マーガレット

 私が小学生だった時、花占いというものが流行った。好き、嫌い、好き……と順番に花びらを抜いていき、最後の一枚が「好き」だったら恋が叶うというものだ。

 当時同じクラスの雅史くんに淡い恋心を抱いていた私も、何度か花占いに頼ったことがある。あの時は気持ちを伝える勇気が終ぞ出なくて、雅史くんに好きな人がいると噂になっていたのを真に受けて私は未練を残しつつも恋心を封印することにした。花占い一つに心が揺れ動いていたのを思い出して、懐かしいなあと浸る。

 今は綺麗に立派に咲いたお花を散らすようなことはしないけれど、たまに縋りたくなる時がある。相手の気持ちがわからなくて、花占いでも何でもとにかく背中を押してほしくなるのだ。

 秘めた恋心をいつか伝えることはできるだろうか。大人になれば強くなれると思っていたのに、むしろ臆病な気持ちは大きくなって取り繕うことだけが上手くなった。

「先輩、好きです。……なんてね」

 一人でいる時にしかつぶやけないこの気持ちを、いつか伝えることができるだろうか。その日が訪れることを願って目を閉じた。

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