第26話 同棲生活は大変

ー 新居である領主邸の完成



伯爵になったことで以前の屋敷では格が合わないと言われて建て直すことになっていたのだ。


予定地に縄張りを始めると領民たちが集まって来た。

「領主様、屋敷を建てられるなら我らにも協力させてください。」

と言われ、ドワーフもそれに加わりあっという間に屋敷が完成した。


「早い上に数段立派になった気がする。」

そう呟く僕にカレンが

「こう言うのはあなたの人徳よ誇りなさい。」

と。


その後僕の荷物と両親やブルーにアスカの荷物を運び込むと、カレンとミルフィーユの関係者が荷物を搬入し始めた。

かなり大きな屋敷で使い道がるのかと思う部屋などもいつの間にか埋まっていった。


屋敷内の人でも多くなりその横に使用人用のアパートメントを建て、厩や馬車を保管する倉庫に領軍用の資材置き場なども併設していくと広めにとっていた領主邸の敷地も埋まり始めた。


直ぐ近くに領軍の訓練場と独身者のアパートメントを建て、さらに新たに臣下となる者達の宿泊施設を建てていく。


領主邸の周りにはそれを囲むように臣下や領軍の宿舎が囲むように立ち並び、領主を護る形になっていった。



ー 美容用品の拡充



今まで美容用の化粧水などは、等価交換召喚で手に入れたものに僕の魔力水を足していたのだが、本格的な研究ができるようになった今。

新たな産業として

・ 化粧水(並)〜肌のキメと艶を向上させる

・ 化粧水(上)〜プラス美白効果とシワ・シミの除去

・ 化粧水(極)〜プラス若返り

を製造し販売することになった。

始めは温泉施設の美容施設での体験と口コミが主で。


これは王侯貴族の貴婦人たちの間でたちまち広がった、ただ極についてはわざと少量生産として政治的人物やお世話になった人向けだ。


臣下にも褒美として上の化粧水を半年分与えると伝えると

「結婚申込の品物になります。」

「嫁が絶対貰いなさいと言う」

などとかなり話題になっていたようだ、おかげで皆の勤労意欲が湧いて非常に良い。



ー 幻の酒誕生



ドワーフが協力して作っている酒だが、最近の研究は驚くほど進み

「幻の酒」

と呼ばれるものがいくつか誕生している、その値段は同じ重さの金と同等と言う。


ドワーフ達は、金銭は求めず報酬は全て酒なのだが、その製造量からすればほんの些細な量となっていた。


僕はここでカレンとミルフィーユの名を冠したウイスキーとワインを作り始めた。

今後僕に領地ではめでたいことがあればその名を冠して酒を作ろう。

当然2人の名を冠した酒は熟成を促進させて100年物となっており、関係者や知り合いに配ったみたが大評判となったようだ。


ー スパも作ろう



温泉が盛況になったがそれを利用できない人の声も届き始めた、幼い子供を持つ婦人たちだ。

そこで子供を別の施設で安全に見護るものを作ることにした、アミューズメントスパだ。

保育士が常駐し4時間ほどなら無料で見てくれる、自分でお風呂に入れるぐらいの子供なら水深の浅い流れるプールや滑り台が併設された遊び場のような施設も完備、当然ながら食事も提供できるため家族で訪れる観光客も多くなった。


