命の重さ
第1話
朝のHRで先生が出席を取っていると、突然ドアが開いた。そこには、フルフェイスのヘルメットを被り、迷彩服を着た男がいた。男は銃を持っており、教室に入ると同時に先生に向かって発砲した。銃弾は先生の右のこめかみに命中し、先生は床に倒れた。床が血で赤く染まっていく。しかし誰も悲鳴を上げないし、逃げようともしない。それもそのはずだ。ここは日本であり、アメリカではない。こんなこと起こっていいはずがない。だから、皆こう思ったはずだ。ああ、これは夢なんだろうと。
男がこちらに向かって発砲した。銃弾は私の肩を貫通した。私は右手で肩を押さえた。しかし血は止まらない。左肩の痛みと手のひらに付いた血。その瞬間、私は確信した。これは現実なんだと。
気がつくと、きれいだったはずの教室は机とイスが散乱し、クラスの皆は血塗れになって死んでいた。そして、私と銃撃犯だけになってしまった。
「最後に何か言い残すことは?」
銃撃犯は私に向かって冷たくこう言った。
「どうしてこんな酷いことするんですか?」
「俺の娘の復讐さ。娘の遺書にはこう書いてあった。3年1組のクラスメイト全員を殺してやりたい。誰も私のことを助けてくれなかった、と」
「……あの一ついいですか?」
「なんだ?」
「ここの教室、3年1組の教室じゃないですよ。ここは3年3組の教室です」
「いやそんなはずはない。俺はちゃんと構内図で確認した」
「あの構内図、去年のものだから若干教室の配置が変わってるんですよ」
「死にたくないからって変な嘘を付くんじゃない」
「嘘じゃないですよ。それなら、教卓の上にある出席簿を見て確認すればいいじゃないですか」
私はそう言うと、教卓を指差した。男は私の言葉を聞き、渋々教卓にある出席簿を確認した。
「ごめんね、間違えちゃった」
男はそう言うと、教室をあとにした。
命の重さ @hanashiro_himeka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます