第27話 結婚します

ーー 13歳で結婚



とうとうこの時期が訪れた「結婚」である。

今回スリランド王国の第三王女を娶ることで、王都にスペルナ辺境伯の長女カレンを伴い向かう。

結婚の義は創造神を祀る教会においてミルフィーユ王女殿下とカレン辺境伯令嬢を同時に結婚すると言う特別な式である、厳かの中婚儀は粛々と進み司祭から婚姻の証を授かる。

その後は王都をパレードしながら王城に入場し結婚披露パーティーに移行。


王家と有力貴族の娘を同時に嫁にする僕への興味は王都中に噂と共に広がり、王都民はおろか貴族連中もこぞってパレードやパーティーに参加してきた。



「初めましてシャドー伯爵、私は子爵家の・・・」

と言うような挨拶や顔合わせが延々と続き、少々疲れたところで国王様の登場となった。


「皆の者そのまま歓談を続けよ、今日は我が娘と辺境伯の娘の晴れ舞台である、それぞれの自慢の娘を十分に見てほしい。」

と言うと自分から有力貴族へ挨拶に出向いていた、その行動に多くの貴族が驚くと共に僕への興味がさらに上がった気がした。



ー 新婚生活



慌ただしくも不思議な儀式やパーティーを経てようやく落ち着くと僕らは新婚生活に入った。

だからと言って特別な生活が始まるのではなく、お互いの呼び方が変わるのと第一夫人第二夫人と言う序列が作られて格式が変わるのが不思議な感じだった。


と言ってもミルフィーユとカレンは仲が良く緊張しているのは僕の両親の方だった。

そこですぐ隣に両親用の館を建ててそこでゆっくり生活してもらうことにした。

「これで落ち着いて生活できるわ、ありがとうシャドー。」

そう母が言う言葉に実感がこもっていたのが感慨深かった。



ーー これからのことを考えた



今僕の領地で始めている

・ 酒造事業

・ 衛生品製造

・ 美容関係製品製造

・ 紡績・被服縫製事業

・ ポーション等の薬品製造

・ 魔の森産の建築資材

・ 土魔法を使った土地改良事業

・ 温泉・観光事業

・ 娯楽・遊戯事業

・ 魔道具製作事業

などの多くの事業が好景気を呼び、多くの民が移住してきている。


周辺の国や貴族などもいかに僕の領地と縁を結ぶか苦心しているほどで、侵略やましては魔物の氾濫などは皆無の状態であった。

そんな平和を満喫している僕を中心とした状態に違う意味で不安を感じていたんだ。


この世界にはこことは違い危険や不安に夜も寝られない、貧困でその日の食事も得られないそんな人々が多く存在することが許せないと思い始めたんだ。



ー 2年後



僕は15歳になった。

王国の外務大臣に任命され近隣の国へ向かうことになった。


「我が国はこの2年で非常に平和で豊かになった、これもその方の手腕のおかげとワシは思っている。そこでその力を近隣王国の平和のために使ってほしいと考えてその方を外務大臣に任命したのだ。十分にその力を発揮してほしい。」

陛下の言葉を胸に僕は第一の外遊に向かうことにした。



ー 魔道具披露



「伯爵これは何でしょうか?・・・乗り物ですか?」

外務副大臣のホワイト伯爵が目の前の巨大な魔道具を指差しながら僕に尋ねる。

「これは移動用の乗り物です。ただこれは空を移動するもので隣国まで半日で移動できます。」

「空を・・ですか!しかも半日で隣国に?」

「はい、今からそのお披露目をします。これは50人ほど乗れるものでそこのタラップを上り中にはい入ります、どうぞ僕の後について登ってきてください。」

と言いながらその場に来ていた20人ほどの関係者を飛行艇の中に案内する。


全長100m、幅20m、両翼の幅は50mの飛行船は、羽を折りたためる構造で時速は500km/hを誇り高度1万mまで上昇できる。

デモンストレーションで、垂直発進から高度1000mまで上昇すると王国内を軽く一周飛行して見せた。


「シャドー伯爵、これは今までの常識を覆す代物です。移動だけではなく物資の運搬や兵士の運用まで・・・恐ろしいものですな。」

ホワイト伯爵がそう漏らす。


ー 10日後


東の隣国聖王国へ飛行艇は静かに飛び立つ。



ーー 1ヶ月前の聖王国 side



聖王国とは創造神を主神として祀る宗教国家で、国王と教皇を兼ねるのも他にはない特徴である。


中央教会と言われる教会本部には、「大聖女」「神託の聖女」と呼ばれる女性がいる。

大聖女は飛び抜けた治癒魔法の使い手で、生きてさえいれば治せると言われるほどの人物である。

神託の聖女は、神が神託を下すための神の仮の入れ物である。

他に聖女と呼ばれる多くの女性がおり、各国に派遣されている。


聖王国の強みは「癒しの魔法」と「薬師ギルド」の管理である、この世界の医療は魔法と薬事で医師と言われるものはほとんどいない。

その為各国の有力者は、毎年多くの寄付を行い自分の治療の予約をするのである。


そんな宗教国家に異変が起こっていた。



ー 新しき病



「胸が痛い」

1人の老人が胸を押さえて倒れ込む。

「おじいちゃん、すぐにシスターを呼んでくるよ。」

孫と思われる子供が駆け足で教会へ向かう。


始まりは聖王国の辺境の村で起こった。

見かけないスライムが村に出没し始めた、村人は冒険者ギルドへ討伐依頼を出した。


冒険者が数人現れてそのスライム討伐に乗り出すも数日後に冒険者は胸を押さえて謎の病に倒れる。

次にやって来た冒険者も討伐活動をし始めた数日後には病に倒れる。

その内村人も病に冒されて次第に病人が増えていった。


冒険者ギルドはこの事実に

「スライムによる新たな病」

と判断して、中央教会に聖女の派遣を依頼した。


辺境の教会に1人の聖女が派遣され、聖女は早速病人の治療にあたるも魔法での治癒効果は全くなかった。

その報告を聞いた教会は薬師を派遣することにした。


新たにやって来た薬師は、既存の薬を片っ端から試しては見たものの病人の症状改善は行われず、次第に村人が罹患し始めてとうとう村人全員が発症してしまった。


これらのことから聖王国はこの病が非常にタチの悪い病であると判断すると、村を焼き払った村人ごと。

しかしその頃はすでに病にかかった患者がその村から各地に移動していた後であった。


半月後村を中心として5つの村と3つの街で患者が発見された。

しかも病女は重く早くなっていた。


最初の村では初めの患者が罹患して亡くなるまで一月の時間がったが、今では2週間で亡くなる状況である。

当然薬や治癒魔法が効かず今の所手立てがない。


そして恐れていたことが・・・王都で患者が出たのだ。


患者の隔離を徹底するもどこで移ったかほかで発病患者が現れるのである。



ー 聖王国国王 side



「まだ判らんのか?治療法を早く見つけねば人は死に絶えてしまうではないか!」

国王が強い口調で報告に上がって来た医療担当者に声を荒げる。

「はい申し訳ありません。最初に派遣した聖女様も病のまま先日亡くなられましたがその原因が未だ・・・」

「最初の村にあるものは全て調べたのか?怪しいものはなかったのか?」

「はい、スライム以外は何処にもあるものしか発見できておりません。」

「ならばこの病はどうやって移るのだ?」

「それについても分かっておりません。」

「それではで立てはないと言うのか?」

「隔離・焼却以外今のところはございません。」

「・・・来週にも隣国の使者が訪れると言う、それまで何とかならんのか?」

「無理でございます、できればその使者には早々に出国をして頂きたいと考えております。」

「分かった。」


聖王国国王は苦悩していた

「我が王国は神より癒しの技を頂いておきながら今病にその存在を脅かされておる。」

独り言のように言葉を発する国王のそばに神託に聖女が姿を見せる。


「国王よよく聞くが良い。今この国で起こっておる病は人の力では防げぬものである。ただ一つ助かる方法があるそれはこの地に参るシャドーなる男の力に縋ることである。」

と目を閉じて話す聖女が言い終わると崩れるようにその場に倒れる。


「誰かおらぬか!」

国王が大きな声を上げる、慌てて集まる家臣団。

「良いか近々この国を訪れるものの名を調べよまたは報告せよ、シャドーなるの者が居れば即刻王城へ連れて参れ!」

と言い残すと国王は胸を抑えてうずくまる。

王城が上を下への慌ただしさに包まれる。



ーー 外交使節団到着


「もう国境です!素晴らしい速さです。」

興奮した口調でホワイト伯爵が遥か下の風景を見ながら声を出す。

他の随行員も同じように信じられない気持ちで空の旅を体感していた。


今回僕は共として

・ ブルー

・ アスカ

・ アカネ

・ コハク

の4人だ、アカネとコハクはアスカタイプのアンドロイドで治療と製薬に特化している。


アスカはおしゃべり好きなアンドロイドで寡黙なブルーとはほとんど会話がない、しかしアカネは同じくおしゃべりであるが聞き上手な感じでブルー相手でも情報をうまく引き出すように会話する。

コハクは無口なタイプで新しい薬になる素材がないかいつもキョロキョロしていて落ち着きがないように見えるが、好奇心が強いだけで慎重な性格である。



朝王国を出発して午後には聖王国の王都を望む位置にまで到着した飛行船は、王都の外壁の外に適当な場所を見つけて着陸する。

僕は飛行船をオートパイロットで上空高くに待機させる。


この後は飛行船の格納庫から出して来た陸上移動用のバスに乗り換える。


「これはまた馬のいない馬車ですか?」

ホワイト伯爵が興味深く質問してくる

「そうですね、これも移動用の魔道具ではあります。先頭の馬車を運転すれば後は勝手についてくるので好きな馬車にお乗りください。」

と3台の馬車に一行を振り分ける。


門兵に止められるも王国の外交使節の許可書を見せると、警護付きで王城まで案内された。

街中は何故か活気がなかった、王城内も人の姿が少ない?

「何かこの国であっているのかな?」

僕はそう思いながら案内に従い宰相殿との面会に向かった。



ー 聖王国王城にて



「遠いところを遥々お越しいただきご苦労様です。心より歓迎いたします。」

と宰相が最初の言葉を発するがすぐに

「しかし残念なことに国王は今体調を崩しており、拝謁は難しいと思います。今後は私が代行者として対応いたしますので何かあれば私に。」

と言って足早に去っていった。

その後は部屋に案内された後

「夕刻は歓迎に晩餐会になっております、どうぞそれまでごゆっくりしてください。」

と言うメイドは、そそくさに部屋を後にした。


「何かおかしいことが起こっているようだなシャドー伯爵。」

ホワイト伯爵も感じているようでそっと話しかけて来た

「そうですね、国王が体調不良というこちでしたが意外とお悪いのでしょうね。」

と答えておいた。


僕はアカネに

「国王の病について情報を探って来てくれ。」

と命じる、アカネは身体を透明にすると部屋を音も立てずに出ていく。


夕方から歓迎の晩餐会が始まった。

「国王体調不良につき控えめな晩餐会になりました。」

と言う言葉が始めにあり両国の外交関係者が歓談を始める。

2時間ほどで晩餐会も終了し、明日は1日自由時間として一行は各々の部屋へと下がる。



ー 国王に病とシャドー



国王の部屋に苦しげな顔でベッドに横になる国王の姿。

「宰相よ、外交団にはうまく対応できたか?」

「はい問題ないと思います。明日1日をおいて外交の話を詰める予定ですが予定通りに行いたいと考えております。」

「分かった、それで例の件はまだ分からぬか?」

「はい、シャドーなる男の存在については未だ判明しておりません。今しばらくお待ちください。」

「うむ分かった。それで外交団の団長がかなり若いと言うことじゃがどのような者であったか?」

「はい、歳の頃は15・6でしょうか。カスタード伯爵家の当主と聞いて入ります、名は確かしばらくお待ちを。」

メモを見直しながら宰相が真っ青に変わる

「どうした?」

「陛下、あの者がシャドーという名のものです。いかが致しましょうか?」

「なんと、それでは明日にでも内々でワシのところに連れて来てくれぬか。」

と言うと国王は黙って天井を見上げていた。



ー アカネの報告



「ご主人様、この国の国王の病状が判明しました。」

「もうか、早いなそれで。」

「はい、伝染病のようにございます。国王の部屋の空気を採取して調べた結果、ウイルス性の病気で罹患するとかなり高い致死率のようです。」

「それで国王の容態は?」

「未だ重篤にはなっておらず今なら私のナノの治療薬で根絶できそうですが、特効薬については国王の治療後に開発という流れです。」

「どのくらいで特効薬を作れそうか?」

「コハクによりますとウイルスさえ手に入れば3日ほどで、量産は5日ほどでと言う回答です。」

「そうか分かった、できるだけ早く国王に面会できるように手配しよう。」



ー 聖王国の宰相  side



私としたことがこんな大事を見落とすとは!

まさか外交使節団の団長がシャドーなるものであったとは。


次の日朝早く宰相は失礼を承知でシャドーの担当のメイドへ面会の取次を依頼した。

すると予想に反してすぐに会いたいとのこと。

朝食後すぐに面会し

「急遽で申し訳ないが非公式に我が国王に謁見してほしい。如何かな?」

「それは良かった、私もそれを申し込みたくて・・、ここだけのお話ですが国王様の病気を治すことができそうです。」

とこ当てるシャドーに宰相は

「それは真でしょうか?」

と言いながらその手を取り国王に休まれている部屋へと向かった。



ー 国王の寝室にて



「国王様、シャドー様をお連れいたしました。」

と声をかける宰相、

「おお、このような姿で申し訳ないがワシが聖王国の国王である。」

と身体を起こしながら挨拶をする国王に

「無理をなされないように、病気のことは存じて入ります直ちに治療に入りたいのですが宜しいでしょうか?」

と声をかけるシャドーに国王は頷く。


「アカネ入って来なさい。」

ドアの外に声をかけるシャドーの声に従うように何処にいたのか1人の少女が入室してくる。

「彼女は治療に特化した者です、少しばかりお時間をください」

と言うとアカネと呼ばれた少女は国王のそばに立つとそに手を取りじっとした。


およそ10分ほど身動きひとつしなかったアカネがシャドーを振り向き

「ご主人様治療は終了しました。検体をコハクに届けます。」

と言う言葉にシャドーが頷くと少女は部屋を音もなく立ち去った。


「国王様体調はどうでしょうか?治療は成功した模様です。」

と言うシャドーの言葉に宰相が

「まさかあのわずかな時間で・・・信じられぬ。」

と漏らす横で

「確かに胸の痛みが嘘のように消えた、身体のだるさも感じぬ快癒した気がする。宰相よ大聖女を呼んでくれぬか。」

と国王は力強く話す。



その後大聖女と呼ばれる女性が呼ばれて診察を行い

「確かに病魔は全て消えて快癒しております。でもどうして?」

不信感を抱きながら大聖女が宰相に尋ねる

「それはここに居られるシャドー伯爵のお力によるものです。」

と説明すれば

「!この方がシャドー様ですか。」

と納得に顔にシャドーは不信を抱く。


「お初にお会いいたします、スリランド王国の外交大臣シャドーと言います。私の名を知っていたようですが何かありましたか?」

と尋ねると

「私の国の神託の聖女が貴方の名前を伝えておったのです。しかし多くの病の民を助ける手立てが有るのかそれが心配です。」

と語る大聖女に

「特効薬の製造はすでに始めいております、5日ほどお待ちください。」

と答えるシャドーにその場のもの皆が

「「「特効薬の製造が可能なのですか?」」」

と声をそろえる。


「はい、国王陛下を治療した際に病の原因となる検体を手に入れられましたので、今それをもとに製薬中です。レシピが完成すればお渡ししますが今は一刻も早く患者に薬を届けることが大事、しばらくお待ちください。」

と答えたシャドーに大聖女が頭を下げる。



ー 5日後



「これが特効薬です、現在1万人分有ります。患者の近くの者を中心に与えてください。」

と錠剤入りの薬瓶をIケース渡しながらシャドーがメモ神を手渡す

「これがレシピです、薬師にお渡しください。」

と言葉を添えた。


「ありがとうございます。」

受け取った中央教会の聖女が直ぐに患者への服用を指示した。

その後は3日ほどで病魔は完全に駆逐されたのだった。

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