銀香梅
ピンポーンとインターホンの音が鳴る。毎回律義に五分前にインターホンを鳴らす彼にくすっと笑ってドアを開ける。今日は、久しぶりの逢瀬の日。
「おはよう、理子」
「おはよう。どうぞあがって」
ここ最近仕事で忙しかったと言っていた彼の顔は少し翳りがあって。目元の隈すらなんだか色気があってちょっとむかついて彼を小突く。突然攻撃されて、どうしてといった顔ではてなマークを浮かべる彼がなんだかおかしくて笑う。
「どうしたの、理子?」
「えー、なんか聡がかっこよくてむかついたから」
「……それはどうもありがとう」
不満そうにありがとうと感謝の言葉を述べる彼にまた笑って、二人してソファーに腰掛ける。昔は褒めても謙遜の言葉しか溢さなかった彼が、素直に言葉を受け取るようになったのはいつだったか。
「今日はどうする? 理子が行きたいところがあるなら付き合うけど」
「うーん、聡はちょっとお疲れ気味だし、今日はお家でゆっくりしようかな」
「俺のことは気にしなくてもいいよ」
「そういうわけにはいかないでしょ。せっかく来てくれたんだし、少しは癒されて帰ってほしいじゃん。……あ、一緒に寝る?」
「寝るって、普通に寝る?」
「それ以外何があるの? ……あ、聡のえっち」
「……悪かったって。理子はそれでいいの?」
「聡あったかいから、聡と寝るの好きだよ」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。少し寝たら、理子の行きたがってたパン屋さんに行こうか」
「え、覚えてくれてたの! やった~!」
そんな会話をしながら、二人で布団にもぐりこむ。聡はいつも通りぽかぽかあったかくて、すぐに眠りに誘われる。眠る直前「愛してるよ」という言葉が、聞こえた気がした。
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