エピローグ(裏)、滑り落ちていった幸せ(光矢愛視点)
「えへへ」
勇気くんは笑った。
「全く勇気は」
さくらも柔らかく笑う。
「朝ごはんできたから、早く支度してきてね!」
私は、勇気くんのあどけない、精神が幼くなってしまったが故の無垢な笑みや、さくらの胸元から覗く火傷痕から思わず目を逸らし、部屋から逃げる。
私のミスで、二人が死にかけ、そして今も治療中である。
そんな事実を改めて再認識し、心が痛む。
私はきちんと疑うべきだった。
ダンジョンは、誰かの目的が関わっているのではないのか?と。
そもそも良く分からないけれどダンジョン内で生配信が出来ることを不思議に思うべきだったし、ジョブに関しても誰かの思惑を疑うべきだった。
そうすれば、障壁を作ろうとした時に妨害をされても、対策が出来たはずだ。
私がミスをしなければ、さくらは魔法を自分に打ち込む必要もなかったし、勇気くんもあそこまで力を引き出す必要がなかった。
……ジョブのレベルが上がると、地球の法則に反して、出来ることが増えていく。
徐々に徐々に、あちら側の世界、モンスター側に近づいていく。
最後の戦いで、モンスターに一気に近づいていった勇気くんは、ダンジョンが閉じられ、モンスターの存在がなかったことにされたと同時に、自分自身の大半を失った。
さくらには、「あまりにゲームのようだと私が気づくべきだった」とは言われた。
でも、流石の私も勇者が居て、魔王を倒すみたいなゲームのシナリオは聞いたことが有る。
そして、その勇者が負けたときにはゲームオーバー、世界の終焉が待っている ということも。
勇者が居なければ、世界は終焉に近づいて行っいたとしても、はっきりとした終わりはないだろう。
でも、希望の象徴である勇者が負けたとき、それはチェックメイトだ。
私に神託を下してきた存在が、勇者に魔王を討伐させようとしているのではなく、魔王に勇者を討伐させようとしているかもしれないと考えるべきだった。
ダンジョンアイドルズ!の危機を生配信で救ったらバズりました。正体をばらされたくなければパーティーに入れと脅迫されました。完結済み 魚綱 @sakanatuna
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