第13話 アクト
謎のプレイヤーの職業は魔術師である。
自分の姿を消したり、魔法攻撃で巧みな技を使いトリッキーな用途が特徴だ。ただ、こいつは普通の魔術師ではなく剣術士と兼用という珍しい特性を持っているため、攻撃に関してはかなり幅が広い。
謎のプレイヤー名はアクトであった。
「私は何をすればいいの?」
「結界を張ってくれ。そうすれば敵の攻撃は勿論、味方からの攻撃も出来なくなる」
「了解!」
沙里奈の結界魔法により互いの攻撃を防いだ。だが、これには時間制限があるのが付きものだ。
俺は謎のプレイヤーに問いかけた。
「何でこんなことをする? チーム戦をしたいなら最初から組んで攻略すればいいだろ」
するとアクトは俺の問いに返事をした。
「仲間なんていらないんだよ。どうせ利用するだけの仲じゃないか。だったら最初から利用するつもりで入り込んだ方が効率いい」
「そんな勝手許されるかよ。今すぐその便乗するような行為はやめろ」
「嫌だね。君は攻略不可とされているダンジョンを次々と攻略している情報は知っている。俺のレベルアップの為に利用させてもらうぞ」
「俺のことを知っているのか。だったら尚更、好き勝手にはさせられないな」
ピキピキと結界にヒビが入り出した。
「お兄ちゃん。もう限界よ。結界が壊れる」
すると、結界は打ち砕かれた。
「よく持ってくれた。沙里奈。後は俺に任せろ!」
結界が消えたと同時に俺は前例を切ってボスへ正面から斬りかかる。
だが、アクトもその時を待っていたように同時に突っ込んだ。
「もらった!」
「させるか!」
そんな会話が飛び交ったようにどちらが先にボスを倒すか真っ向勝負になった。
ズバーンと俺の一撃がボスの胸に突き刺さる。
「グオオオォォォ!」
もがくボスの不意打ちにアクトは致命傷を負う。
一気にHPがみるみると減っていく。
俺は一瞬の隙をついてボスの心臓を撃ち抜いた。
ゲームクリア。俺の一撃によりダンジョンの攻略を果たした。
「よし! 良いところ取りさせずに済んだぞ」
「へー。良かったわね」
沙里奈は面白くなさそうに言う。
「この屈辱はきっと晴らしてやる」
そう言い残してアクトはログアウトした。
「結局、あいつの正体は分からなかったな」
「正体を知ってどうするつもり?」
「勿論、二度とこんな真似をするなって言い聞かせてやる」
「そんなんで聞くバカいないわよ。やるなら直接言うか、脅すとかしないと意味ないわよ」
「脅すってそんな脅迫みたいなことは……」
「でも迷惑しているんでしょ?」
「それはそうだけど」
「そいつの正体、調べましょうか」
「出来るのか、そんなこと」
「今のダンジョンデータと過去のデータを分析すればそいつの正体は分かると思うよ」
「へー。そんなことできるだ。で、どこのどいつなんだ。その野郎は」
「そんなすぐ分からないよ。時間が必要なの」
「時間ってどれくらいだ?」
「一週間くらい」
「そんなに掛かるのか?」
「だって簡単なことじゃないし」
「まぁ、分かるなら時間はいくら掛かってもいいか」
「それより良い撮れ高になったんじゃない?」
「え?」
「今の乱入騒動をアップすれば良いネタになると思うよ」
「そうか。まぁ、ネタになる分には万々歳だな」
「単純。結局はバズればそれでより。私たちは配信者なんだから普通の配信じゃなく印象に残るモノを見てもらった方がいいってわけ」
そして編集作業に入り、俺と沙里奈のコラボ配信は完成した。
二人同じ日、同じ時間にアップする約束をしていた。
沙里奈の動画がアップすると最初の数分で一気に視聴者の数が増えた。
勿論、同時進行で俺の出した配信も一定数の視聴者が付いていた。
「増えている。増えている」
「編集にも力を入れましたからね。より見やすくなっていると思いますよ」
「ありがとう。紫織ちゃん。俺一人じゃどうにもならなかったよ。本当になんてお礼をしたら良いか」
「別にいいです。仕事ですので。それより信拓さん。兄があなたに会いたいと言っているんですけど、どうしますか?」
「
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