第3話 スクワット=理想郷




「モォー! まさかクズーヤさんにパーティに誘ってもらえるなんて助かりました! どうすればいいのか困ってたので」

「いや俺こそモーモンと組めて嬉しいぞ。それに困った時はお互い様だ」

「ありがとうございます。クズーヤさんは優しいですね……前のパーティでは異種族である事を凄く色々言われたので……クズーヤさんは気にしないんですか?」


 その言葉を聞いて少し考えてみるが、


「いやそういうのは無いな。元から偏見なんてないが、昔馴染みだったり知り合いとかで異種族もいるから気にしたことない」


 即答である。

 今にして思えば、元から異種族が身近にいたことが多かったのでなんとも思ってなかったのだ。灯台下暗しとはまさにこの事。


「皆がクズーヤさんみたいなら良かったのに……」

「……そ、それな」


 いや世界に俺みたいなクズしかいなかったら世界滅____ばないな。逆に人口増加しそう。何がとは言わないがさすが俺。


「あっお話ばかりですいません。依頼中だから周りを警戒しないと駄目ですよね」

「その考えは良いぞ。初心者や中級者で忘れがちになるのが”周囲の警戒”だからな。強力な魔物がいない場所でも万が一を考えなきゃな」

「はい”師匠”!」

「え? ……お、おう」


 何故師匠呼び? と思考が僅かに停止したが少し前の記憶を思い出すことにした。それはモーモンをパーティに誘った時に遡る。



「私なんかで良いんですか? クズーヤさんの迷惑になりませんか?」

「大丈夫だよ心配すんな」


 困り眉が可愛らしいモーモンは心配そうな顔をしているが、気にせず受付嬢さんに話を振る。


「と言う事だから受付嬢さん俺しばらくこのモーモンと組むことにしたから」

「つーん」

「えっと受付嬢さん? どうかしたのか?」

「つーん」


 あざといなこの人。ふむふむ反応からして俺に好意を抱いてくれている受付嬢さん的には、モーモンに可愛いと言ってる俺を見て拗ねた感じか……なるほど把握した。

 下心なんて無いのに全く信用がないなぁ(嘘)


「なあ聞いてくれ受付嬢さん」

「……なんですか?」

「……受付嬢さん聞いて欲しいんだけど」


 はいなんでしょう、とまるで彼氏の言い訳を聞く彼女的態度で耳を傾けてくれたので、受付嬢さんに近付き小声で語りかける。


「まだ皆には内緒だが俺ってS級になるわけだろ?」

「……そうですね」

「だからさ弟子を育てようと思うんだよ」

「弟子ですか?」

「あぁ、S級パーティと違ってソロでS級になる俺なら集中して一人を育てられるだろ? 見立てではモーモンはかなりの素質があると思うんだよ」


 倒してきたであろう素材を見ていると、やはり決め手になったであろう攻撃が打撃しかない。他の新人冒険者がどれだけ弱かったのか。いや、どれだけモーモンが強いのか。

 それを受付嬢さんもよく分かっているらしく、


「確かに……十日程でこれは凄いですよね。クズーヤさんの言うことも頷けます」

「だろ?」

「分かりました。ギルマスにクズーヤさんとモーモンさんの師弟関係を報告しておきますね。他の冒険者の方にはどうしますか?」

「下手に言わなくていい」


 嘘話が結構進んでいるが、とりあえずまあ良いだろう。これもモーモンの好感度を上げる為だ。




 以上____回想。



 と、まあこんな事があって俺達は師弟関係になったわけだ。


「クズーヤさんがそんな強い冒険者だったとは! さすが私の師匠です!」

「お、おう。そうだろ?」


 なんかこう、純粋無垢な子供に嘘ついてるみたいで罪悪感が____あ、そんなの無いや。


「さて、じゃあ依頼をやる前にどのくらい動けるか調べるとするか」

「え、こんな草原でですか? 魔物とかは……」

「俺が見張っとくから大丈夫」


 なら安全ですね、と軽く切り替えるモーモン。この短期間で信頼し過ぎでは?


