エピローグ、それでも確かに掴んだ幸せ(光矢愛視点)

魔王討伐を達成してすぐ、ダンジョンが消え、人々はダンジョンから解放された。

それと同時に私達はジョブを失い、普通の人間に戻った。

そして今、一つの家で一緒に暮らしている。





朝食ができたので、扉に「ゆうき」と書かれたプレートがある扉の前まで行き、ノックする。

コンコンコン。


いっつも返事はないが、それでも一応しているし、それでちょっと待っている。

「勇気くん、入るよ」


返事はやっぱりなかったので、一声かけて扉を開け、ベッドまで行く。

ん?どこか違和感がある。

確かに勇気くんは寝るとき布団を被る癖があるようだが、それでも足なり腕なり頭頂部なりを出していることがほとんどだ。


そしてこのような偽造がされている時は――経験則から来る予感のまま、布団を捲る。

布団の中には、人の代わりに段ボール箱が入っていた。


……遥か、さくらか、だ。さくらの方がやることは多いが、しれっと遥もやる。


取り敢えず遥の部屋から。

どちらも声かけたら直ぐ起きる遥の部屋の方が楽なので。

……勇気くんの寝起きの良さが違うのは、本人の行いのせいだろう。


勇気くんいわく、

「さくらちゃんは、一緒に寝てて安心するけど、遥ちゃんは時々息が荒い時があってちょっと怖い」

だそうだ。

友人のそんな性癖知りたくなかった。


コンコンコン。一応ノックをしてちょっと待つ。

「あぁ、今起きる」


そういえば、遥が寝ぼけたところを見たこと無いなと思う。

「ちなみに、勇気くん居る?」


「……その言葉から推測するに、さくらが連れ込んだようだな」


「あんまり連れ込むなんて表現使わないでよ」

ちょっとげんなりしながら言う。

私が耳年増なのかもしれないが、連れ込むという表現には少しR18なイメージが有る。


「着替えをするからちょっと待ってくれ」

まぁ遥なら二度寝の心配もないので、さくらの部屋に向かう。



「さくら」と書かれたプレートの前で、意味もなく、少し深呼吸。

そしてノック。コンコンコン。


やっぱり返事はない。


「さくら、勇気くん、入るよ」

一応一言断って、扉を開ける。


中には、まぁ予想通りの光景が広がっていた。


二人で、一つのちょっとおっきめの枕に頭を載せ、さくらが勇気くんを抱きしめて寝ていた。ゆるいさくらのパジャマから胸元が少し覗き、思わず顔をしかめる。


とりあえず、カーテンを開ける。

さんさんと照る朝日が起こす助けをしてくれ、

「「んぅ」」


と二人して軽く呻いた。

「朝だよ、起きて!」


「……あと5分」

さくらがそう言ったが、無視して勇気くんの体に絡めていた手を丁寧に解く。


そして勇気くんを軽く揺する。

「ん……あい、ちゃん?」


勇気くんは寝ぼけてとろんとした目のまま、私を見つめる。


「どうした……の?」

少しは意識が覚醒してきたらしい。


「勇気くん、朝だよ。起きて」


ちょっと勇気くんは悩んだ後、両腕をこちらに差し出した。

「おこしてぇ……」


こんなに甘えん坊だったんだろうか。

そう思いながら、手を取り起こすと、そのまま私に抱きついてきた。


「きょうはみんなでいっしょにねたい」

そして勇気くんは柔らかく微笑む。


「朝なのにもう寝るときのことを考えてるの?」


「えへへ」

勇気くんは笑った。








※作者からのコメント:

これにて完結です。ここまで呼んでくださり誠に感謝です!

最新話を出した時に、0pvとならない、応援してくれる人が居るということが、とても完結の助けになりました。


正直まともに説明していない伏線だらけですが、まともに回収するには文章力が足らんかった……

最初はこの話を伏線説明回にしようとも思いましたが、最後はハッピーエンドっぽく終わろうと思い、こうなりました。


このお話を少しでも楽しんでいただけたならば幸いです!







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