そうなると世のご婦人や御令嬢は、より本格的な美容に時間とお金をかけてくれるようになる。

施術師の数も100人を超えて3交代制でサービスを提供しているが、予約でほぼ年内は満員だ。


VIP用に化粧水(極)を使った施術では、施設に入った後で10〜20歳違いがると評判になっている。

若返りは細胞の活性化で60歳のご婦人を例にとると

・ 第一回〜肌年齢が40歳

・ 第二回〜肌年齢が30歳

・ 第3回〜肌年齢が25歳

に変化し、半月に一度の施術でその後の老化が5分の1のスローになるようだ。

80歳になっても30歳代の肌ということだ。

死ぬ間際まで若々しい肌で逝けるということで、大金を積んで申し込む貴族が多いが選定は態と厳しい。


女性社会の最も大きな力と言えるこの極の施術は、王妃派で無ければ受けられないのだ。

当然辺境伯夫人も王妃派である。



ー スリランド王国 王妃マロン  side



私がこの化粧水の存在を知ったのは、辺境伯夫人からの贈り物だった。

何やら領地内に魔法の巧みな男がおりそれが辺境伯の特産物を日々生み出しているが、その中にこの化粧水があったと。

使用すると肌荒れやくすみが無くなり、化粧のノリも格段だという。


ためにし使うと確かに今までのものと違うのがわかる、私は

「化粧水はこれだけでしょうか?これ以上の効果のあるものは作れないのでしょうか?」

と早速問い合わせると

「可能だそうです。ただあまり多くは作れないので年に10人分ほど、効果は10歳ほどの若返りです。試しに私が使って王都へ直接お持ちします。」

との回答であった。


10歳も若返る?若く見えるということでしょうか?私は辺境伯夫人をよく知っていますので、今度見えた時にじっくり観察してみましょう。

と軽い気持ちで待っていた。


そして6ヶ月後、王都に現れた辺境伯夫人を見た私は本当に驚いた。

私と同じ40手前の筈なのに20歳くらいの歳にしか見えなかったのですわ。

思わず

「本当に貴方エレーナ?カレンちゃんじゃないし・・本物なの?」

「ええそうよ、マロン王妃様。信じられないほどの効果があるのそれでね、副作用がないか半年かけて検証していて遅くなったの。はいこれがそうよ、早く化粧室に行きましょう教えるから。」

と言われてそのまま2人で施術師を伴って化粧室に行ったの。


その後2時間ほどかけて施術をして化粧水(極)というものを使うと、直ぐに違いに気づいたわ。

鏡を見るとそこには10歳ほど若返った私が。

「1回目はこの程度の若返りよこのあと2週間ごとに施術を受けてこの化粧水を使うの、するとわたしぐらいは若返るわよ。」

という辺境夫人に

「その後はどうなの?効果は続くの?」

「彼の話では2週間おきの施術で若さをキープしながら老化については今までの5分の1くらい遅くなるそうよ。10年経っても2歳分しか老化しないそうなの。」

「ええ、凄いわそれ。でも年24回分の化粧水(極)の入手は可能なの?」

「それは大丈夫、今10年分の在庫をいただいているから。」

と嬉しそうに答えてくれた。


その時私は、王国内の女性社会においてこれ以上大きな力のあるものはないと確信した。

「ねえ、年に10人程度しか作れないと言ってたわね。その選定は誰がするの?」

「勿論貴方よ、王妃様。」

と辺境伯夫人は言うと意味ありげに笑った。


私達は学園で同級生の仲だった。家庭の環境が似ていて馬が合い大親友となっていたが、ここに来てこれ程までのものを惜しげも無く教えてくれる・・・何を返せばいいのかしらね。」



