スノードロップ
スノードロップは、春を告げる花らしい。
寒くて家の中でぬくぬくと縮こまって鈍った体を動かそうと久しぶりに外に出ると、白く美しい花が咲いていた。すずらんに似たこの花の名前はスノードロップ。
美しく慎ましやかに佇むこの花を、今年も見られたことを嬉しく思う。なんでもない一日のありがたみを感じるようになったのは、持病を抱えるようになってからだろうか。
すぐに死に至る病ではないけれど、病は確実に真綿で首を締めるかのようにゆっくりと自分の心と体を蝕んでいた。日照時間が少ないからか、冬はどうにもいろいろと考え込んでしまうのだ。
先の見えない不安の中で絶望していた私に、「まずは一日一日を生きるようにしてみたら」と声をかけてくれた友人は元気だろうか。もうしばらく人とも会っていない。
たまにはこちらから連絡してみるか。人の痛みをよく知る柔らかい心を持つ彼女が今も元気であるようにそっと祈りを込めながら。
凍てついた空の色がふんわりと柔らかくなって春風が吹き始めていた。
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