第4話 気になる牛娘はM?




「クズーヤさん質問していいですか?」


 こちらを伺うよう律儀に手を挙げ、了承を得るモーモンに俺は応え聞いてみる。


「クズーヤさんって強い冒険者さんなんですよね? どのぐらいとか聞いてみて良いですか?」


 なんだそんなことか、と思わず言葉を漏らす。


「モーモンは冒険者になる時に一通りの説明は聞いたか?」

「はい聞きました!」

「冒険者のクラスについてもか?」


 俺の質問に対し、さらに元気よく返事をするモーモンは説明を始める。


「冒険者は主に四種類に分かれると言われました。世界にいる冒険者の殆どが”一般冒険者”、そこから”C級冒険者”、”B級冒険者”、B級までが単独でなれる限界なんですよね?」

「そうだな殆んどいないな。大体はパーティでC級やB級だしな」

「その上に物凄く強い”A級冒険者”、例外中の例外が”S級冒険者”ですよね? そこまでの存在だと普通に生きてて会えることなんてなかなか無いですよ。数が少ないですし」

「お、そうだな」


 ごめんなモーモン、元A級でS級冒険者の俺が目の前いるんだわ。しかも単独で……まあでも俺の情報は漏れないようギルドに頼んであるから知らなくて仕方ないけど。目立つのも困るしな。


「それでクズーヤさんは……?」

「あ、単独C級冒険者です」


 調べればすぐ分かってしまうが、モーモンが初心者なのをいいことに俺は盛大な嘘をついた。



 セクハラをしてしばらく平原を歩いていた俺達は町の近くにある森の入り口までやってきた。

 モーモンはその森を見ると、今思い出したかの様な声を出す。


「あ、私この森前のパーティで来ました。ここが目的の場所ですか?」

「そうだ。モーモンはまだ冒険者になってから日が浅いよな? 前のパーティからここの話は聞いたか?」

「話?」


 いえ特には、と返すモーモン。それもそうか、彼らは明らかに異種族蔑視をしていた。いつの世も自分とは違う者をよく想わない奴は沢山いるから仕方ないと言えば仕方ない事かもしれない。

 ま、俺からしたら性別も種族も関係なく、エロくて好みであればなんでも良いのだが。


 因みにジョニーだったらここで、


『カァー!! さすがクズーヤだ! そのクズ加減痺れるぜぇ!!!』


 と言うだろう。よせやい照れる。


 おっと想像の中で照れてないで話を戻すか。


「この森はいろんな魔物がいてな、あの町にある大体の依頼はこの森でなんとかなるんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ、薬草とかも簡単に集まるぞ。薬の材料だったり木の実とか、ただその分危険な魔物もいるから注意が必要だけどな」

「モォォ……私そんなところに何日もいたんですね……」

「大方、誘った奴等は初心者で異種族のモーモンに魔物を任せて逃げようとしたんだろ。冒険者同士の争いは罪だから魔物に襲わせる”初心者狩り”ってやつだったかもな」


 そこまで言うとモーモンは顔を青くして「モォォ……」と鳴き声を絞り出す。


「でもあれだろ。モーモンが強いから計画が変わったってことだろ」


 流石に恐怖心を覚えたのだろう。無理もない冒険者になって間もないのにそんな恐ろしいことに巻き込まれていたら、俺が思うに結局一番怖いのは魔物よりも人間なのだ。


「なんでなんでしょう……なんで異種族だからってそんな酷い目に遭わないといけないんでしょうか……。今にして思えば皆さん私が戦うと逃げようとしていたような……」

「確定だな」

「モ、モォ……」

「この界隈じゃ稀によくあるから気にすんな」

「稀によくあるって……変な言葉作らないでくださいよクズーヤさん……」


 明らかに凹んではいるが、言い返せる余裕があるなら大したもんだ。大丈夫だろう。


「さてと! じゃあ本題だけど今日からモーモンを悪戯する鍛えるわけなんだが! これから俺のことは師匠と呼ぶように!」

「はい師匠」

「ん、良い返事だ! それよりモーモンはなんでハンマーを使ってるんだ? なんか理由とかあるのか?」

「これですか? このハンマーは故郷を出る時に親がくれたんです。私昔から力が強くて普通の武器だと壊れちゃうので……」


 なるほど、確かに種族的なものも関係するだろうがモーモン自体かなりガッシリとした体格だ。百八十は身長のある俺が僅かに見上げるくらいとは女性として結構大きい。

 ただなんだろうか、こう大きな女性から見下ろされる感覚……悪くない。しかもただ見下ろされるわけではなく、モーモンのこの困り眉でしかも常時不安そうな表情で見てくるのだ。それがとんでもなく堪らない。

 

 てか真面目な話、自分より背の大きな人を見るのも珍しいのにそれが女性ときたもんだ。

 俺はその貴重な瞬間を噛み締めながらモーモンに伝える。


「ハンマー構えてみてくれるか?」


 こうですか、とモーモンがハンマーを構えると武器を握る手にソッと触れる。


「グリップの握りが硬過ぎだ。もっと緩めろ」

「は、はい!」

「腕力だけで振ると動きが悪くなるから気をつけろ。身体全体の力を使って踊る様に振ると良いぞ。魔物にも知能からな単純な動きは読まれる」

「な、なるほど! 勉強になります!」


 指示した直後から行動に移している。モーモンは飲み込みが早いな。

 俺はそのまま構えを取っているモーモンの背後に立ち指示を再開する。


「足を広げ過ぎだ。それに重心は僅かに前に傾けとけ」

「はい!」

「脇も締め過ぎだな」

「は、はい!」


 モーモンの足に俺自身の足を当てて位置を修正し、二の腕をガッシリ掴み調整、そして____


「全体的に力み過ぎだ!! もっとリラックスだ!!」

「モ、モォォォ!!? ク、クズーヤさん!? お尻お尻!!!」


 突如顔を真っ赤にして狼狽えるモーモン。

 どうしたのだろう? 何があったのか分からないが俺は手を休める事なく、


 ____モーモンの立派なお尻を両手で鷲掴み揉みまくる。


「俺のことは師匠と呼ぶ様に言っただろう!」

「え、や、あの師匠!? お尻! なんでお尻触ってるんですかぁ!?」

「いついかなる時も油断は死を招く! かもしれない運転だモーモン! もし”魔物の姑息な罠で胸やお尻を揉みしばかれる”かもしれない!!」

「そんな魔物いるんですかぁぁ!?」


 いるわけないだろ(真顔)

 だがここで止めるわけにはいかない。これもモーモンを想うが為、断じて俺が触りたいから触っているわけじゃない。これも訓練なのだ。


「むむ! まだ力み過ぎだぞモーモン!!」


 そうして訓練で彼女の気が緩んだのを見逃さず、俺がお尻を引っ叩いた瞬間____




「モォォォン♡」




 お尻を叩いた炸裂音を掻き消すようにモーモンが色っぽい鳴き声を漏らした。木々を揺さぶり森に反響した声を聞き、俺はゆっくり尻から手を離す。


「……」

「ク、クズーヤさん?」

「じゃあモーモン今俺が言ったことを意識して魔物の相手をしてみようか」

「は、はい。分かりました! 頑張ります!」


 じゃあ行くか、と森の中へと進んで行く。

 俺の後ろでグリップの握りを確認してるモーモンを見てある事に気付いた。

 結構力を入れて引っ叩いたのにあんなエロい声……さてはコイツ、




『マゾか?』


 ……とりあえずトイレ行こう……




 怪しげな笑みを浮かべるクズーヤをモーモンはまだ知らない。



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