第23話 上には上がいるもの

ー さらなるクラス替えと魔法騎士団登場



次の日ブルーとカミュがSクラスになっていた、残りの3人は相変わらず最初のクラスのままだ。

と言うことは我が王国の優秀な生徒の実力がこの魔道王国では中位ということになる。


朝学園長に呼ばれた

「我が王国の騎士団長が君の噂を聞きつけその実力を知りたいらしく今日無理やりここに来るよ。嫌なら相手をせず済むようにするが・・」

「いいえ、この王国の実力を見てみたいと思っています。それとここにある魔導書は全て読みました、他にはないのでしょうか?」

「それなら相手をしてくれ、魔導書のことだが古代の魔法書があるが誰も読めないが挑戦してみるかね。」

「古代魔法ですか、よろしくお願いします。」

「君なら読める気がしてきたね。」

と答えて教室に戻った。



ー 騎士団一行



「団長、本当に団長自ら確認するのですか?噂半分と言いますので団長が見るほどではないと思いますが。」

と副団長が言えば

「物事は最悪を想定するものだ。実際3人もの留学生がSクラス以上の実力を見せていると聞いた。何度も押しかけることもできないだろうしこの目で確かめることが大事だ。」

と言うと大きな体をものともしない軽い足取りで学園の門を潜った。



騎士団の陣容は

・ 騎士団長

・ 副騎士団長2名

・ 精鋭騎士20名

の33名であった。



ー 演習場にて



担任教師から騎士団との模擬戦が行われると話があるとクラスメートが騒ぎ出した。

どうやら今回来ている騎士団は精鋭揃いでそれとの模擬戦は、生徒としても栄誉あることのようだ。


「一際大きな体の人が騎士団長です、王国随一の強者ですよ。」

途中から仲良くなったアリスがそう教えてくれた。

鑑定すると、確かに頭一つ抜けているが地竜の半分ほどのステータスのようだ。


「カミュでもあの騎士団長は軽く勝てるよ。」

と小声で声をかけると緊張気味だったカミュが力を抜いて

「なんだ、緊張して損した。」

と呟く。



「では、模擬戦を始めます。生徒の方で何か提案はありますか?」

と騎士団の審判を務める広報と思われる男性が声を掛けたので僕は手を挙げて

「はい貴方・・留学生の方ですね、どうぞ。」

「できれば記念に勝ち抜き戦をしてみたいのですが。」

「なるほど、留学生は怖いもの知らずですか、いいでしょう1人でも勝ち抜けば国に帰って自慢できるでしょう。」

と了承してくれた。


「それでは誰からにしますか?」

との声に

「先ずは僕が挑戦します。よろしくお願いします。」

とカミュが名乗りを上げた。

「君も留学生ですか?君がシャドー君ですか?」

「いいえ僕はその仲間のカミュです、商人希望です。」

と答えた彼の言葉に周囲がざわついた。


「・・・いいでしょう。先ずは一番下から。」

と言うと若そうな騎士が前に出る、獲物は槍だ。

カミュは片手剣を構えて

「お願いします。」

と声をかける、相手は完全に見下しているようだ。


「始め!」

の合図で気付けばカミュの剣が騎士の喉元に付けられていた。

「これ以上やる必要があるのですか?ひょっとしてここの騎士団は生き返るのでしょうか?」

と言えばこれ以上することは恥の上塗りです。

「やめー!」

「どうやら油断しすぎのようです、次!」

少し声がキツくなっています。


「始め!」

今度の相手は両手剣です、カミュは動かず相手の様子を見ています。

相手の騎士が素早い動きで近づくと横から両手剣を振ってきました、避けさせないつもりです。

しかしその剣は簡単にカミュの剣で防がれて、押し返される。

タタラを踏んで体勢を崩した騎士にカミュの剣がまたしても喉元に。

「・・・やめー!」

「次!」

と言う男にカミュが

「ちょっと待ってください、このままでは時間がかかります。2人にしてください。」

「なんだと!分かったいけ!」

2人の騎士が激おこ気味に前に立つ。

「始め!」

声と共に切り込む騎士2人、見ていた生徒たちはカミュが切り飛ばされると思った。

しかし、吹き飛ばされたのは騎士2人。そこにカミュが1人ずつ剣を突きつけ終了。


するとカミュは

「騎士団たちの実力はおおよそ分かりました。僕はこれで終わります。」

と言うと生徒に列に戻った。


すると自分たちも力が通じるにではと剣に自信おある生徒が前に出て

「お願いします。」

と声をかける、模擬戦が始まる。騎士団は本気モードだ、直ぐに倒れ伏す生徒。

騎士団が弱いのではなく留学生が強すぎるのだと改めてわかる生徒。



ー 騎士団名誉をかけて



すると副団長が前に出る、彼は剣技ではこの国で1・2争う者で剣聖と呼ばれているようだ。


「今度は私が相手します。では折角なので留学生のシャドー君お願いします。」

と言う言葉に僕は

「失礼ですが貴方1人では物足りません、もう1人2人お願いします。」

と言うとものすごい圧をかけていた団長が

「そうか、お前も来い!」

と言って残りの副団長を連れて僕の前に3人の騎士団最高戦力が揃った。

「魔法も有りでお願いします。」

と言う僕に魔法専門の副団長が

「後悔するなよ。」

と言い捨てて構える。


僕は当然魔法攻撃はしない、剣技のみでたたかう予定だ。


「始め!」

「・・・バインド」

1人が拘束魔法を発動しながらもう1人の副団長が斬り込んでくる。

流石に早いが人の限界だろう、その上の速度で僕は対応する。

足を踏み出せば拘束魔法は蜘蛛の糸のようにアッサリと破壊される。

「バカな!」

「・・・身体強化補助」

支援魔法に切り替えたようだが、それでも人の限界の1.5倍程度。

僕はさらに速度を上げて反撃をすると吹き飛ばされる副団長、その影から団長の剣が襲ってくる。

すでに団長の動きは抑えていた僕は、その剣を受けてみせる

「クッ!これを軽々と受けるか!」

と呟くながら団長は剣に魔法を纏い魔剣と化した剣で切り込む。

それを僕は指で受け止めて捻って折る。

その後蹴りを団長に腹に見舞うと団長は演習場の端まで飛ばされる。

残りの副団長を見ると戦意喪失の状態だったので、審判の男性に向かい

「まだ続けるのですか?」

と問う。

「・・・やめー!」


終了の声がかかり僕は生徒の列に戻る。


静まり返った演習場。そのまま模擬戦は終了した。



ー 学園長室



学園長室のソファーに4人の男が項垂れて座っていた。

「そこまで落ち込まなくてもいいでしょうに。」

学園長の言葉に審判をしていた男が

「何を言っているんですか!我が魔導王国の精鋭である騎士団長を始め3人がかりで負けたのですよ。」

と語気も荒く反論する。


「相手が強かっただけの話でしょ。向こうの王国の騎士団が強かったわけではありません。多分貴方たちの方が数段強いでしょう。」

と答える学園長に騎士団長が

「それではあの2人が特別とでも言うのですか?」

「はいそうです、でも2人ではありません5人だそうです。残りはあのブルーと言う少女と今回来ていない2人が同程度だと聞いています。」

「5人もあのシャドーと言う子供ほどの実力がるのですか?」

「いいえ、シャドー君は特別で残りが同じくらいだそうです。それでも1人でドラゴンを倒すそうですよ。」

「ドラゴンを単独で・・・それでは敵わないはずです。」

素直に負けを認める団長。


「学園長お聞きします、シャドーと言う子は魔法を使わなかったですが、彼は剣士ですか?」

「いいえ、彼は魔法が得意なようですよ。魔法を使えば貴方たちはここにはいないでしょう。」

と答える学園長が彼らの王国に住む同族のハイエルフからの情報だといくつかのことを話した。


「あの歳で・・彼らが我が王国に侵攻してくる恐れはないのですか?」

「それはなさそうですよ、ただしこちらから攻めなければと言う条件でね。」

深く息を吐く団長、

「もし良ければ彼の元で修行をさせてくれないでしょうか?」

と言葉を続けた。


「聞いてみますね、多分条件さえ飲めば彼なら喜んで引き受けるでしょう。」

と答えた学園長が面白そうに笑った。



ー 弟子が増えたのですが



次の日、学園長に呼ばれ

「新しく君に指導を受けたいと言うものが3人よろしくお願いするよ。報酬はないがいいかな?」

「そうですね、魔法陣を一揃い見せてもらいましょうか。」

「良いですね、改良までしてくれますが?」

「それは条件次第でしょうね。」

と言いながら学園長の部屋を後にすると目の前に騎士団長と副団長の3人が頭を下げて

「よろしくお願いする。」

と声をかけた、どうやら新しい生徒はこの3人のようです。



学園長から授業はどうでも良いからと言われていたので、カミュとブルーを連れて演習場に向かう。


「先ずは彼らと基礎体力作りの後レベル上げをしてもらいます。魔法の得意な貴方は私のところに。」

と3人を二つに分けた。


まず体力作りということで重力魔法の負荷を3人の体力に合わせてかけると

「うぬう、これは・・体が重い」

と声が漏れる

「団長さんが5倍で副団長さんが4倍と3倍です。」

まずはこれでランニングです。


同じようにブルーとカミュには10倍の重力負荷を加える。


「10倍の少女に置いていかれるとは・・・俺たちはまだまだだったようだ。」

団長がブルーの背を見ながらそう呟く。

10日ほどランニングと体力作りをしていたところ、3人とも問題なく動けるほどにまでなった。


「明日からレベル上げで森に行きますよ、許可はとってるのでまた明日ここで。」

と言いながらその日の訓練を終えた。


僕は学園長の許可を持ち森に来ていた、明日からの訓練場を探していたのだ。

「魔物は同じくらいのものがいますね。もう少し奥でないと訓練になりません。」

と言いながら魔物を倒しながら奥へと進む。

「この辺がいいでしょう、奥に仕上げ用の魔物もいますし。」

と呟くと僕は半径100mで円を描くように周辺の木々を切り開き収納した。



ー 次の日



「では行きますよここに集まってください。」

と言い集まると転移魔法で昨日の森の中に。

「これは・・転移魔法!まさかつかえる者が・・我が王国は慢心し過ぎていたようだ。」

何故か団長が落ち込んでいる様子。


「さあ気分を変えて訓練ですよ、ここは魔導王国の魔の森です。気を抜かないように死にますよ。」

と言いながら1人ずつ僕らと2人組で三方に分かれて森に入る。


僕は魔法使いの副団長を連れて歩くと直ぐに魔物が姿を表す。

「あれは魔熊!」

危機感がある声です、良いですね。


「はい討伐してくださいね。」

と彼を前に出す、慌てて構える副団長。

魔法職の彼は魔熊の攻撃を魔法を唱える暇なく受ける。

「ズドーン」

飛ばされた彼、しかしむくりと起き上がり自分の体を触りながら

「え!何ともない。」

「そりゃそうでしょう。今までの数倍の訓練をしていたのですよ、これくらいの攻撃は通りませんよ。さあ反撃ですよ。」

「ああ、分かった。・・・アースランス!」

「ドドドーン」

「え!この威力は何で?」

「だから鍛えたからでしょ。レベルも上がりましたね。次行きますよ。」

と言いながら半日かけてレベル上げをして元の広場に戻る。

ちょうど他の2人も戻ってきた。


「休憩がてら食事にしましょうか。」

僕は彼らに野営の準備をさせながら料理を作っていく。


「はい出来ました、ドラゴンのステーキです。ステータスが少々上がるので美味しですよ。」

「ドラゴンのステーキ!」

恐る恐る口にする3人、その横で

「いつ食べても美味しいです。シャドー様。」

とブルーが言うと

「僕もこれ大好きだよ。」

かミュウが同意する。


午後は急激なレベル上昇で動けなくなった3人を見ながら明日以降の計画を話して日が暮れた。



ー 騎士団長らの呟き



「何だと言うのかこれは!」

団長が重い体を起こしながら自分のステータスを確認する、他の2人も同じように確認すると

「嘘みたいですね。レベルが50も上がったのもですが、身体能力自体の基準がおかしくなっています。これもあの訓練の成果でしょうか?そうすると彼らがもし自国の騎士団を訓練すれば・・・恐ろしいことです。」

「そうだな、あの国とは戦争は回避しかないだろう。しかしまだまだ強くなれるとは、体が若返ったようだ。」

興奮して眠れない様子の3人も夜半にはぐっすり寝入っていた。



ー 10日後



「おりゃー!」

団長が地竜の硬い前足を切り飛ばした。

「・雷撃!」

副団長の魔法が地竜の意識を飛ばす、そこに副団長の剣が首を中程まで切り裂き地竜が力無く倒れる。

「倒した!3人で無傷で地竜を!」

興奮気味の団長らに

「よく出来ました、今回の訓練はこれまでです。帰りますよ。地竜は記念に持って帰りましょうね。」

と言いながら収納し学園と帰った。


ー 学園長の部屋



「それで彼らはどのくらい強くなったのですか?」

学園長が3週間にも及ぶ訓練の成果を聞いてきた。

「3人で地竜を討伐しました。それも無傷で。」

と答えると

「そうですか、3人で彼らの一人分ほどにはなったのですね。良かったです。」

と頭を下げて

「貴方の学校長のハイエルフとまた友好関係が築けました、これも貴方のおかげです。」

と言うと一つの魔道具を差し出した

「これは世界樹で作った魔道具です。エルフの里に入る印にもなります、これを貴方に差し上げます。」

と言った

「これがですか、大切に使わせてもらいます。」

とお礼を言って席を立った。


この世界に世界樹は5本あると言う、それぞれにハイエルフを筆頭に集落を作り守っていると言う。

そこに入る手形のようなものだ、有効利用してやろう。

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