ー  その後1月目の夜会の場



「なんと若々しくおなりになられましたね、王妃様その秘訣を教えて欲しいですわ」

多くの貴婦人らから質問と注目を浴びる王妃、

「大きな声では言えないのよ、ある秘薬があってね。数に限りがあるそうで・・・でも貴方達なら良いかも・・後でお話ししましょうね。」

と意味深に話を終えると敵対派閥の侯爵夫人に

「お久しぶりですわね。お元気にしておりましたか?」

となに食わない風に声を掛けた、彼女も学園時代の同級生であるがその頃から仲は悪かった。

「どんな魔法を使ったのかしら、そんな若作りして。」

嫌味を言う侯爵夫人に

「残念ですけどこれは本当に若返りよ、老化もかなり遅いそうなのもう死ぬまで問題ないわ。オホホホ」

と言い残して私は次の集まりへと足を向けた。

彼女のイライラして眉間に皺を寄せた顔が今日は特に老けて見えた。



ー 老化防止の秘薬の開発



僕はここまで女性が若さや美に執着するとは思っていなかった。

辺境伯や王妃の話をカレンやミルフィーユから聞いて

「それではもう少し効果のあるものも作っていたほうがいいかな?」

と呟くと2人とも目を大きく見開いて

「あれ以上のものが作れるの?絶対作って!私達もいつまでも若くいたいしシャドー君もそれが良いでしょ。」

と凄い圧力で言われて思わず頷いてしまった。


その日僕は化粧水(極)に時空魔法を付与することに成功した。

効果は、細胞の老化の時間を10分の1まで遅くすることになったのだ。

これは商品名

「女神の涙」

でお披露目をすることになったが、人工的にエルフを作ったみたいだった。


歳を取らないスリランド王国の貴婦人達と大陸ではかなり噂になったのだった。

おかげで僕の化粧水を狙う他国のスパイや大商人からかなり狙われたよ。

でも製造も保管も僕の異空間で行なっているからバレないし、盗めないよね。

ただし顧客が被害にあう可能性がったので、入れ物に細工をしておいたらその心配もなくなったよ。


何をしたかって、許可のない者が蓋を開けると逆効果になる魔法付与と保存魔法が1時間になる魔法解除が付与されていたからね、最初の犯罪者が突然おばあちゃんになって大騒ぎだったよ。

それはあの侯爵夫人だったけどね。



ー 治療師としての活躍



領地経営も順調に進んでいる今、僕の仕事はと言うと

・ 化粧水作り

・ お酒作り

・ ポーション作り

・ 病人の癒し

が主な仕事で、最後の癒しとはポーションが購入できない貧しい家庭の領民を月一で癒していている活動だ。

場所は教会の一室、領内の孤児や売られた子供を買取教会の横に建てた孤児院で育てながら魔法改良がてら行っているのだ。


中には過去の戦争で手足をなくした実力ある騎士や冒険者で同じように手足をなくした元高ランクの冒険者などがいて、治療後にそのまま僕の臣下や孤児院の警護につく者が現れるほどだ。


今日は特別な患者が来ると言う、エルフの姫で強い呪いを受けたようでこのままでは数ヶ月持たないと言われているそうだ。

可哀想なので受けることにしたが領民と同じように順番を待って治療を受けることと言っている。



ー ハイエルフの姫 スターシヤ   side



私は5つある中で最大の規模を誇る世界樹を管理するハイエルフの母の娘になる。

ハイエルフは既本的に女性である、よって父はそれ以外のエルフか多種族の男となる。

女系社会のハイエルフの世界で生きてきた私にとって、他の王国へ出ることさえ初めての経験だった。


私が病に倒れたのは6ヶ月ほど前、手足に黒い斑点が現れ始め身体に力が入らなくなったのが始まりだった。

エルフの治療師に見せると

「これは強力な呪いです。エリクサーでも治るかどうかのものです。余命は約半年ないでしょう。」

と言われた、その後も多くの有名な治療師を呼んでみたものの結果は同じ。

そんな時に若返りの秘薬を作る男がいる、どんな病も治せると言う。

そんな噂を聞きつけた母が

「最後の望みに、スリランド王国のシャドー=カスタード伯爵領に向かい治療を受けてみないですか?」

と言われた、私はこの呪いを癒すことができるのならどこへでも行きます。と答えのですが母は

「そこではどんな身分の者も同じ場所で同じように順番を待つしかないそうです。王族や貴族などの身分を口にすれば見てもらえないと聞いております。十分に気をつけて行ってきなさい。」

