第22話 光陰矢の如し

ー 3学年1月目


学校も最後の3年となった。

この頃になるとクラスのうち三分の一ほどのクラスメイトが

「シャドー君卒業後は僕を(私を)雇ってくれないか」

と言う内容の話を持ってきた。


僕は人手が足りなくなった領地に知っているものが来ることは喜ばしいので

「人手はいくらあっても足りないほどだ、可能な限り希望にそうよう伝えておくよ。」

と答えておく。

採用を決めるのは僕ではない、それなりの人を雇う段取りをつけている。




若いうちに旅をしよう



ーー 留学



3年の3月目になったところで、担任のセイント先生から

「隣国の魔道王国へ留学の話が来ている、如何かな行かないか?」

との話を持ち込まれた。

「期間はどのくらいでしょうか?それとこちらからいく人数は?」

「期間は3ヶ月、人数は5人くらいと聞いているよ、ここからは君と他に1人か2人」

「でもカレン子爵はダメだよ。あそこの国は精霊魔法師がいないからね危険だ。」

と教えてくれた

「それならカミュに聞いてみますね。僕はいきたいと思います。」

と答えておいた、その日のうちにカミュに話すと

「それはいい、あそこの商品に興味があったんだよ。」

と商人ぶりを見せる。



ー 出発の日



僕の横にはカミュとスイとブルーが居る。

スイは人化しているので付添人として同行するようだ。


アスカはと言うと、実はアンドロイドの3号から10号までが完成していてその調整をしているのだ。


僕の作った魔道馬車の試運転がてらに王都へ向かう、王城に着くと宰相殿に

「これが我が王国からの親書じゃ、向こうで渡してくれ。しっかり魔法の勉強をして帰ってくれな。」

と意味深なことを言いながら新たに加わった生徒3人の計6人の留学である。



ー 工程 前編



馬車は僕の力作の魔道馬車、空間拡張の付与がされている為、30人乗っても問題ないほど広いし乗り心地がいい。

新たな生徒は

・ 公爵家の四男 ミガロ=デニグス 10歳

・ 伯爵家の次女 エメロ=スティングレイ 10歳

・ 王家第三王女 ミルフィーユ=スリラント 10歳

である。


ミガロはあったその時から交戦的で何かとわがままを言う男だった、言えばガキだな。

エメロは、公爵派の家柄というが大人しい感じの少女だった。


「子爵風情が何故このような魔道馬車を持っておるのだ!公爵家にもこれほどのものがないというのに失礼であろう。」

と何かにつけて僕にくってかかるが

「失礼と思うがあなたは自分の立場がお分かりかな?」

「なんだと!子爵のくせに!」

「その子爵の当主が僕で貴方は公爵家であるが無位の四男と聞いている、礼儀知らずは貴方の方であることはその年なら常識だと思うが、如何かな。」

「何を・・」

怒りに任せて答えようとしたが少しは考えたようだ。

その後はあまりくってかかることはなかった。


生徒それぞれに付き添いやメイドが付いて総勢20名の一行は一台の馬車で予定通り進んでいた。



ー 盗賊が現れた



国境を超えた直ぐの山間で盗賊に囲まれた。


「どうするのだ?相手は50人からいるようではないか。」

少し震えながらミガロが捲し立てる

「静かに、このような時こそ落ち着いて対応できるかが貴族の真価と言えますよ。」

と嗜めながら僕は他の生徒に

「大丈夫です、あの程度なら問題ありません。僕とカミュで対処してきます。」

と言い残すと2人で馬車を降りた。


「おい小僧共!命が惜しければ身包み置いて行きな!」

と盗賊が脅してくる

「いいえ、身包みおいていくのは貴方達の方ですよ。逃げるなら今しかありませんよ。」

と答えるとそこらじゅうの盗賊が大笑いしていた。

笑いが終わることに

「そうですか、残念です。」

と言いながら僕が魔法を発動、影魔法で盗賊全員を動けなくした。

その後カミュが1人づつ仕留めていく。

僕はそれを収納する。

それをしながら僕は空を飛ぶホークにアジトを探させた。


「カミュ、アジトがわかった直ぐ戻るから後処理をお願いするね。」

と言い残して空に舞い上がる。

ホークと共にアジトと思われる岩穴の前に降りると、僕は気配を消して中に入る。


アナは意外と深く元は炭鉱か何かだと思えるほどだった。

ソナーで中の様子を探りながら残っていた盗賊を始末してお宝を回収する。

さらに奥に方で攫われた婦女子を5人ほど見つけ治療後馬車まで転移して連れてきた。


「ブルーお願いがある、この人たちの面倒を見てくれ。」

と彼女らの世話を頼んだ。

一番近い街で彼女らを保護してもらい、盗賊の討伐を領主に報告した。

領主は喜び滞在を願ってきたが、留学地中の身と断って先に進んだ。


その後の変化といえば、ミガロが大人しくなったことだ。

50人からの盗賊をたった2人で殺しまくった姿に恐怖を覚えたのだろう。



ー 魔道王国



馬車で進むこと20日、僕たちは魔道王国の王都に着いた。

王城に立ち寄り宰相に親書を渡すと僕らは留学先の学園に向かった。


道道に王都の様子を見ていると、魔道具が多く目についた。

「流石魔道王国だなそこらじゅうに魔道具が見える。」

興奮気味のミガロにカミュが

「シャドー君の領地ほどは無いかな、あれを見るとここは古臭く感じるな。」

と呟く、その言葉の意味のわからないミガロは首を傾けていた。


学園はかなり大きくどうやら王国中の生徒をここに集めているようだった。


学園に着くと担当に教師が現れ、副学園長と担任に引き合わせた後寮に案内してくれた。

今日から約3ヶ月間ここで勉強するのだ。



ー 学園初日



担任の案内で1学年が10クラスある内の一つに案内された。

「このクラスは我が王国では平均的な能力のクラスです、ここで貴方たちに能力を見てその後クラス分けをします。」

ということだった。


それぞれが自己紹介して席に座り、その日の授業を受ける。

魔道具を作る際の魔法陣を習う授業だった。

教師が上から目線で僕に質問してきた

「このクラスならこの問題は常識だが貴方の国ではどうかな?この魔法陣を解説してくれないか?」

と多分この生徒でも難しい問題を態と僕に出題してきた。

受けてやろうでは無いか。


「これは重量軽減の魔法陣のようですが無駄が多いですね。これでは魔力の無駄遣いです僕ならこの4分の1で効果を発揮させますよ。もしかしてと思いますが燃料となる魔石は属性の魔石ですか?」

