家の近くに、有名な梅園がある。

 春先になると各地から人々が梅を見に集まってくる。私は幼少期に両親に連れられて行って以来、足を運んだことはない。

 というのも私は梅にさほど魅力を感じていなかったから。春の花と言えば桜の方が好きだったし、梅園に来るのはほとんどが高齢者の方々だったから少し近寄りがたかったというのもある。

 けれども、私も家庭を持つようになって実家に子供と共に帰省した時、エネルギーを持て余した私の愛する子――裕太をなんとか落ち着かせるため、梅園によく足を運ぶようになった。梅園は大きな公園と併設されていたから、遊ぶにはもってこいの場所だった。

 裕太が目を輝かせて「おかあさん、これあげる!」と地面に落ちた梅の花を渡してくれたり、「きれいだね」と梅を眺めながらご機嫌に語りかけてきたり。梅の花に囲まれてきゃらきゃらと笑う裕太を見ていると、どんどん梅の花が好きになっていった。

 上品に香る清らかで馨しい匂い。ころんと小さく、しかし確かな存在感を示す花。それを支える忍耐強い木。梅を構成する一つ一つのパーツを愛おしく思った。

 素敵な機会をくれた裕太に感謝しながら、今日も美しい梅を眺めた。

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