と言うのです、その頃はすでに自分の足で歩くことも難しくなっていた私は藁に縋る思いでその国へ向かったのです。



1月の後私はその領地に辿り着きました。

そこは桃源郷かと思えるほど豊かな土地でした、領民は皆優しく宿や料理もかなり美味しかったと付き人が申していましたが私にはもう分からなくなっていました。


週に一度の治療の日に私は担がれるようにして教会の待合室に運ばれました。

そこには老若男女の病人や怪我人がいて、それが皆明るい顔で話をしていたのでした。

どうやらここに来れば完治すると思っているためにすでに治った後のことを考えることができるから皆明るい顔をしていたのでした。


夕暮れごろ私に順番が回ってきました。

若い男性が治療の部屋に1人いました。

「患者以外は外に出てくださいね。」

と言いながら警護や付き人を外に出すと優しい声で

「喋ることができるのであれば状態を教えてください」

と声を掛けてくれた

「はい、強い呪いに体が侵され余命数ヶ月と言われております。」

「今までの治療の結果は?」

「高名な治療師十数名、万能薬と言われるエリクサーでも回復できませんでした。」

「エリクサーでも、すると病というより呪いが強いのですね。分かりました診てみましょう。」

と言うとベッドに横たわる私の足元から頭の先まで手を翳しながら様子を診て

「分かりました、それでは治療に入ります。気を落ち着けて楽にしてくださいね。」

と言うとその掌から眩しくも温かい光が降り注ぎ、呪いに冒された場所が痛みを伴いながらも癒やされていくのがわかった。


「痛いかもしれませんが頑張ってくださいね。効果が出ています、きっと治ります。」

と言う言葉を信じ歯を食いしばり耐えたのです、いつの間にか私は気を失っていたようです。


「目覚めましたか?どうですか手足の状態は?」

と目覚めたばかりの私に件の若い男性が声を掛けます。

私は今まで動かなかった手足に力を入れます、するとどうでしょう。

「動きます!力がはい入りますし感覚もあります。」

私は思わず涙しながら半身を起こしその手で顔を覆ったのでした。


その後付き人などが呼ばれ

「患者はかなりひどい状態でした、しばらく様子を見る必要があります。どこに宿泊中ですか?毎日患者の様子を診に行きますので教えてください。」

と言っていました、感謝をしながら付き人が治療費の話をすると

「聞いてませんか?ここは無料ですよ。」

と様当然のように話すのです、今まで私の母がこの病気のためにいくらのお金を使ったのか、信じられない話でした。


その後、毎日のように私の宿泊している温泉宿という宿泊所に足を運んでもらいながら私は、温泉と言う湯治をしておりましたか。

「今日は顔色もよく手足の浮腫も無くなったようです、もう大丈夫ですいつお帰りになっても大丈夫ですよ。」

と言う言葉をもらい私は国に帰ることになりました。

そこで長らく世話になった伯爵に挨拶でもと言うことになり面会の約束を取り付けて出発の前日に領主邸に向かったのでした。


領主邸はとても美しい建物でした。

出迎えの執事に従い領主の登場を待ちながら私は、エルフの挨拶の品を手渡しながら

「領主様はどんなお方でしょうか?」

と聞いたのですすると執事は

「すでに何度かお会いしているはずですが・・・そうでした。今しばらくお待ちください。」

と言う返事をして部屋を出て行きました。

その後すぐに

「領主様です。」

との声の後あの少年が入ってきたのです。

「そのままで、僕が領主のシャドー=カスタード伯爵です。身体は問題ないですか?」

「!・・・はい、もう少しも違和感がありません。ありがとうございました。しかしあの治療師が領主様とは思っておりませんでした。驚いております。」

「そうですか、僕は領民が健康で過ごせるように少しばかり力を貸しているだけです、その分働いてもらってますからね。」

と言いながら笑顔を見せるシャドー伯爵。


その後たわいにない話をした後私は領主邸を後にしたのでした。



ー エルフの国と国交が開きました。


あのハイエルフの患者がさった後2月ほどして1通の手紙が。

ハイエルフを代表して王女様から

「我がエルフの国はシャドー伯爵と永遠の国交を結ぶことをここに約束する。」

と書かれた手紙でした。

僕は辺境伯を通じてこ国王にも報告すると

「シャドー伯爵にエルフとの国交が大臣を命じる。」

と言う国王直筆の命令書が届いたのだった。



その後はエルフ産の珍しくも高価な調度品が我が領の特産品と交易されるようになってさらに豊かになっていった。

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