と答えると、

「これのどこが無駄があるというのか?それに属性の魔石を使っているのかとその質問自体がよく分からない証拠だろうが!」

と憤慨した教師の横に立つと僕は魔法陣の横に新たな魔法陣を描き始めた。


「これは!・・・合っている・・しかし・・待て待て、それじゃこれが要らないとでも・・」

とうなり出すと教師は僕の描いた魔法陣を書き写して教室を出て行った。


ザワザワとする教室に戻ってきたには先ほどの教師ではなく、案内役に教師だった。

「どうやら今日は授業にならないようですので、授業は終わりですあとは自習でもしてください。」

と言い残し去っていった、

その後は僕らは他の生徒から質問攻めに会うことになる。

「貴方の国はどんなところ。」

「あの魔法陣は誰でも描けるの?」

「魔法はなにがつかえるの?」

などその日は質問で終わった。


その日の夕方僕は1人だけ学園長室に呼ばれた。


「初めまして私が当学園の学園長シルフ・ド・オクタビタです。種族はハイエルフです。」

と自己紹介した人物は、我が校の校長によく似ていた。


「初めましてスリラント王国から来ましたシャドー=カスタードです。」

と答えるとソファーに座らせた後、あの魔法陣を書いた紙を僕に見せながら

「この魔法陣はとても画期的です。このような魔法陣は貴方の国では普通にありふれているにですか?」

と我が王国の力が知りたいようだ

「ありふれているといえばありふれていますが、誰でもかけるかといえばそうではありません。」

「そうでしょう、ただ不審な点があります。ここです動力の魔石が無属性となっています。」

「ああこれですか、これはその国の魔法陣の発達程度を見るのに都合がいいのです。」

「都合がいいとはどういうことですか?」

「それについては秘密事項になります、その対価を頂かなければお答えできかねます。」

というと、横からくだんの教師が

「馬鹿らしい、どうせ実現不可能なものを混ぜていただけだろう。」

と決めつけて言う、それを手で制して学園長は

「何が望みですか?」

「この王国の魔道書を読んでみたいと思っています。」

「分かりました私の権限で見せましょう。」

「学園長!そんなバカな話に乗る必要があるとお考えですか!」

まだいっている。

「貴方は外に出ていなさい、話になりません。」

と学園長から言い渡されてすごすごと出ていく教師

「それでは静かになったところで説明いただきたい。」

「はい分かりました。ここに描いた魔法陣は無属性屑魔石による重量軽減の魔法陣です。」

「どうやって無属性の魔石から必要なエネルギーを取り出すのですか?」

「簡単です、魔力は元は無属性ですそれに属性を付けるだけですがそれでは魔力の全てを使いきれません。そこで魔石と魔法陣の間に変換器を取り付けるのです。それについては秘密なので教えることはできません。」

と答えると暫く考えていた学園長が

「これは貴方が発明したのですか?」

「よくお分かりで、そうです5歳の時に作りました。」

「え!5歳ですか、それはまた天才ですね。」

その後は幾つかの魔道具の話をして学園長の部屋を後にした。



ー 学園長シルフ・ド・オクタビタ   side



先ほど話した内容に不審点や矛盾点はありませんでした。

彼は本当にあの魔法陣いや変換器を含めた魔道具製作の天才です、我が国が魔道王国とうつつを抜かしている間に遅れをとっていたようです。


ここに至っては我々は素直に頭を下げて彼に師事するべきでしょうがそれは難しそうですね。

せめてあの変換器の見本かヒントを頂きたいですね。


学園長はあの少年が生まれた国のハイエルフを思い出しながら

「しばし絶えていた交流を再開せる時が来たようです。」

と1人呟いた。



ー 魔法の威力とレベル差



次の日から授業が再開されたが僕はSクラスというところに、カミュはAクラスにブルーはBクラスに他はそのままDクラスに分かれた。


Sクラスは国内でも優秀な生徒のクラスのようで選別意識が強くギスギスとしていた。

『鑑定するに可能性は秘めていますがいかんせんレベルが低すぎます、これでは良いスキルを発現できません。』これでいいのでしょうか?


