でも目指してみるか?」
「そ、ソロでですか?」
「モーモンならソロでB級くらい夢じゃないだろう」
褒め過ぎですよって? いやこれマジな話だからな?
実際出来ないことじゃないだろう。もうその辺の一般冒険者じゃモーモンには敵わないはずだ。
本当に昇級させてみるか、これを機にモーモンに自信を持って欲しいしな。
さてそんなことより、
「そろそろ始めるかモーモン」
俺から放たれた言葉を聞くとモーモンは一瞬身体を震わす。そしてトロンとした目で頬を赤く染めて言った。
「わ、分かりました師匠♡」
●
見晴らしの良い平野に向かい俺達は準備を始める。準備といってもやる事はシンプルだ。
俺がモーモンの上に乗る。それだけなのだから、
「も、もぉぉぉ♡」
「どうしたモーモン?」
「い、いえ何でもありません。つい声が出てしまって」
「そうか? じゃあ行くぞ」
”一”
「もん♡」
”二”
「もん♡」
”三”
「もぉん♡」
「……」
はてさて変な勘違いをしている奴がいるかもしれないが、これは決して如何わしい行為は行なっていない。俺達がしているのはただの腕立て伏せなのだ。
そう、俺がモーモンの上に乗って行うただ腕立て伏せというだけなのである。
「ほらモーモン震えているぞ! ”四”」
「も、もぉん♡」
「どうしたモーモン! まだまだこれからだぞ”五”」
回数の宣言と共にモーモンが腕を曲げる。だがその手はプルプルと震えており、始まったばかりだというのに既に限界を感じさせる。
ここ最近は修行という理由をつけてこうやって色々なセクハラをしているわけだが、このモーモンのマゾ度も確実に上がって来ていた。
しばらく腕立て伏せ続けていると、
「ほらモーモン頑張れ! ”二百三”」
「もぉぉぉん♡」
数はこなして来たが息を荒くしているモーモンの顔は真っ赤になっており、とても苦しそうには見えない。寧ろ逆、こうなってくると俺も楽しくなってくる。
「どうしたモーモンこんなもんか!? この胸に付いてる筋肉は飾りか!?」
「もぉぉ!?」
背に座った状態でぶら下がっている双丘を踵で軽く蹴ると、モーモンの驚き声が響く。
「く、く、クズーヤさんどこ触ってるんですかぁぁ!!?」
「今は修行中だぞ! 師匠と呼べ師匠と!!」
「し、師匠ぉぉぉ!!」
「はい”二百三”!」
「も、もぉぉぉ!!」
震える声で叫ぶモーモン、ふむなかなかやるな。
____なら、
「ほらモーモン前の最高記録は五百超えだったぞ!! もっと頑張れ!」
勢い良く手を振り上げてモーモンの尻を引っ叩いた。
「んもぉぉぉぉぉ!!!」
色っぽさのある叫びの後、モーモンは上に乗った俺の事を気にする事なく崩れ落ちる。
「く、クズーヤさん♡」
「……」
今更ながら少しやり過ぎたかもしれない。……まあでもあれだ。
「楽しいから良いか」
結果、モーモンの今回の記録は今までで一番少なかった。
「これは罰が必要だな」
「も、もぉぉ♡」
相変わらず俺とモーモンは絶好調である。
●
「そういえばモーモンにプレゼントがあるんだよ」
腕立て伏せが終わり、しばらくしてからモーモンに声をかけた。不思議そうにこちらを向く彼女に一つの小箱を手渡す。
「師匠これは?」
「開けてみてくれ」
「? はい分かりました」
言われた通りに小箱を開けたモーモンはその中身を見ると、
「こ、これはピアスですか?」
「そうだぞ」
「凄く綺麗です……」
「気に入ってもらえたなら良かった。何でも俊敏性と火力が上がるらしいからモーモンと相性良いと思うんだよ」
「あ、そういう……」
ん? 何かモーモンのテンションが明らかに下がった気がしたような?
そんな事を考えていると、あのぅ、とモーモンが話しかけて来た。
「どうしたモーモン?」
「もし良かったら何ですけど師匠が付けてくれませんか?」
「俺が?」
構わないけど、ピアスを受け取りモーモンの耳に付けると、モーモンは自分の耳を優しく触っている。
なんだ? そんなに嬉しいのかな?
「……ありがとうございますクズーヤさん、これ大切にしますね♡」
「お、おう」
なんだろう。いつものモーモンと違って凄く綺麗に見えて、きっとピアスのせいなのかもしれないが、とても大人っぽく感じる。……って、
「いや師匠な?」
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