鬼崎勇気の不安
コラボに際して、大した対策は出来なかった。
10日ほどの準備期間で出来たことは、ダンジョンに潜りちょっとでもレベルを上げることと、オンラインでのホトップスさんたちとの打ち合わせくらいだった。
打ち合わせとは言っても、あちら側にはどこかこちらを軽視するような姿勢や発言、例えば会議の開始時間に遅れる、会議中の離席、セクハラ発言等々があり、建設的な議論は中々行えなかった。
一応、愛さんが対策として政府の官僚さんも同席させ、少しでもまともな話し合いにしようとしたが、官僚さんはホトップスに同意ばかりし、あちらの要求がかなり通ってしまった。
……もしかしたら愛さん達は途中で、firesのように和気藹々とした雰囲気で終わるコラボを諦めていたかもしれない。
結局のところ、愛さんたち、特に愛さんやさくらさんは僕が力を振るうことに好意的であり、熱心に交渉を行うことも、あまり力を見せたくないという僕の心情を尊重したものだ。
そして、あまり力を見せたくないという心情も僕でさえ理論だった説明がうまく出来ないのだ。なんというか、予感というか悪寒だろうか。
ダンジョンについて僕たちは知らない。
では、知らないことを知らないことは?存在を認知できていない何かはあるのだろうか。
いや、おかしい。最近緊張であまり眠れなかったからだろう。思考が変な方向に行っている。
……実際、僕とホトップスさんたちの模擬戦はどうなるんだろうか。
相手の使用武器は前回と同じようにハリセン。
そして、1対多。
お題目は、スタンピードでダンジョンの外に出たユニークモンスターの討伐訓練。
僕が露骨な悪で、あちら側が善の役回りだ。
武器がハリセン、なおかつ使う魔法は殺傷しないように加減されるだろうから、ピンチを感じる間もなく、判定負けなども十分ありそうだ。
いや、別に僕の模擬戦は良いだろう。
負けるにしても、死につながる事故はそうそう起こらない。
死につながるような攻撃が来たのならば、危険を感じて勇者のスキルが発動するだろう。
問題は愛さんたちの模擬戦だ。
事故が起こらないと良いのだけれど……
作者からのコメント:
次話から最終章:ホトップス、勇者、×× です。ここまでこれたのは皆様の温かい応援のお陰です。
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