「本日は留学生がこのクラスにも入ってきたことから、我が国トップクラスの力を見せたいと思います。攻撃魔法の授業としますので演習場に移動してください。」

このクラスの担任がそう言うと皆が移動し始めた。


「こんにちは、私エルムと言います。貴方お名前は?」

1人の少女が愛想よく声を掛けてきた、

「こちらこそこんちは、僕はシャドーです。短い期間ですがよろしくね。」

と答えるとニコリと笑ったエルムという少女は移動中に色々と教えてくれた。

このクラスは卒業後直ぐに王国直属の魔法師団に配属されるそうで、そこで魔道具製作所と魔法研究所更には魔法騎士団に分けられるそうだ。


彼女は魔法具製作所希望のようで僕の魔法陣の噂を聞いて興味を持ったみたいだ。



ー 魔法訓練



「ではあの的に向けて軽く攻撃魔法を当ててもらおうか。」

という教師がある少年を指名した。

少年はエルムによるとクラス1・2を争う実力者で、炎の魔法が得意だと言う。


「・・・ファイヤーランス5連!」

小声で詠唱しながら5連の魔法を放った、的に7割ほど当たったが破壊までには遠く及ばなかった。

これがこの王国のトップの実力なのだろう。

「シャドー君、君もやってもたまえ。一つでいいから的に当てられれば優秀だよ。」

とバカにした口調に

「そうですねやってみます。ただ僕は5連程度の魔法はあまり練習していないので、もう少し高度な魔法を撃ちますね。」

と謙虚なのか嫌味なのかわからない言葉で煽って

「多重発動!ファイヤーランス」

と詠唱なしで20もの魔法を展開し即座に発動、全ての的に当てると的は跡形もなく消し飛んだ。


「・・・まさか・・これほどの威力・・魔法騎士団でも・・」

無言になる演習場。


すると別の生徒が

「的を交換してください。今度は私がやります。」

名乗りを上げたのはもう1人の実力者で、雷撃が得意なようだ。


「・・・サンダー!」

これも詠唱を小声で済ますと雷撃の面攻撃を放った、全てのマトに的中するが的は半分ほど残った。


「それでは僕も雷撃を」

と言いつつ僕は的の交換を依頼して

「サンダーレイン」

と言って魔法を放つ。

これは雨のように雷撃が降り注ぐ魔法だが普通は攻撃力は弱く相手を痺れさせる程度の魔法。

しかし僕の魔法は一味違う、先ほどの彼女の魔法の威力が強かった部分が2倍ほど攻撃力を増して雨のように降り注ぐのだ。


「ダダダダーン!」

耳をつんざくような爆音が響き後には的があったことすらわからない風景が。


「シャドー君はかなりの使い手のようだね。内の魔法騎士団の底辺程はある感じだ、立派だよ。」

負け惜しみを言いながら教師は、防御魔法の訓練に急遽変更した。


「アリス君見本を見せてくれ。」

名を呼ばれた少女が前に出ると周囲から攻撃魔法が降り注ぐ、

「クッ!」

少し苦しそうな声をあげたがなんとか凌いだ彼女にクラスメートから拍手が、どうやらかなり無理な攻撃を加えたようだ。

「どうかなシャドー君もやってみないか?」

その挑戦受けましょう。


「ええ、防御はあまり得意ではありませんが・・今の2倍ほどで。」

と答えると、カチンと来たか教師はいやらしい目を見せた。


中央に立ち防御の魔法を詠唱する間も無く攻撃な方が先ほどの数倍襲いかかる。

見ていたクラスメートは息を呑む、多分僕が倒れることが幻視できるのだろう。

しかし素早く結界魔法を展開させた僕は何食わぬ顔で立っている。


「!なんだと!あの攻撃魔法で怪我一つもしないなど・・ありえぬ。」

教師の声は漏れる。

「先生あれ以上のレベルはないのですか?あれではドラゴンのブレスにも遠く及びませんが。」

「ドラゴンのブレスだと、ホラを吹くのもいい加減にしないか!」

と激昂する教師にの前に僕は赤竜の死骸を取り出す。


「これは・・火竜・・いやその上位の赤竜ではないか。まさかこれを・・信じられぬ。」

と言うと今日の今日の教師もどこかに生徒を置いて居なくなった。


その後はあれだけ疎外感のあったクラスメートが、急に近づき質問をし始めたのだ。

僕とのレベル差に小さなプライドが飛び散ったのだろう。



「シャドー君は賢者のような魔法が使えるのですね。」

アリスという少女がそう言うと

「私に魔法を教えてくれませんか?」

と言葉を続けたすると次から次へと

「「僕も(私も)」

と続いた。


あっという間にクラスメートの人気者になった僕だった。


同じようなことはAクラスとBクラスでも起こっていた。

2人ともここのレベルではSクラスを大きく上回る実力を持っているものね。

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