第12話 コラボ配信
生配信がメインの沙里奈だが、コラボとなれば予想外の展開を考慮して編集して動画のアップをする形式を取った。
「はぁ、まさかお兄ちゃんとコラボ動画を撮る羽目になるとは」
「おい。カメラ回っているんだからそう言う愚痴はカメラの外だけにしてくれよ」
「別に後で編集すればいいじゃない」
「編集するのだって大変なんだからあんまり負担を掛けるなよ」
「ふーん。お兄ちゃんってどうも紫織ちゃんに優しいのね。もしかして好きなの?」
「バカ言え。こんなおっさんが二十歳を好きになるか。仕事仲間としてだな……」
「あ、お兄ちゃん。モンスター来ているよ」
「お、おう」
二人プレイをしているが、俺が基本、敵を倒していき沙里奈は俺の後ろに隠れるスタイルだった。
「お前も敵を倒せよ」
「えー面倒」
「なんの為の二人プレーだ」
すると紫織ちゃんはスケッチブックに書いた文字を俺に見せる。
『兄妹エピソードを喋って』である。
それを見た俺と沙里奈は少し浮かない表情をして頷いた。
「実は私たち。兄妹とは言っても実の兄妹ではないんです。再婚相手の連れ子同士なのよね」
「そ、そうだな。あれは確か俺が当時二十三そこらで沙里奈がまだ小学六年生だったような」
「あー懐かしい。このおっさんが私のお兄ちゃん? って当時はげんなりしていたっけ」
「え? そうなの?」
思わぬ本音に俺は手を止めてしまった。
「あ! お兄ちゃん。前、前!」
「やべ!」
寸前のところで俺はモンスターの攻撃を交わす。
「それから数年の共同生活をしたけど、そこでお兄ちゃんは不幸な出来事が起きました。そう、とある事故で植物人間になってしまったのだ」
「うむ。植物人間になってから異……痛い!」
俺が発言しようとした瞬間、沙里奈は俺の足を強く踏んだ。
「バカ。それは言わんでいい」と沙里奈は小声で囁いた。
「まぁ、そんなこんなでようやく目覚めた俺はこうして妹の沙里奈と共に長い空白期間の末、再開を果たしたんだよな」
「えぇ、そうね。本当に世の中何が起こるか分かったものじゃないわね」
そこから特に話すことがなくなり、目の前のダンジョンに集中していた時である。再び紫織ちゃんからスケッチブックを見せつけた。
『尺が足りない。もう少し兄妹エピソード語れ』だった。
話題を振ったのは沙里奈である。
「そう言えばお兄ちゃん。再婚した当初に暮らしていた時より今のお兄ちゃんは明るくなったと思う」
「そうか? 以前とそんなの変わらないと思うけど」
「変わったよ。前はムスッとした感じだったけど、今は親しみやすいって感じ。私が可愛くなったからか?」
「まぁ、確かにあの時は子供だったからな。俺の守備範囲より少し低かったと言うか」
「そんな話はせんでいい」
沙里奈はツッコミを入れるようにぬいぐるみを俺に投げた。
「とまぁ、私の昔話は初めて触れて見たけど、皆さんどうでしたか? 気に入ってくれたら高評価とチャンネル登録をお願いします。そして今回コラボした兄のチャンネルは概要欄に貼って胃ますのでそちらも是非見に言ってくださいね! ではまた次回の配信をお楽しみに!」
沙里奈は配信を締めくくった。
「ふぅ。なんか変な冷や汗が出ちゃったよ」
配信を終えた沙里奈はホッと一息をつく。
「いや、沙里奈。まだ終わっていないぞ。ダンジョンはまだ攻略中だ」
「それはお兄ちゃんの配信でやってよ。私は今ので満足」
「なんだよ。勝手だなぁ」
ボス戦に差し掛かった直後である。
唐突の乱入者がボスに斬りかかった。
「あ、こいつまたかよ」
乱入者は以前、良いところ取りをした者と同じキャラである。
配信中ずっと後ろで付けられていた。
「え? 何、こいつ」
「パーティに入り込んで最後の最後でボスを倒してドロップ報酬を稼ぐプレイヤーだよ」
「聞いたことがある。私は被害にあったとこないけど、コメント欄でそう言うのがあるから気を付けてって注意があった」
「最近、俺がプレーするとよく見かけるんだよ。注意しているんだけど、こいつは蜘蛛の糸を掻い潜るように潜入が上手い」
「どうするの?」
「今度ばかりは好き勝手にさせておけない。沙里奈、手伝ってくれ」
俺はコントロールを強く握りこんだ。
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