「クズーヤさん! クズーヤさん! まずは何をやりましょうか!!」

「え? お、そうだな。まずは身体検査だ! 手を見せてくれ!」

「手ですか?」

「手袋は外してくれよ? 筋肉のつき方とか色々見たいからさ」


 あっさり納得して手袋を外しコチラに手を見せてくた。それに俺は躊躇なく触れる。


「おー柔らかいな。筋肉はあるが弾力の方が強い。それだけの巨大なハンマー持ってるのに面白いな」

「じゅ……獣人族でも牛型は特に力が付きやすいみたいですよ……?」


 なるほど、と反応はしているが人間族の女性とは違う柔らかさを楽しんでいた。やはりボディタッチは親密度を高める為には重要だろう。

 さて次は……


「モーモン? 足の装備も外してもらって良いか?」

「え……足も見るんですか?」

「身体検査なんだから当たり前だろ? 足の状態も見なくちゃな」

「モォォ……わ、分かりましたぁ……」


 モーモンは俺の言う事を聞くと、足の重装備を外した。草原に金属の鎧が置かれると同時に俺は目を見開いた。


「う、嘘だろ……?」


 俺としたことが見落としていたとは、鎧から出てきたそれはあまりにも巨大であった。

 悪い意味ではない。寧ろ逆だ。それは男子の心を途轍もなく刺激してしまう……そんな危険な代物だ。

 

 基本、鎧などの重装備を着ける際は下に薄着などを着る事が普通だ。そりゃ十人十色、常識とまではいかないが大体の者はそうする。

 

 しかしモーモンは違う。

 モーモンは素足で鎧を着けていたのだ。そしてその重装備を外した先には立派な太ももがあった。

 見るからにムチムチしている。存在がもうエロいのだが? てかホットパンツが最高に似合い過ぎだろ。

 

「モォー? どうかしました?」

「あ、いやなんでもない。どれ、あそこに丁度よい岩があるからあそこに座ろう」


 手を引き岩へと案内し、モーモンは言われた通り岩に座ると、


「なんですかこの岩……凄く座りやすいです!」

「自然の力って凄いよなぁ」


 安心してください。怪我をしないように先程丁寧に加工済みです(コッソリ

 ボディタッチの為ならばと、話をしているうちに斬り出しておいた。この為に冒険者として技術を磨いできたのである。


「じゃあ早速触るか」

「は、はい……どうぞ」


 モーモンの許可を得たので遠慮なく触れる。

 まずは足先____と思ったが我慢出来ず太ももを揉みしだく。

 凄い……指が沈んでいく。なんという弾力だ……一生揉んでられる。

 それ程に最高な太もも。これこそ至高と言えるだろう。


「モ、モォォォ♡ クズーヤさん恥ずかしいですよぉ……♡」

「……悪い。つい手が勝手に」


 モーモンからの声が聞こえてなければ一生揉んでいたかもしれない。危なかった。

 俺胸派だったけどモーモンのなら太もも派になっても____って落ち着け俺、何新たな悟りを見出そうとしているのか。


「クズーヤさん……? もう良いですか?」

「へ? あ、あぁ……ありがとな」

「じゃあもう鎧着て良いですか?」

「いやそれはまだだ」


 即答である。

 

「まだやるんですか?」

「大丈夫、次で最後だから」


 最後ですか? とモーモンはチャーミングな困り眉でコチラに向けて首を傾げる。

 はい可愛い。


「俺は今からここに仰向けで寝っ転がるから」

「? はい」

「モーモンは俺を跨いだまま立ってくれ」

「え! 跨ぐって……」  

「あーいやらしい意味じゃない。ただ今から俺が下にいる状態でスクワットをして欲しいんだよ。本当それだけ」

「スクワットですか!!? 恥ずかしいですよ!!」

「あーいやらしい意味じゃない。これは身体検査の一環なんだよ。足の何処に力が入っているか、をな」

「……本当ですか?」

「あーいやらしい意味じゃない。ハンマー使いは足腰が仕上がってないといけないからな。その確認だ」

「……分かりました。が、頑張ります……」


 モーモンが両手を首の後ろで組み、ガニ股気味の態勢になり、俺はその真ん中で下からホットパンツと太ももを眺める形になっていた。

 もう一度言う、下から下半身を見れる姿勢、なるほどこれが大地の目線……最高か?


「じゃ、じゃあ行きますね?」

「おう! やってくれ!」

「急にテンション上がりましたねクズーヤさん……まあいいです始めます」


 ____”一”


 数を数えると同時にモーモンが足を少し曲げ腰を下ろす。迫り来る太もも、ホットパンツという少ない布面積から見える新たな肌色の景色。


 ____”二”


 元の姿勢に戻るも二回目、またも理想郷が見え隠れする。この光景が最高の瞬間……


____”三”、”四”、”五”


 永遠と想える時間の中で、十を数え終わる頃にモーモンは俺から離れ、耳まで真っ赤になって慌てて装備を着け始める。

 

 俺は放心したまま草原で寝っ転がり、目尻から小さな一雫を流す。

 ジョニーの言っていた通りだった。


「全く……異種族って最高過ぎんだろ……」



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