向日葵
「恋の病」という言葉があるように恋とは総じて、苦しいものだと思う。
この感情を抱え始めてからはや一年半、相手のことを考えて幾度泣いたかわからない。人に恋をするって、好きになるって尊くて美しいことだと思っていた。でもいざ実際恋に落ちると、自分の抱く感情のどす黒さに吐き気がした。
彼の瞳に私だけ映してほしいという浅ましい独占欲、なぜこちらを見てくれないのかと嘆き憤る自分勝手な哀願、相手の幸せを素直に祝福できない醜い心。恋をすることで自分の醜悪さを知った。
私のためを思うなら彼から離れるのが正解だと知っている。でも一等星のような彼の鮮烈な輝きを知ってしまった私は、その場を動くことができない。目をそらせない。はりつけられたように足が動かない。
臆病な私は未だに思いの丈を伝えることができず、振られることがない代わりに振り向いてももらえないという真綿で首を絞められるかのような曖昧で苦しい日々を送っている。いっそこっぴどく振ってくれたらどんなに楽か。
それでも私は、彼のことを愛し続ける。彼だけをまっすぐ見つめるその強い眼差しだけが、私を私たらしめてくれる。
「好きです、――」
今日も相手の名前は終ぞ言えないまま、こぼれた言葉が空に溶けていった。
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